植物が成長する方向は、植物の体を構成している細胞の成長方向でほぼ決まります。そして、植物細胞の成長方向は、微小管と呼ばれるタンパク質繊維の並び方によって決まると考えられています。微小管は細胞内で伸び縮みを繰り返しながら、細胞の分裂や成長に不可欠な構造を作り出す、真核生物に共通した細胞骨格です。
私たちの研究室では、微小管をちぢませることで、細胞の伸長方向を制御する新たなタンパク質(NEK)を明らかにしました。このタンパク質NEKは、我々動物や菌類にも存在し、細胞分裂をおもに制御しています。植物では進化の過程で、NEKが細胞分裂から細胞伸長の制御に転用されたと考えられます。現在、NEKのはたらく仕組みや、植物の進化における役割を、シロイヌナズナやゼニゴケを用いて研究しています。これにより、植物の伸長方向制御が明らかになり、それをコントロールすることができると考えられます。
植物の成長に不可欠な維管束は、木材やバイオエタノールなど応用面でも重要
植物の維管束は、水分やミネラルの輸送に加えて、植物体を機械的に支える機能があり、陸上植物の生存と進化に不可欠な組織系です。維管束がどのようにして形成されるのか、まだよくわかっていません。私たちは、維管束形成を制御するシグナル分子・タンパク質などを見出し、その働き方を調べています。これにより、維管束形成の分子機構が明らかになると共に、人為的に制御する方法を開発することができます。維管束は、木材やパルプの原料として重要で、バイオエタノールの原料となるセルロースを大量に蓄積するため、応用面においても重要です。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→食品・試薬会社、公務員、教育
- ●主な職種は→食品・試薬会社勤務、地方公務員、高校の教職員、大学の職員・研究者
- ●業務の特徴は→一般企業から公務員まで多岐にわたる
分野はどう活かされる?
未解決の問題に対する論理的な考え方や実践的に取り組む力に加えて、PCを使用したデータ整理・プレゼンテーション能力、関連した論文等を読む英語力・読解力、学会などでの成果発表に必要なコミュニケーション能力などが身につきます。高校の職員、製薬会社、食品会社などへの就職が多いのですが、これらの職種では生物科学に関する深い知識や技能を直接生かすことができます。
大学への進学を考えている高校生のみなさんにとって、入学試験が大きなイベントとして頭の中を占めていると思います。入学試験も改革されることが予定されており、不安になる人が多いと思いますが、小手先のテクニックだけでなく、変化に対応できる基礎学力と柔軟な思考力・応用力を身につけて欲しいと思います。
また、長い人生の中でみると、大学入試よりも大切なこと、困難な選択や試練がいくつもあります。これらを乗り越えるためには、現在の生活を大切に過ごし、基本的な生活習慣、友人・部活仲間・家族などとの人間関係を育んでください。
学力も大事ですが、私はこれをやってみたい・学んでみたい、という情熱ややる気の方がはるかに重要です。入学後でも良いので、夢中になれることをぜひ見つけてください。
岡山大学理学部生物学科では、植物から動物、バクテリアまで、様々な生物を用いた研究が行われています。研究内容も、光合成タンパク質の構造と機能、翻訳制御、植物の形態形成や生態、動物の概日リズム・神経系と行動・内分泌など多岐に渡っています。私たちの研究室では、細胞やタンパク質の機能を調べ、植物の成長と形態形成の仕組みを明らかにしています。教科書には載っていない、自分だけのオリジナルな発見があります。みなさんも、生物学を学び、多様な生物を用いた、最先端の研究にチャレンジしてみませんか?