金属・資源生産工学

日本の「都市鉱山」に眠るレアメタルの採掘し再生~資源循環のしくみを創る!


山口勉功 先生

早稲田大学 創造理工学部 環境資源工学科/創造理工学研究科 地球・環境資源理工学専攻

どんなことを研究していますか?

ハイブリット車や電気自動車などや、エアコンや携帯電話など電気・電子機器には、レアメタルを活用した機能性材料が数多く使われています。近年レアメタルの需給は逼迫し、これを解決する方法として「都市鉱山」という考え方が提唱されています。都市鉱山は、都市で大量に廃棄される家電製品などの中に存在する有用な資源を、鉱山に見立てたものです。日本の都市鉱山に眠る金属の量は、世界有数の資源国に匹敵する規模の「埋蔵量」を持ち、例えば、金は世界の現有埋蔵量の約16%もあります。都市鉱山の概念はたいへん重要です。

電気自動車EVモーターからのレアアースを回収する

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私は、使用済みの自動車や電気・電子機器から、レアメタルや銅などの有用な金属を製錬し、分離、回収する金属製錬と、金属リサイクルに関する都市鉱山の研究をしています。例えばネオジム、ディスプロシウムというレアアースを使った希土類磁石を含む電気自動車(EV)のモーターから、レアアースを回収する方法を見出しました。

資源小国の我が国の産業が持続可能な発展を続けていくためには、鉱石から金属素材を作り、金属素材から機能材料を製造し、さらには自動車や電子機器などの製品として社会に供給していくだけでなく、使用済みの製品から希金属を分離回収し、金属素材として再生するという金属資源の循環のしくみを作ること必要なのです。

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学生と一緒に、希土類磁石からのレアアース回収の実験をしているところ

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→非鉄金属、鉄鋼、貴金属などの製造業
  • ●主な職種は→研究者、技術者
  • ●業務の特徴は→製錬・精製プロセスの開発と改善
分野はどう活かされる?

大学で学んだ専門的学問に基づき、銅や貴金属などの金属の製錬と精製に関する研究と開発を行っています。金属製錬プロセスの高効率化を図るための改善方針を提案するとともに、生産現場で生じている問題や課題を解決しています。

先生から、ひとこと

金属・資源生産工学は、古くからある学問ではありますが、学問とその学問体系がしっかりしているため、基礎から応用まで体系的に専門的な学問を学ぶことができます。この学問は、金属製錬の基礎として発展し、最近では金属リサイクルから窒化ガリウムなどの新素材のプロセッシングにまで応用されています。今後も新しい製錬やリサイクル、新素材のプロセッシングの研究と開発を行っていく上で、重要な基礎学問であり、応用力のある学問分野です。

先生の学部・学科はどんなとこ

早稲田大学の環境資源工学科は、粉砕や選別など物理的な分離、電気化学を用いた水溶液系の分離、高温融体での分離、廃棄物の機能性材料への有効利用など、資源循環を考えるうえで重要な四つの分野を学ぶことができる国内唯一の学科です。

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早稲田大学軽井沢セミナーハウスでの夏期合宿

先生の研究に挑戦しよう

ホームセンターなどで市販されているニッケルを含むSUS304と呼ばれるステンレス鋼と、ニッケルを含まないSUS430などのステンレス鋼を分けるには、どんな方法を使えば良いだろうか。

単純に鉄と銅が混ざっている(化学的に結合していない)場合、簡単に鉄と銅を分けるにはどんな方法があるだろうか。さらには、鉄と銅が一度溶融してできるFe-Cu系合金の場合、鉄と銅を分離する方法はあるだろうか。実験装置がないと実際に確認することはできませんので、次に紹介する本などで調べて考えてみてください。

興味がわいたら~先生おすすめ本

図解雑学 金属の科学

徳田昌則、山田勝利、片桐望

わたしたちの身の回りには様々な金属と二種類以上の金属を組み合わせた合金が使用されており、金属はわたしたちの生活には欠かせない。これらの金属を鉱石や使用済みの製品から取り出すのが製錬だ。その製錬の方法は、密度、蒸気圧、酸化・還元、熱、平衡定数など金属の性質を理解したうえで、金属同士の性質の違いを利用して目的の金属と不要な金属を分け、目的金属の純度を高めるというものだ。このようなプロセスとともに、身近にある金属の特性を図解してわかりやすく解説してくれる。 (ナツメ社)


100万人の金属学 基礎編

幸田成康:編

1965年に初めて発行されてから、何度も復刻され読み継がれている金属学の入門書。難解と思われる様々なテーマについて、各分野の一流研究者たちがユーモアを交えながら解説している。読み物として楽しみながら金属学に触れられる。 (アグネ技術センター)


サステナブル金属素材プロセス入門

中村崇:編

「持続可能な循環型社会」を作り出すために、どのようなことができるだろうか。この本では、鉱石から金属素材へ、さらに使用済み製品から金属素材を再生するプロセスを、環境問題にも触れながら、わかりやすく解説している。 (アグネ技術センター)


銅のひみつ

銅は導電性、熱伝導性などに優れた特性を示し、身の回りの様々なところで利用されている日常生活に欠かすことのできない素材だ。銅の製造方法なども実際の工場を交えて視覚的にわかりやすく紹介している。公立の図書館で読めるが、サイトでも無料で読める。 ((株)学研プラス)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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