自然界が見出してこなかった新たな酵素を創り出す
酵素が化学反応を効率的に進行
生命とは、「多数の化学反応の集合体」とも言えます(少々極端な表現かもしれませんが)。例えば、私たちが食事からエネルギーを得るための解糖系という仕組みは、全部で10個の化学反応から成り立っています。
これらの化学反応を効率的に進行させているのが「酵素(=生体触媒)」です。自然界は何十億年もの時間をかけて、多様な化学変換を可能にする酵素を進化させてきました。
自然界の戦略に感銘
酵素の中で化学反応が起こる場所(=活性中心)には補因子と呼ばれる金属イオンや有機分子があり、それを取り囲む環境は対応する化学変換に最適化されています。
そのため、同じ補因子でも働く環境が違えば、引き出される機能が変わります(図A)。例えば、酸素を運ぶヘモグロビンと、薬物の代謝に関わるシトクロムP450の補因子は同じです。私はこの自然界の戦略に感銘を受け、人工補因子(非天然の分子や金属イオン)の機能をタンパク質内の環境によって制御し、自然界が見つけ出してこなかった化学変換を可能にする酵素を作り出すことを目指しています(図B)。
人工酵素を新たな医薬品開発につなげる
一つの酵素が欠けるだけで病気の原因となることからも、細胞内の酵素反応は連鎖的につながり、精密なネットワークを形成していることがわかります。私の将来的な目標は、この酵素反応ネットワークを人工酵素でコントロールし、新たな作用機序の医薬品開発につなげることです。
小、中、高と良い先生に巡り会えてきたこともあって、ずっと教員志望でした。一方で、化学も好きだったので、教員免許が取得でき、化学も学べる大阪大学に進学しました。教員免許も取ったのですが、「このアイデア面白そう、試してみたいな。もうちょっと研究続けよう。」を繰り返し、今に至っています。
ただ、今、思い返してみると私が酵素の研究をやっているのは、中学生の時の理科のテストと結びついているかもしれません。ある酵素の問題に自信を持って答えたのですが、×がついて返却されました。納得がいかず、「実験させてください!」と理科の先生にお願いして自分の考えを証明しました。その時の「その姿勢は研究者に向いていると思うよ」という先生の言葉が今研究者になっていることの出発点の一つかもしれません。
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 教育学 (元々小学校の教員志望だったので) |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? スイス(過去に4年以上住んでいました。周りの人もとても親切で子育て含めて安心で暮らしやすい国だったので。) |
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Q3.一番聴いている音楽アーティストは? 中学時代からBUMP OF CHICKENを聴くことが多いです。(何かに行き詰まって奮起したい時は『バトルクライ』) |
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Q4.好きな言葉は? 只だ一燈を頼め |