経済の変動は、時には失業率を高めるなど、好ましくない状況を生み出します。2008年にはリーマンショックと呼ばれる大幅な景気悪化がありました。また、2020年には新型コロナ感染症の世界的な拡大で、経済活動は大きく悪化しました。経済の将来を見通し、人々が安心して暮らすために、政府は経済政策を実施します。しかし、経済政策が必ずしも効果を発揮するとは限りません。その原因を探るためには、経済政策をどう評価するかが重要となりますが、実施された経済政策の評価はほとんど実施されていません。また、経済政策を評価する時期によっても、その評価が大きく変わることも起こります。
そのためにはリアルタイム・データが必要です。リアルタイム・データとは、意思決定を行った時点で利用可能な情報のことです。経済成長の指標であるGDP(国内総生産)は、まず推計値である速報が出され、その後確定値が出されますが、その間にデータが変わることがあります。しかし、過去を評価する場合には、改定された統計情報をもとに行われるため、誤った結論を導く場合があります。私は刻々変わるGDPのリアルタイム・データの作成と、その影響についての実証的分析をしました。
消費税増税の影響、経済の実像が即座に把握できない
例えば、1997年の消費税増税の際、税率引上げ前の1-3月期には駆け込み需要から消費が増加しました。しかし、当時はこれを消費の実勢が強いと見誤り、税率引上げ後も状況が把握できないまま、逆に金融引き締めをすべきとプラスの評価が与えられてしまいました。2014年の増税時も、同様のことが起きました。
これは、経済の状況を把握できる情報(GDPなどの経済統計)が入手できなくて推計値での判断に頼らざるを得ず、経済の実勢を即座に判断できないことにつながり、企業の生産行動に大きな影響を与える結果となりました。このように、実際の経済の全容がわかるまでは時間を要します。この実際の経済状況を認識するまでの「認知のラグ」の存在が、民間企業などの意思決定や市場価格の形成に影響を与えることを、具体的な経済政策を題材に検証し、明らかにしてきました。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→民間銀行
- ●主な職種は→営業、資産運用
- ●業務の特徴は→信用(貨幣)を取り扱う業務
分野はどう活かされる?
世の中に資金が供給され、それが活かされることで経済活動は回っていきます。しかし現在は、銀行の融資業務は停滞しています。どうして停滞しているのか、どのようにすれば活発になるのか。こうしたことの分析に、大学での勉強が活かされるのではないかと考えます。
経済活動は私たち自身にとって身近なものであるため、その理解は通説的な理解や感覚的な理解に留まっている場合が多いです。また、情報通信システムが発達して、現在誰でも簡単に情報を手に入れることができます。しかし、情報の中にはノイズ(偽の情報、孫引きによる不確かな情報など)も含まれています。私たちはその情報の中から、どれが正しいのか、また価値のあるものかを選別することを求められています。経済学を学ぶことを通じて、自分で調査し、情報を選別・分析する能力を養ってください。
中規模大学ですが、ハード面は大規模大学と遜色ありません。学生の皆さんはそのような環境で自由に闊達な大学生活を送っています。また、地域との研究・業務面での連携が強く、少子高齢化を迎える日本の問題を考える上では最適な大学です。