医療・健康系の本

突然死の話

沖重薫

心臓突然死の具体例を上げて、どのような病態で突然死につながる不整脈が発症するのか、比較的簡潔に説明している。心臓突然死研究の手始めとしてイメージをつかむのによいと思われる。この本は循環器内科学という学問で学ぶ心臓突然死や、高齢者に多い心房細動という不整脈の疾患そのものの理解に適している。これらのバックグラウンドを学ぶと、それぞれの疾患に対する発症予測と予防的な治療の重要性が理解できると考えられる。予防的な治療は、先に制するという意味で、先制医療と呼ばれている。この先制医療をどのように進めるべきなのか、ゲノム医学の観点からのアプローチについて触れている。 (中公新書)



比べてわかる! フロイトとアドラーの心理学

和田秀樹

作業療法は、病を持った人を助ける職業だから、人と接することが好きな人が適している。そして、まず自分を好きにならないと、なかなか他人は好きになれない。本書は心理学の代表的な2人、フロイトとアドラーの考え方が示されているが、本書を通じて、ありのままの自分を認めることができるようになってほしい。また、本書からは、人は一人ひとり、考え方が違うということが理解できる。同様に、体の複雑な機能のバランスも一人ひとり異なる。同じような症状に見えても、薬(特に心の病の薬)の効果がある人、ない人、悪化してしまう人がいることも書かれている。治療というものは非常に難しく、複雑であるということが少しでも理解してもらえればと思う。 (青春出版社)



ロレンツォのオイル/命の詩

一人息子の難病を治す事ができる医者がいないとわかったとき、だれも行ったことのない新たな治療法を探す研究が始まる。これは、命をかけた必死の研究であり、命の尊さを伝え、それに挑戦する壮絶な実録の映画だ。 (ジョージ・ミラー:監督)



脳には妙なクセがある

池谷裕二

脳は見たり聞いたりしたことを瞬時に理解し、次にどのような行動を取るべきかを判断している。脳内でどのようなことが起こっているかは不明な点は多いのだが、最近明らかになってきた脳の不思議な活動が述べられている。例えば、恋をすると脳の処理速度が早くなる話、寝ている間に記憶が定着する話、言語を獲得するきっかけとなった遺伝子の話など。筆者は周囲の環境から受ける刺激とそれに対する反応行動が基になり心が形作られてきたと考察している。これまで哲学や心理学といった文系領域で取り扱われてきた脳の働きや精神活動も、今後生物学的な知見に基づいて理解されることにより、精神疾患に対する新たな治療法が開発されると期待される。 (扶桑社新書)



生命にとって酸素とは何か 生命を支える中心物質の働きを探る

小城勝相

人間に限らず生物、特に動物は、酸素から大きな恩恵を受けている。しかし活性酸素となると話は別だ。活性酸素は、大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したもののこと。活性酸素はきわめて反応性が高いラジカルであり、多くの生体損傷を招いてしまう。著者は中毒学、栄養学、生物有機化学を専門とする薬学博士。この本は、酸素と活性酸素について初学者向けにやさしく解説している。 (ブルーバックス)



マンガでわかる! 統合失調症

中村ユキ

統合失調症とは、日本では2002年まで、精神分裂病と呼ばれていた。漫画家である著者は、この精神疾患の自分の母を支えた記録「わが家の母はビョーキです」がベストセラーになった。この本は、同じような思いの当事者に向けた書かれたコミックエッセイ。監修をした群馬大学の精神科医、福田正人先生は「精神疾患をお持ちの方の体験に耳を傾けてください。そこから、心や精神が脳の働きと結びついているということと、人が生きるということの、両方を考えていただければと思う」と言っている。 (当事者のみなさん、福田正人:監修/日本評論社)



アレルギーの9割は腸で治る!

藤田紘一郎

アレルギーはいまや、日本人の国民病と言ってもよいほどの疾患になった。この本を読むことで、アレルギーは免疫疾患であることを理解し、また腸内細菌と免疫応答の関係を知ることができるため、免疫制御法を知るヒントとなるだろう。 (だいわ文庫)



自閉症という謎に迫る 研究最前線報告

金沢大学子どものこころの発達研究センター:監修

自閉症および関連疾患について、精神科医、分子生物学者、脳科学者、社会学者といったさまざまな立場から解説した本。精神発達障害について医学・生物学的な研究はもちろんだが、社会学的な観点からの研究も必要であることが理解できる。文系であってもこうした疾患についての研究を行うことが可能であることが示されている。 (小学館新書)



腸内細菌の話

光岡知足

著者は微生物学者。腸内フローラの研究で「腸内細菌学」という新しい学問を世界に先駆けて樹立したパイオニアだ。腸内フローラとは、腸内に棲む多種多様な細菌のことで、数100種、数10~数100兆個が棲息すると言われている。この本はこれら腸内細菌の生態に触れている。生まれたてのころ赤ちゃんは無菌状態だが、成長とともに周りの人や環境から細菌を獲得していく。感染症内科学のある研究者は、「下痢症で腸内細菌がかく乱されても、また元通り健康が回復することもある」という。そのことから人体の防御のために生体にとって必須な成分が、腸内細菌との関与があるのでないかと考えられる。腸内細菌研究の奥深さ、面白さを知ることができる一冊。 (岩波新書)



少年たちの贖罪 罪を背負って生きる

青島多津子

重大事件を起こしてしまった少年たちのエピソードが語られる。著者は関東医療少年院に常勤の医師として勤務していた精神科医という。精神科医が「加害者にかかわるということ」に始まり、加害者の贖罪意識、加害者自身が負ってしまったPTSD(心的外傷後ストレス障害)、家族への思い、重大事件を背負って施設で暮らすということ、よく指摘される少年犯罪と発達障害の関係性、被害者に誠意を尽くすことや罪を背負って社会で生きていくことの意味などが、加害者個人が特定されないように配慮されながら書かれている。 (日本評論社)


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