材料加工・組織制御工学

次世代の太陽電池=色素増感太陽電池を大面積にし、実用化を目指す


奥谷昌之 先生

静岡大学 工学部 電子物質科学科 材料エネルギー化学コース/総合科学技術研究科 工学専攻

どんなことを研究していますか?

現在主流のシリコン系太陽電池に対し、次世代太陽電池として注目されているものに、色素増感太陽電池があります。この太陽電池は、金属酸化物の酸化チタンの表面に色素を塗ることで、光を電気エネルギーに変換する太陽電池です。簡単な材料で低コストに製造できるというメリットがあります。2016年、スイスの大学のチームが15%のエネルギー変換効率を達成したと報じられました。

ただし問題は発電パネル基板の大面積化です。太陽電池の1枚のパネルは、面積が大きくなるほど変換効率の向上が難しくなります。色素増感太陽電池が実用化されるための大きな課題です。

シリコン型太陽電池パネルの大きさをはるかにしのぐ

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私は大面積の薄膜材料の研究に取り組んでいます。そのためにスプレー熱分解という薄膜形成法を開発しました。ガラス基板の上に、酸化スズと酸化インジウムを噴きつけると透明導電膜が形成されます。一般にガラスは絶縁体ですが、これによって電気が流れる大面積のガラスを作ることができます。その方法で、30cm×30cm基板の導電薄膜を作ることに成功しました。次に同じ方法で酸化チタンの色素増感太陽電池を作ることを確認しました。

この900c㎡という大面積は、すでに太陽光パネルとして普及しているシリコン型太陽電池パネルの大きさをはるかにしのぐものです。将来的には大量生産化に向けての技術として期待されます。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→製造業
  • ●主な職種は→開発、保守管理
分野はどう活かされる?

卒業研究の内容をそのまま踏襲するケースは少ないですが、研究経験を生かした開発業務に携わっています。具体的には、システムエンジニアリング、新製品の企画・開発、製造ラインの設計・管理などに従事しています。

先生から、ひとこと

工学部のモットーである「モノづくり」が好きな人、興味がある人はぜひ集まってください。

先生の学部・学科はどんなとこ

大学を卒業後、約8割の学生が大学院へ進学して専門的な知識を身につけ社会へ出ていきます。また、地理的に関東と関西のいずれからも学生が集まってくることが特徴です。

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研究室での学生の発表

先生の研究に挑戦しよう

色素増感太陽電池の作製してみましょう。比較的手に入りやすい材料で作製できます。

興味がわいたら~先生おすすめ本

トコトンやさしいプラズマの本

山崎耕造

プラズマ状態は、うまく制御することで、そのエネルギーを材料加工に利用することができるものだ。この本では、プラズマが自然界でどのように存在しているのか、またこの大きなエネルギーをどのように応用することができるのかが、分かりやすく紹介されている。あまり枝葉末節にこだわることなく、肩肘を張らずに読んでみてほしい。 (日刊工業新聞社)


カラー図解 プラズマエネルギーのすべて

プラズマ・核融合学会:編

プラズマとは何かから始まり、その基礎的な性質、プラズマを人工的に発生させる方法や、その実用方法などを、カラーの写真や図を多用しながらわかりやすく解説する。他の本よりも、図解が多い分プラズマのイメージをつかみやすいのが良い点だ。 (日本実業出版社)


色素増感太陽電池を作ろう 手作り太陽電池のすべて

若狭信次

有機色素は、草花や食品など身近なものから抽出でき、太陽電池の材料となる自然の素材だ。身の回りのものを利用して作れる、美しい色素増感太陽電池。その作り方が具体的に示されている。高校生の自由研究用にもわかりやすく書かれていてお勧めしたい。 (パワー社)


色素増感太陽電池の最新技術II

荒川裕則:監

色素増感太陽電池の研究者らが、それぞれの専門の立場から解説する専門書。次世代エネルギーとしてどのように実用化していくかや、国際的な動向を解説している。かなり専門的だが、最近の研究動向を知ることができる。 (シーエムシー出版)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。