私たちは、食事、洗濯、お風呂、トイレなど生活全般で、毎日1人あたり200~300リットルもの水を使っていますが、そのうち飲むのは3リットルだけで、残りは全部、使用後に捨てられます。都市規模で捨てられる水の量になると、自然の自浄作用では手に負えません。様々な技術を使って汚れた水を処理してから環境中に戻すことが必要です。エネルギー消費、コスト、環境への影響を少しでも抑えながらも、高い効果が得られる技術として、微生物と植物の新たな浄化作用が注目されています。
これまでの微生物を使った分解技術は、浄化速度が遅いことが課題でした。遅いことは浄化施設のエネルギー損失になります。私たちは、分解だけでなく吸着作用も重要な働きをすることに着目し、両者を協働させることで浄化作用の向上に寄与できる可能性があることを見出しました。
具体的には、水生植物の根の周辺(根圏)から様々な微生物を分離し、環境への影響が危惧される有機化合物の吸着と分解の両方の能力を調べる試験を行いました。その結果、強い分解能力を持つ菌株のほか、特異的な吸着・濃縮作用を示す菌株を見出しました。植物の根圏部では植物の作用によって微生物の活性が高まっていますので、ここ流入した有機化学物質に対する分解と吸着の効果を同時に促進すれば、水質浄化効果を飛躍的に向上できることを確かめました。実用化の可能性も高いと考えています。
環境浄化に適する植物と微生物の共生のしくみを活用して
このような浄化技術を押し広げて、植物と微生物の共生の仕組みを活用することで、低コスト、低エネルギー消費型の新たな環境修復手法を提供できると考えています。さらに、環境浄化・修復に適した植物や微生物を育種することも有効でしょう。つまり、植物根で共生する微生物の吸収、分解の浄化作用を様々な方法を取り入れて強化し、水質浄化を含めた環境浄化技術を創り出します。さらに植物バイオマスから資源を回収し、エネルギー生産にも利用する。このような植物―微生物共生系を活用した、環境浄化・資源回収技術のサイクルを築くことを目指しています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→公務員、水処理プラント、建設会社、建設・環境コンサルタントなど
- ●主な職種は→土木職公務員、企業総合職
- ●業務の特徴は→土木・環境行政、水処理技術開発、建設業務
分野はどう活かされる?
学生たちは、卒業研究や大学院での研究を通して、環境問題に関わる知識と環境分析や生物学的試験の手法を身につけて卒業、修了していきます。また、学科では、広く土木工学と環境工学を学んでいますので、土木環境行政、環境技術開発、建設業務、プラントメンテナンス業務、建設・環境コンサルタント業務など都市環境の維持に関わる様々な専門家として活躍しています。
山梨大学工学部土木環境工学科では、土木工学と環境工学の専門領域を広く学ぶことができます。建設系や環境系のエンジニア、公務員をはじめ、いずれの分野に進んでも、専門家として活躍できるようにカリキュラムが組まれています。必修の実験や演習の科目も配置し、無理なく学べるようになっています。教員や先輩からの支援を受けやすいように配慮されています。環境の専門家を志すなら、ぜひ本学科へ!