社会学

増加する外国人に対する日本の排外主義を明らかに~「共同性」を探る社会学


金明秀 先生

関西学院大学 社会学部 社会学科/社会学研究科 社会学専攻

どんなことを研究していますか?

社会学とは、「共同性」の成り立ちを探求する学問です。社会の中にはたくさんの異なる人々がいます。性別、年齢、宗教、民族などの属性も違いますし、学歴や職業、収入など社会的地位も多様です。価値観や性格も様々ですし、対人関係の取り結び方にもたくさんの様式があります。

それだけ多様な要素がありながら、人々が同じ社会を作って生きていくことができるのはなぜなのか。逆に言えば、社会を維持するための共同性が壊れてしまったらどのような社会問題が生じてしまうのか。そうした仕組みを研究するのが社会学です。

いずれ始まる移民の大量招致。排他主義を抑えるために

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ぼくは統計的なデータ解析を駆使して社会のあり方を探求しています。最近の研究の一つは、日本における排外主義の特徴を明らかにし、その形成過程を特定することです。グローバル化にともなって移民や難民が国境を越え流入してくると、旧来からの住民の間に排他主義的な反応が生じることが知られています。

日本は今後、国家を維持することが難しいほどハイペースで少子高齢化が進んでいきますので、いずれどこかのタイミングで、移民の大量招致によって、生産年齢人口を補う政策を採用せざるをえません。そうなれば民族構成は多様化し、排外主義が高まると予想されます。排外主義を抑えながら新たな社会の共同性を模索するためには、まず排外主義という現象そのものについて詳しく知る必要があります。

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2014年の差別撤廃・東京大行進にて

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→あらゆる業種に進出していて、特に一般的な傾向はありません。一般企業が多いですが、中にはコミュニティスペースのオーナーになったり、弁護士やカウンセラーなどの専門職に就いた卒業生もいます。
  • ●主な職種は→一般事務と営業が中心ですが、人事的な部署がやや多いです。
分野はどう活かされる?

社会学では、データを体系的に収集し分析する社会調査を学問的ツールとして利用しますので、そのスキルはあらゆる職業分野で調査業務の役に立つでしょう。

先生から、ひとこと

受験をお待ちしています。現代社会を解読し、みずから生きる道を探索するための武器を一緒に探しましょう。

先生の学部・学科はどんなとこ

専任教員として日本最多レベルの社会学者数を誇る、日本を代表する社会学教育機関です。社会学を学びたいなら、まずここを選択肢に入れるべきです。学部と大学院の連携教育でも定評があります。

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ゼミ合宿にて

先生の研究に挑戦しよう

日常を取り巻く様々な対象が、社会学的な考察の対象になりえます。例えば、「お店でパフェを食べる」という行為に性差があるのはなぜか、先輩が後輩におごることにはどういう意味があるかといった、身近なテーマから取り組んでみるといいでしょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

断片的なものの社会学

岸政彦

社会学者の「まなざし」を知るために、オススメの本。路上のギター弾き、夜の仕事、元反社会的組織、在日コリアンなど、様々な人々へのインタビューとエッセイから構成されています。「何事もない、普通の」物語から語り手の人生を感得させるような本。安易に対象を解釈しようとするのではなく、抽象化し分析してしまうと解釈からすり抜けていってしまうような、平凡で普通の、何かを通じて「理解できない」対象に近づいていきます。インタビューを含む社会調査は、社会学という学問の最大の学問的特徴の一つだが、必ずしも「事実」を外部から客観的に観察するためではありません。社会学が重視するのは、人々によって認識されている「意味」です。この本からは、語りの「意味」に寄り添おうとする社会学者の態度を知ることができるでしょう。 (朝日出版社)


日本人はなぜ存在するか

與那覇潤

日本人とは?日本国籍、日本民族とは?歴史学者の書いた教養書だが、その内容はとても社会学的です。現代の社会学でもっとも重要なキーワードの一つである「再帰性」について、歴史学や哲学など様々な学問領域を横断する多様な視点から学ぶことができます。 (集英社インターナショナル)


#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル

李信恵

ヘイトスピーチに代表されるレイシズムの噴出をめぐって、最前線で被害を受けつつ観察を続けてきたライターによるルポルタージュ。レイシズム(人種差別)とセクシズム(性差別)の結節点でどのような事象が生じるか、そしてそれをどのように解読すべきか、読みやすい文体で問題提起を与えてくれる好著。 (影書房)


イムリ

三宅乱丈

架空の惑星を舞台にしたSFだが、社会学的な示唆に富むコミック。論点はたくさんあり、例えば同じ事柄でも集団が異なると共有されている「意味」が異なる、ということなどが効果的に描写されています。 (ビームコミックス)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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