エンタテインメント・ゲーム情報学

囲碁ソフトでプロ棋士に勝つためのシステムの最適化に挑戦!


伊藤雅 先生

愛知工業大学 情報科学部 情報科学科/経営情報科学研究科 経営情報科学専攻

どんなことを研究していますか?

AI囲碁が人間のプロ棋士に勝ったニュースが世界中を駆け巡りましたが、将棋やチェスに比べて、依然、囲碁はAIの難敵です。チェスや将棋のAIは盤面評価関数という数学を用いた探索法で棋力を向上させてきましたが、囲碁では評価関数の設定が極めて難しいと言われています。なぜなら囲碁は19×19の格子が描かれた碁盤上の終局での地の大きさを競うゲームです。19路盤囲碁の局面数は10の171乗もあります。チェスが10の50乗、将棋が10の71乗ですから、これらと比較しても囲碁の探索空間が格段に広いことがわかります。この探索空間の広さが評価関数の設定を難しくし、AI囲碁の難しさにつながっています。

ギターの運指や運搬ルートも最適化

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私はシステムの最適化を専門にしています。現在は、ゲーム情報学の分野で囲碁をテーマに研究しています。囲碁は、チェスや将棋に比べても、探索空間が格段に広く、キングや王といった絶対的存在がなく、それがプロ棋士に勝つことを困難にしています。強くなるには、最適化のためのアルゴリズムとデータ構造の見直しが絶えず必要です。

経路を最適化する研究にも取り組んできました。例えば、ギター運指の最適化は、ギターロボットの開発に役立ちます。部品組み立て工場では資材や部品の効率的な運搬ルートを作ることができます。今取り組んでいる研究が、今すぐそのまま役に立つとは限りませんが、将来役立つ可能性はあります。「研究とは可能性を追求するもの」と思っています。

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第7回UEC杯コンピュータ囲碁大会(於 電気通信大学)に研究室で開発した囲碁プログラム「milago」で参戦。右が伊藤雅先生、手前がmilago制作者、談話しているのは対戦相手。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→メーカーやソフトウェア業界
  • ●主な職種は→エンジニアやテクニカルサポート
  • ●業務の特徴は→システム開発や制御プログラムの開発およびメンテナンス
分野はどう活かされる?

自動車関連の組み込みソフトウェアの開発、金融機関のATMソフトウェアのメンテナンスなどで活かされています。

先生から、ひとこと

「なぜ?」と疑問に思うことが大切です。その疑問を解決できれば素晴らしいです。

先生の学部・学科はどんなとこ

愛知工業大学は工学部・経営学部・情報科学部の3学部からなる総合大学であり、愛知県豊田市に立地しています。情報科学部は情報科学科だけの単科構成ですが、当該学科にはコンピュータシステム専攻とメディア情報専攻の2専攻があります。コンピュータシステム専攻には6つの柱があり、(1)基本ソフト、(2)ネットワークとセキュリティ、(3)ハードウェア、(4)情報科学の基礎、(5)応用ソフト、(6)組み込みソフトの6つとなっています。「エンタテインメント・ゲーム情報学」は、その中の(4)と(5)の複合領域として取り扱われています。

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1年生のプログラミング演習の授業風景

先生の研究に挑戦しよう

最近はUnityといったゲームエンジンが無料でダウンロードできます。簡単なオリジナルゲームを自作して、それに肉づけする形で様々なアルゴリズムやデータ構造を組み込んでいけば、ゲーム情報学の分野に大いに興味が持てるかもしれません。

興味がわいたら~先生おすすめ本

コンピュータ囲碁 ―モンテカルロ法の理論と実践―

美添一樹、山下宏

ゲーム情報学において囲碁をテーマにするならば、必読の書。理論編と実践編から成る、コンピュータ囲碁についての本。理論編では囲碁のルールに始まり、原始モンテカルロ囲碁から最新のモンテカルロ木探索まで一気に説明する。実践編では、C言語習得者を前提にC++言語で実際に動作確認できるモンテカルロ木探索手法のソースプログラムを丁寧に解説している。著者のひとりである山下氏自身が開発した囲碁ソフトウェア「彩」の詳細な解説は少々難しいものの、最新の囲碁思考ルーチンの一端を垣間見ることができ、とても参考になる。 (松原仁:編/共立出版)


ゲーム計算メカニズム ―将棋・囲碁・オセロ・チェスのプログラムはどう動く―

岸本章宏、柴原一友、鈴木豪

将棋・囲碁・オセロ・チェスといったボードゲームのプログラムがなぜ動作するのか、その仕組みが理解できる。休憩室と称したコラムも面白く、ゲームの解や5五将棋についても紹介されている。 (小谷善行:編/コロナ社)


相対性理論

アインシュタイン

特殊相対性理論の原論文「動いている物体の電気力学」の翻訳と解説。前半はアインシュタインの原文をほぼそのまま翻訳したものになっており、後半は、アインシュタインが考えた過程を忠実になぞりながら、図解を交え解説。科学の素晴らしさをわかってもらえるだろう。 (内山龍雄:訳/岩波文庫)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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