スポーツ科学

オリンピック精神を教育教材に~オリンピック・ムーブメントの歴史研究


來田享子 先生

中京大学 スポーツ科学部 スポーツ教育学科/スポーツ科学研究科 スポーツ科学専攻

どんなことを研究していますか?

オリンピックの過去120年間の歴史には、その時代ごとの課題や困難さに向き合った人々の成功や失敗の経験が詰まっています。オリンピック大会には様々な経験や価値観を持つ世界中の人々が集まります。私は、オリンピック・ムーブメントの歴史を研究しています。オリンピックは、多様な人々が共感し、共に生きるための社会を形成するためのモデルとして考察することができるからです。

オリンピアンの実践知に学ぶ

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オリンピックに出場した経験をもつオリンピアンは、競技生活を送る中でオリンピック精神(オリンピズム)を体感します。その経験は「実践知」といわれるもので、言葉化されにくいという特徴があります。けれども、そうした実践知をオリンピックに関わる教育の中で応用し、子どもたちに伝える方法についても研究しています。

選手の競技成績だけではない人間的価値は、子どもたちの未来のモデルになります。オリンピアンに協力してもらいながら、近代オリンピックの創始者クーベルタンや日本のオリンピック初参加に尽力した嘉納治五郎の理念、オリンピック・パラリンピックの歴史を理解するための教材開発、児童生徒への授業モデルの作成を行っています。

オリンピックは、勝利至上主義や商業主義を助長すると指摘される一方、差別の解消や社会的弱者への支援、人々の連帯や協働を促す役割も果たしてきました。オリンピックのそのような側面を私の研究では重視しています。

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NPO法人日本オリンピック・アカデミーと中京大学が共催している「JOAユースセッション in 中京」での講義風景。この企画は、中・高校生向け2泊3日の合宿形式でのオリンピック教育です。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→教育、公務員、一般企業
  • ●主な職種は→教員、消防士・警察官、営業職
  • ●業務の特徴は→人とのコミュニケーションを必要とし、高い社会貢献意識を持って取り組む必要がある業務が多い
分野はどう活かされる?

多くが保健体育科教員になっているため、直接的に専門分野を活かしています。ゼミでの学びを通して、多様な人々の視点にたって物事を考えたり、相互理解を促進したり、異なる意見を持つ人を尊重するには、どのようにすれば良いかを考えたりする立場で、業務に取り組んでいる人が多いように思います。

先生から、ひとこと

スポーツへの関わり方には「する」「みる」「ささえる」があるといわれてきました。この他にも「知る/考える」スポーツの重要性が指摘されるようになっています。スポーツは文系・理系の幅広い問題関心から考察することができる文化です。また、地域から国際社会にまで影響を与えることができる世界共通の「遊び」でもあります。社会の未来のためにスポーツには何ができるかを一緒に考えましょう。

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「JOAユースセッション in 中京」(中・高校生向け2泊3日の合宿形式でのオリンピック教育)で、教育活動の運営を補助する学生・院生スタッフとミーティングしているところです。

先生の研究に挑戦しよう

【テーマ例】
・スポーツと教育
・スポーツと差別
・スポーツと戦争

興味がわいたら~先生おすすめ本

スポーツを考える 身体・資本・ナショナリズム

多木浩二

部活動で行ってきたスポーツや、テレビで観たり応援したりするスポーツ。これらは身近に感じられる一方で、学問の対象として考えにくいものなのではないだろうか。最近では、スポーツが社会を変化させるほどの影響力を持っているともいわれるが、この本は、スポーツが社会や歴史と無関係ではないことを、様々な視点で紹介してくれる。スポーツに対する見方を拡げてみてほしい。 (ちくま新書)


インビクタス 負けざる者たち

1947年以降の20世紀における、貧困、人種差別などの社会的不平等を抱える南アフリカ共和国が舞台。同国初の黒人大統領となったネルソン・マンデラとラグビーを交差させながら、彼らの戦いの意味を描いた作品。 (クリント・イーストウッド:監督 モーガン・フリーマン、マット・デイモン:主演)


改訂 マリー・キュリーの挑戦 科学・ジェンダー・戦争

川島慶子

史上最も初期の「リケジョ」であるマリー・キュリー。科学と戦争、科学と国籍、科学と女性であることなどの時代の制約に翻弄されながら生きた彼女の半生を描いている。子どもの伝記で有名な彼女の、全く異なる一面を垣間見ることができるだろう。 (トランスビュー)


オリンピックの光と影 東京招致の勝利とスポーツの力

結城和香子

読売新聞の記者である著者が、IOC(国際オリンピック連盟)の20年の取材の上、東京招致の舞台裏を克明に描き、オリンピックの光と影を浮かびあがらせる。オリンピックとは何かについて再確認させてくれる本。 (中央公論新社)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。