無機材料・物性

有機物質と無機物質を複合化し、新しい機能を持つ材料を開発


高橋雅英 先生

大阪公立大学 工学部 マテリアル工学科/工学研究科 物質化学生命系専攻

どんなことを研究していますか?

無機材料は、これまでセラミックやガラスとして利用されてきた身近な材料です。最近では、これらの材料は最先端のハイテクデバイスに応用されています。例えばスマートフォンの中には、数百種類以上の無機材料が、センサー、記憶デバイス、ディスプレイとして使用されています。あるいは、室温により近い温度でゼロ抵抗となる高温超伝導材料や、電気特性と磁気特性が融合して高密度メモリー機能などを発揮するスピントロニクス材料などの最先端の応用が実現できる材料として、盛んに研究されています。

最近では、有機材料や有機高分子、あるいは生体材料と複合化することで、人体の器官の代替材料や環境に応じてフレキシブルに特性が変わるスマート材料なども研究されています。「無機材料・物性」分野では、無機系の材料を中心に、これまでになかった新物質を作り出し、有機物や生態関連物質と複合化することで優れた、かつ新しい機能性を開拓しているのです。

ナノサイズの結晶の大きさを制御し、環境に合わせて特性が変わる材料を生む

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私は有機物質と無機物質を複合化することで、それぞれの材料の持つ特性を相乗的に活用することに取り組んでいます。追及するのは、極微小のナノサイズの結晶の形状、大きさを制御して、機能性物質を設計することです。

材料の大きさを小さくすることで、新しい電子機能性が発現することは知られていますが、私は、化学組成やサイズだけではなく、ナノサイズの小さな穴をたくさん持っている材料や、温度など外部環境に合わせて形や特性が変わるスマートな材料を生み出しています。

これらの材料は、代表的な触媒反応の1つ、酸塩基触媒として利用できます。それによってプラスチック製品や医薬品の合成効率の飛躍的な向上や、環境汚染物質の除去、生体内での有害物質やウイルスの除去に利用可能となります。

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研究室での試料の合成風景

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→化学、自動車、材料
  • ●主な職種は→研究
  • ●業務の特徴は→研究部門において新しい材料を開発することが多い
分野はどう活かされる?

液晶、有機ELディスプレイ用低反射コーティング膜の開発などに従事しています。

先生から、ひとこと

優れた機能を持つ新しい物質を生み出す「無機材料・物性」分野では、ゼロから一を生み出す「現在の錬金術」を実践できる場所です。ユニークで世の中の役に立つ新しい材料を生み出すダイナミックな研究を一緒に進めましょう。100年後に残る研究ができる場所です。

先生の学部・学科はどんなとこ

大阪府立大学では、物質化学系の優秀な若手教員が多く在籍しており、風通しの良い雰囲気で研究・教育が進められています。学生に対するきめ細かい教育を一つの特徴としており、入学後の伸びが期待されます。また、海外留学なども大学が積極的にサポートしており、充実した学生生活を送ることができます。

先生の研究に挑戦しよう

人体の血管の中を泳いで患部にたどり着き病変を治療する柔らかくて小さなロボットや、分子サイズの穴が並んだ材料を使った超小型で高性能なパソコンの部品などの開発に挑戦してみよう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

進撃の巨人 空想科学読本

柳田理科雄

10mを超える巨人が運動性を確保するために必要な条件や、人間の体重を支える立体起動装置の材料に求められる特性などが、一定の仮定の下に述べられている。仮説から検証というプロセスを、身近な漫画の内容を元に議論しており、理系を学ぶ者の考え方の入門書として興味深い。本書はシリーズで刊行されており、理系を志す高校生に気楽に読んでほしい。 (講談社)


好きなことに、バカになる

細野秀雄

日本を代表する材料科学者のものの考え方が理解できる。材料開発はいわゆる「錬金術」であり、価値のないものを集めて、価値あるものを生み出すことに面白味がある。その「錬金術」のベースとなるものの一つが、「好きなことに本気になる」こと。この発想力について解説がされていて興味深い。 (サンマーク出版)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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