ビックデータの時代と言われる現代社会において、統計科学の重要性がますます高まっています。インフルエンザの発生予測、新薬の効果の評価、野球やバレーボールなどでの作戦指示、犯罪捜査における犯罪者を予想・分析するプロファイリング技術など、多種多様なところで統計科学は利用されています。この他にも、生命科学、金融・経済、経営などにおける問題解決への活用など、統計科学の研究は社会と密接に関連し、科学的分析の基盤として不可欠な基礎知識となっています。
計算速度が速くなれば、より詳細な画像診断が可能に
しかし、爆発的なデータ量の増大に伴い、解析のための統計計算に多大な時間が必要になる場合があります。そこで私は、主にデータ解析に用いる統計計算アルゴリズムの研究をしています。コンピュータの高速化により、データ解析の計算時間は軽減されてきていますが、もっと根本的な計算速度の短縮を図るため、統計計算アルゴリズムの効率化と加速化による改良を行っています。
例えば、医用画像診断の統計解析のために用いられているアルゴリズムには、計算法として優れた性質を持っていても、計算速度が遅いという欠点があるかもしれません。こんなとき、アルゴリズムを改良して計算の高速化が可能になれば、従来の計算時間で、より解像度の高い詳細な画像診断を行えるようになります。ひいては診断の精度の向上にもつながると考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種→ソフトウエア会社(SE)、流通・小売業、金融
分野はどう活かされる?
市場調査のためのアンケート調査票作成やデータ解析のための統計処理、統計解析のためのプログラム作成などに活かされています。
統計科学は、数学や計算機科学などの理系要素が強いのですが、データ解析の利用を考えた時、経済・経営や心理学などに興味を持つ人にも十分に魅力的な学問分野であると思います。
ビッグデータの活用は、ビジネス、医療・福祉、農業などと広範であり、その可能性は無限大に広がっていくことが予想されますが、集積された大量のデータから有用な情報抽出を行うための高度な統計知識と解析スキルを持ったデータサイエンティストが不足しています。そこで、文部科学省や総務省では、その人材育成に力を入れてきています。このように、ビッグデータ時代における統計科学は、まさに現代社会で要請される学問分野であり、これから飛躍的に発展していくと思っています。