農業環境・情報工学

光合成予測

植物成長のカギは光合成。AIを活用し光合成を予測、農業に活かす


横山岳先生

九州大学 農学部 生物資源環境学科(生物資源環境科学府)

出会いの一冊

天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い

中村 哲(NHK出版)

この本は、私の専門である農業気象学のみならず、広く農学を知るうえで非常に良い本だと思います。農業というと品種改良や肥料などに着目されがちですが、実際に農業生産を向上させるためには、社会経済的な課題や農業インフラの問題など多岐にわたる専門性が必要なことがわかると思います。

こんな研究で世界を変えよう!

植物成長のカギは光合成。AIを活用し光合成を予測、農業に活かす

たくさん光合成すればすくすく成長

私たち人間は、野菜や穀物などを食べることで成長します。では、野菜や穀物といった植物は、どのようにして成長するのでしょうか?

植物は、太陽の光エネルギーを利用して有機物を作り、その有機物を活用して成長します。この太陽の“光”を利用して有機物を大気中の二酸化炭素と水から“合成”する過程を“光合成”と言います。つまり、ものすごく単純に考えると光合成をたくさん行うことができれば、植物はすくすく成長することができるとも言えます。

動けない植物は周囲の環境が大事

植物の光合成は、おおまかに植物の周囲の環境(光の強さ、温度、土の中の水分量など)によって決まります。人間であれば動くことができるので、暑いときは避暑地へ行き、寒いときは南国で過ごすこともできますが、植物は、当然動くことはできません。つまり、植物は、自身が生育している場の環境の変化にうまく対応する必要があります。

私は、「動くことのできない植物が周囲の環境に対してどのように応答・適応しながら光合成をおこなっているのか?」ということに興味をもって研究に取り組んでいます。

農家さんでは光合成計測は難しい

光合成は、農業において重要な情報ですが、実際に営農されている農家さんの圃場で光合成を計測することは非常に難しいです。そこで現在は、モデルを用いて光合成を予測することで、光合成の情報を農業に活用するための研究に取り組んでいます。

私は、特にAIと機構モデルを組み合わせた「ハイブリッドモデル」というモデルにより光合成を予測することを試みています。

温室内でイチゴの光合成を計測する様子
温室内でイチゴの光合成を計測する様子
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私が現在の専門に至った経緯は、大学3年生の時に配属された研究室で与えられた研究テーマ「乾燥地における結露による葉の濡れに対する植物応答」がきっかけです。

水が少ない乾燥地において、結露による葉の水が植物にどのような影響があるのか?ということを、実際に中国の甘粛省にある乾燥地農地へ出向き実験・調査に取り組みました。その過程で、乾燥地のような水が少ない気象条件でもたくましく成長する植物の姿から、環境に対する植物応答の研究に強く惹かれました。

中国北西部の乾燥地農地で植物の光合成と蒸散を計測している様子
中国北西部の乾燥地農地で植物の光合成と蒸散を計測している様子
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「農業生産技術開発の加速化を実現するハイブリッド光合成モデルの構築」

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先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 農業、林業、水産業

(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

(3) 建設全般(土木・建築・都市)

◆主な職種

(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者

(2) 製造・施工

(3) コンサルタント(ビジネス系等)

◆学んだことはどう生きる?

私の所属研究室では、ほとんどの学生が大学院の修士課程に進学し、修士課程修了後に就職します。研究室で学んだ専門知識を活かしたい学生は、気象関係の民間企業や国家公務員(農業土木)、県の公務員(農業)などに就職する学生が比較的多いと思います。その他にも、商社やIT関係などにも就職実績があります。

また、研究室の大きな特徴としては、博士課程進学者が比較的多いことです。博士課程修了後は、研究者(国の研究所や大学)になる方も多いです。

先生の学部・学科は?

九州大学農学部は、2年次後期よりコース・分野に配属され、専門的な講義・実験・実習・演習を受けます。さらに、4年次では各研究室に配属され卒業研究を行います。

私の所属は、西部生産環境工学分野の気象環境学研究室です。気象環境学研究室では、気候変動が農業生産に及ぼす影響やスマート農業に関する研究など現在の農業が抱えている課題に関して広く学ぶ機会があります。

気象環境学研究室が実験で使用している温室。室内の温度などを自動で制御可能です。
気象環境学研究室が実験で使用している温室。室内の温度などを自動で制御可能です。
先生の研究に挑戦しよう!

植物の蒸散の環境応答を調べてみよう

水とたくさんあげた植物と水を少ししかあげていない植物をそれぞれ用意しましょう。植物体がすっぽりおさまる透明な箱(例えば透明なテーブルクロスとアルミフレームなどの枠組みを利用)を作りましょう。空気が漏れないように透明な箱(チャンバーや同化箱と呼びます)に植物と温湿度計を入れて、温湿度計の気温と相対湿度から水蒸気圧を計算し、水蒸気圧の時間変化から蒸散速度を計算しましょう。水やりの仕方によって蒸散速度は変化するか観察してみましょう。

中高生におすすめ

農業気象・環境学(第3版)

編:大政謙次、北野雅治(朝倉書店)

農業と気象に関する知識が体系的にまとまっています。気象環境が農業にどのような影響を及ぼしているか、気候変動によって食料生産はどのように変化していくのか?などに興味がある方におすすめです。


植物と微気象(第3版) 植物生理生態学への定量的なアプローチ

ハムリン・ゴードン ジョーンズ 監訳:久米篤、大政謙次(森北出版)

高校生には少し難しいかもしれません(大学院生レベルです)。しかし、植物の環境応答に関する非常に良い教科書だと思います。特に植物を扱う=生物の知識と思われがちですが、植物環境応答を理解するためには、数学的・物理的なアプローチが非常に重要です。数学や物理が得意で植物にも興味がある学生さんにはぜひ手にとっていただきたいです。


国立環境研究所動画チャンネル

国立研究環境所動画チャンネルでは、非常にわかりやすく地球温暖化によって地球の環境がどのように変化しているのかを説明してくださっています。植物の環境に対する応答を知る、つまり環境の変化によって農業生産がどのような影響を受けるのかを知るためには、まず地球の環境がどのような状態か今後どのように変化していくのかを知ることが重要です。

私の専門である「農業気象学」は、環境に対する応答を理解し、その知識を農業生産の向上に応用する分野です。農業というとどうしても作物の生物学的な面に着目しがちですが、実際は環境(気象)も非常に大きな影響を及ぼしていることを知っていただけると良いと思います。

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一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

大工さんになりたいので建築を学びたいです。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

アヴィーチー(Avicii)の『Without You』です。

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

野球場で働いてました。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

子育て

Q5.好きな言葉は?

人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり


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