流体工学

小規模水力発電でエネルギーの地産地消へ、未電化地域に電力を


飯尾昭一郎 先生

信州大学 工学部 機械システム工学科

どんなことを研究していますか?

地球規模での環境問題、エネルギー問題の解決が求められています。流体工学は「流れ」を扱う学問であり、それらに貢献できるテーマが非常に多くあります。私は再生可能エネルギーの利用を推進すべく高性能で低コストなタービン開発を進めています。例えば、風力発電では風車、水力では水車、地熱では蒸気タービン、海洋エネルギーでは潮流や海流、潮汐を利用するタービンが対象です。羽根の形とその周りの「流れ」を研究して、新型タービンの開発や発電効率の向上、振動騒音の低減による長寿命化等を図っています。

世界中の誰でも作れる・使える水車発電機。実用化も

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タービン開発の一つの事例を紹介しましょう。水力発電というとダムを利用するものが主ですが、私は小川や農業用水路、上下水道、工業用水などで発電する小規模な水力発電用の水車の研究開発を進めており、その一部はすでに実用化しています。高度な機械加工技術を用いずとも製造可能な安価で性能のよい水車です。発展途上国には未電化地域がたくさんあります。その地域の住民自身の手で作れる・使える、さらに維持管理ができるのが強みです。具体的には、「開放型水車」があります。農業用水路や小河川の小さな落差の流れで発電する小型水車です。研究室でのコンピュータシミュレーションや模型試験、現地での実証試験を経て、実用化されています。

これまで発電対象としてみなされていなかった小さな「水」から、低コストかつ簡便に電気を産み出すことで、エネルギーの地産地消、脱化石燃料への一歩につながります。これらは、SDGsの一つである「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に貢献する研究です。

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水車の実証試験の様子

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→機械、輸送用機器(自動車、船舶)、電気機器、化学プラント、鉄鋼、電力など
  • ●主な職種は→エンジニア(機械、電気、制御)
分野はどう活かされる?

流体力学は機械系の主な力学の一つであり、エンジニアになる場合には必要不可欠です。身の回りにあるもので製造過程から利用まで考えたときに「流れ」が関係しないものが少ないことに気づきませんか。当研究室の卒業生は、自動車や重電メーカー、電力、建設、プラント等の会社で活躍しています。

先生から、ひとこと

流体工学の歴史は長く、流れに関する物理現象を理論と実験から解明に努めている分野です。基礎から応用まで幅広いテーマが存在し、特定の傾向は見られないのが特徴でしょう。修得する場合には、まずは理論的な基礎を物理と数学から理解することが重要です。実社会が抱えている「流れ」が関係する課題は非常に多岐にわたります。それらの解決に貢献すべく学生たちとともに日々研究に励んでいます。

先生の学部・学科はどんなとこ

先端的な研究開発と体系化された教育プログラムにより、産業技術社会で活躍できる柔軟な発想と想像性に富む機械系エンジニアの育成に貢献しています。時代によらず必須である機械系基礎科目(材料力学、熱力学、流体力学、機械力学、制御工学)に関して、講義・演習・実験を通して基礎力から応用力までをしっかりと身につけることができます。自然環境に恵まれた信州は充実した大学生活を送るのに最適な環境です。

先生の研究に挑戦しよう

高校物理と数学で小規模水力発電専用水車の開発が可能です。水流から高効率にエネルギーを回収できる水車タービンの開発に挑んでみましょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

自分で作るハブダイナモ水力発電(大人の週末工作)

中村昌広

流体工学は簡単に言うと「流れるもの」を扱う工学。対象とする範囲は多岐にわたる。例えば、再生可能エネルギーとして、風力、水力、地熱、海洋エネルギーが注目されているが、これらに流体工学から貢献できる。その1つ。水力発電をやってしまおう!というのが本書。電気回路の知識もほとんどない筆者が、基礎的な知識だけで小水力発電に挑戦した。他に、『200W水力発電装置を作ろう 身近な水の有効利用術』(石田正、パワー社)、『これからやりたい人の小型水力発電入門』(千矢博道、パワー社)も参考に。まずは興味を持ってもらえれば。 (総合科学出版)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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