高齢者の皆さんに今困っていることを聞くと、多くの人が、腰が痛い、ひざが痛いなど、あちらこちらの痛みを訴えると思います。実はこの多くが、変形性関節症という病気なのです。
腰や膝の関節には、細胞外マトリックスと呼ばれるタンパク質があります。これを分解する酵素である「マトリックス分解酵素」が細胞外マトリックスを壊してしまうことで、関節に痛みが出るのです。
高齢者が痛みなく過ごせる社会に
私は、マトリックス分解酵素がどのように細胞から生み出され働いているのかを、解析しています。マトリックス分解酵素が分泌されるメカニズムがわかれば、その知見に基づき、変形性関節症の治療法の確立が期待されます。
確立すれば、高齢者が痛みなく、快適に過ごせる社会になっていくことができます。高齢者の生活の質が向上し、労働できる高齢者や、人生を積極的にエンジョイできる高齢者が増えると予測されます。
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「12.医療・健康」の「46.医学(心臓、血液、消化器、呼吸器、整形外科等)」
一般的な傾向は?
●主な業種は→病院や大学、製薬企業や検査機器会社
●主な職種は→研究者やMR、臨床検査技師、アプリケーションスペシャリスト
分野はどう活かされる?
研究の技術や知識を活かして、製薬企業のMRになっている人や、研究所で働いている先輩がいます。
保健学科の臨床検査学専攻では、がんや心臓病など様々な研究に取り組んでいます。臨床検査技師を目指している卒業研究の4年生や、より幅広い進路を目指して大学院へ進学した学生たちが、自分たちのテーマを決めて取り組んでいます。
外国人の留学生が多いのも特色で、研究室では中東やアフリカなど、いろいろな国の食べものや文化を体験することもできます。
患者さんの数の多さでは、ほかのどんな病気にも負けません。世の中には「グルコサミンや飲むヒアルロン酸で、痛かった膝が治りました(個人の感想です)」といったコマーシャルをよく見ますが、本当に効いているのでしょうか。
ぜひ、サイエンスの力で新しい治療法を開発してみましょう。私の研究室では、研究の時間も各自に任されており、自由に研究を楽しんでいます。この研究室から、留学を経験する先輩たちもたくさんいて、世界トップレベルの研究者と直接交流できるチャンスもあります。
【テーマ例】
細胞を引っ張った時に、細胞の中でどのような変化が起きているかなど、細胞を顕微鏡で観察する。
レナードの朝
オリヴァー・サックス 春日井晶子:訳(ハヤカワ文庫NF)
研究のことだけでなく、いろいろなことを学んで広い視野を持ってほしいと思っています。今回紹介するのは、イギリスの神経学者・医師オリバー・サックスが書いた医療ノンフィクションです。
嗜眠(しみん)性脳炎と呼ばれる、世界的に大流行した難病に挑む医師・サックスの奮闘と患者の交流を描いている。嗜眠性脳炎は別名・眠り病と言われる原因不明の病だが、サックスはパーキンソン病向けの新薬を投与し、覚醒させた。しかし病原体の耐性により、やがて効果が薄れていった状況を記している。
この実話は、1990年に米国で内容を再構成したフィクションという形で映画化された。日本での公開のタイトルは「レナードの朝」。映画は患者をレナードという男性に絞り、レナードと医師の2人は、患者と医者との関係を超えた友情を育んでいくという展開になっている。