持続可能システム

既存の太陽電池より超薄膜、高効率~「化合物・酸化物太陽電池」開発をめざす


伊﨑昌伸 先生

豊橋技術科学大学 工学部 機械工学課程 材料・生産加工コース/工学研究科 機械工学専攻 電気・電子情報工学専攻:兼担

どんなことを研究していますか?

太陽電池パネルは、今、基盤材料にシリコンを使ったものが家庭用として普及していますが、次世代型として期待されるのが化合物太陽電池と呼ばれるものです。世界的にも研究は活発です。私たちは、銅、インジウム、ガリウム、セレンを混ぜ合わせて作った新しいタイプの化合物太陽電池を開発し、エネルギー変換効率をシリコン型に遜色のないほど大きく向上させることに成功してきました。また、銅と酸素からなる次世代の酸化物薄膜太陽電池の研究も行なっています。

これらの太陽電池は、シリコン型より光を吸収しやすく、太陽電池そのものの厚みは2~4ミクロン程度の薄膜で済みます。大面積・大量生産が容易ですので、この化合物太陽電池が実用化されれば、大規模な火力発電所や原子力発電所などではなくとも、地域に分散した太陽電池発電所が実現するかもしれません。また、太陽電池材料を使って、水から水素を作ることもできますから、未来の水素社会に貢献できるかもしれません。

エネルギーを有効に使う半導体製造技術でCO2排出削減

私の研究する持続可能システムという分野は、地球上の生物とそれらがなす社会が存続していくためのシステムについて考えます。環境に負荷をかけないエネルギーシステムや、限りあるエネルギーを有効に活用する製造システム、持続可能な社会のためのインフラや輸送などの社会システムなど、様々な領域が対象の学問分野です。

その意味で、私のもう一つの研究は、エネルギーを有効に使う半導体製造技術に関する研究です。太陽電池に用いる銅と酸素からなる酸化物や最近普及が進む発光ダイオードに用いる酸化物材料などを、水の中から室温付近で直接作ることができます。これらの半導体製造技術により、製造過程で生じる二酸化炭素排出量を激減できる可能性を持っています。地球温暖化の速度をゆるめることができると考えています。

image

研究室にて。左が伊﨑先生

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→電気・電子産業、輸送機器製造業、鉄鋼材料などの素材企業
  • ●主な職種は→研究職、技術職
  • ●業務の特徴は→研究開発、技術開発、生産管理など
分野はどう活かされる?

必ずしも就職後、大学の研究開発と類似した業務が継続しているわけではありませんが、機械工学分野を卒業していても、太陽電池やエネルギー関係の材料の研究開発に関わる卒業生もいます。

先生から、ひとこと

限りあるエネルギーを有効に活用する、新たなエネルギー源を開発する、既存のエネルギー源の獲得を高効率化するエネルギーに関する研究は、地球上に生き、かつ生命活動と生産活動を営む人間にとって取り組むべき、そして未来に貢献できる課題です。技術だけや効率のみに囚われることなく、その中に潜む本質を見極め、誰にも追随しない研究を行うのが本分野だと考えています。

先生の学部・学科はどんなとこ

大学では多くの種類の研究を行っていますので、持続可能システム、特に太陽電池や水素の研究をしている研究室は多くはありません。私の研究室には、材料を作るところから性能を評価するところまでの設備がありますので、一貫した研究開発が行えます。特に、私たちの使っている製造技術は、物理を用いて計算して組み立てることができる場合があります。まず試してみるのでなく、少し考えて、計算をして組み立ててから、実験を始めるよう指導しています。また、実験の結果をただ眺めるのでなく、その中に潜む原因や本質を見極めるように指導しています。そうでないと、その先の発展は難しいと考えています。

image

研究室にて

先生の研究に挑戦しよう

太陽電池の材料を使って、水から水素を作ることもできます。太陽電池材料を水に入れ、光を当ててみましょう。水素ガスが発生するかもしれません。

再生可能エネルギー源を考える場合に、物質が存在するところにエネルギーはあるわけですから、「エネルギーとは何か?」「取り出せていないエネルギーはないか?」といった観点で考えてみましょう。面白いと思いますよ。まずは考えてみましょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

新エネルギー最前線

伊﨑昌伸

太陽電池に限らず新エネルギーの現状、種々の新エネルギー源、そして将来に向けた展望が記載されています。持続可能システムの重要性と必然性も記述されており、内容も比較的専門外の方でも読みやすくなっています。 (化学同人)


2001年宇宙の旅

アーサー・C・クラーク

未来の地球・人類はどうなっているのでしょう。宇宙での人間の活動はどうなっているのでしょう。2001年はもう過ぎてしまいましたが、アーサー・C・クラークが考えた未来を読みながら、皆さんにはこれからどんな未来が待っているのか、皆さんはどんな未来を切り開くのか、そのためには何をすべきかを考えてみてください。 (伊藤典夫:訳/ハヤカワ文庫SF)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ