地球規模での環境問題、エネルギー問題の解決が求められています。流体工学は「流れ」を扱う学問であり、それらに貢献できるテーマが非常に多くあります。私は再生可能エネルギーの利用を推進すべく高性能で低コストなタービン開発を進めています。例えば、風力発電では風車、水力では水車、地熱では蒸気タービン、海洋エネルギーでは潮流や海流、潮汐を利用するタービンが対象です。羽根の形とその周りの「流れ」を研究して、新型タービンの開発や発電効率の向上、振動騒音の低減による長寿命化等を図っています。
世界中の誰でも作れる・使える水車発電機。実用化も
タービン開発の一つの事例を紹介しましょう。水力発電というとダムを利用するものが主ですが、私は小川や農業用水路、上下水道、工業用水などで発電する小規模な水力発電用の水車の研究開発を進めており、その一部はすでに実用化しています。高度な機械加工技術を用いずとも製造可能な安価で性能のよい水車です。発展途上国には未電化地域がたくさんあります。その地域の住民自身の手で作れる・使える、さらに維持管理ができるのが強みです。具体的には、「開放型水車」があります。農業用水路や小河川の小さな落差の流れで発電する小型水車です。研究室でのコンピュータシミュレーションや模型試験、現地での実証試験を経て、実用化されています。
これまで発電対象としてみなされていなかった小さな「水」から、低コストかつ簡便に電気を産み出すことで、エネルギーの地産地消、脱化石燃料への一歩につながります。これらは、SDGsの一つである「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に貢献する研究です。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→機械、輸送用機器(自動車、船舶)、電気機器、化学プラント、鉄鋼、電力など
- ●主な職種は→エンジニア(機械、電気、制御)
分野はどう活かされる?
流体力学は機械系の主な力学の一つであり、エンジニアになる場合には必要不可欠です。身の回りにあるもので製造過程から利用まで考えたときに「流れ」が関係しないものが少ないことに気づきませんか。当研究室の卒業生は、自動車や重電メーカー、電力、建設、プラント等の会社で活躍しています。
流体工学の歴史は長く、流れに関する物理現象を理論と実験から解明に努めている分野です。基礎から応用まで幅広いテーマが存在し、特定の傾向は見られないのが特徴でしょう。修得する場合には、まずは理論的な基礎を物理と数学から理解することが重要です。実社会が抱えている「流れ」が関係する課題は非常に多岐にわたります。それらの解決に貢献すべく学生たちとともに日々研究に励んでいます。
先端的な研究開発と体系化された教育プログラムにより、産業技術社会で活躍できる柔軟な発想と想像性に富む機械系エンジニアの育成に貢献しています。時代によらず必須である機械系基礎科目(材料力学、熱力学、流体力学、機械力学、制御工学)に関して、講義・演習・実験を通して基礎力から応用力までをしっかりと身につけることができます。自然環境に恵まれた信州は充実した大学生活を送るのに最適な環境です。