有機化学

メタンガスを燃料でなく炭素資源として活用する


山下誠 先生

名古屋大学 工学部 化学生命工学科/工学研究科 有機・高分子化学専攻

どんなことを研究していますか?

私は、未来における人類は太陽発電など、化石資源に頼らずにエネルギーを使える技術を手にしていると信じています。その時代が来た際には、現在人類が燃料として使用している天然ガスや石油は、炭素資源=石油由来のプラスチックなどの原料として利用する必要があります。現代では石油を炭素資源として活用する方法は既に確立されていますが、天然ガスをそれに使うことは未だ非常に難しい状況にあります。

ガスの中でも、特にメタンガスは、世界中でメタンハイドレートとして存在することが指摘されているので、メタンガスを炭素資源として利用することは、将来の人類が解決すべき重要な課題です。炭素1個と水素4個からなるメタン分子を炭素資源として利用する際は、炭素原子同士をつなぎながら水素原子を取り除いて、少しだけ大きな分子にしてやる必要があります。この目標に対して、現在は「金属錯体触媒による炭化水素の変換反応」を研究しています。

新しい化学結合を創成する

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有機化学は炭素を含む分子を対象とする学問です。炭素は4本の結合を持つため、その結合のしかたの違いで非常に多くの有機分子を形成し、有機化学に多様性を与えています。それはあたかもレゴブロックで何かを作り出すことと同じであり、炭素というブロックを組み合わせることで、いろいろな分子を作り出せるのです。

ここで周期表を見ると、炭素以外にも多くの元素があります。もし周期表の中の元素の組み合わせで、今までに無い化学結合を生み出すことができれば、これを炭素とつなげることで、さらに多くの有機分子を新しく生み出すことができます。新しい結合を作ることはレゴブロックの新しいパーツを作ることに相当する基礎研究ですが、無限の可能性を秘めています。私たちの研究室ではホウ素やアルミニウムを含む新しい結合を創り出し、その新しい分子構造や新しい化学反応を開拓しています。

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ドイツの先生と大学院生がディスカッション

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→化学メーカー、大学
  • ●主な職種は→研究開発、教員  
分野はどう活かされる?

化学分野の研究開発

先生から、ひとこと

有機化学は、炭素原子同士を自由自在につないで新しい化合物を合成することで、高機能な材料や高性能医薬品を作り出すことができる分野です。有機化合物は小さな分子ですが、大きな生物の挙動をコントロールしたり、我々の身の回りでスマートフォンや太陽電池など最先端のデバイスの成分として活躍したりしています。有機分子の小さな構造とマクロな性質の相関を考えることで、少し前までは誰も想像し得なかった未来を作り出すことのできる学問が有機化学なのです。

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研究室を訪問してくれたドイツ人の先生を囲んで

先生の研究に挑戦しよう

高校生は特に具体的に何か取り組む必要はないと思います。しかしあえて言うなら、大学でやる学問を自ら先取りすると良いでしょう。例えば、大学で使用する化学の教科書は書店で入手できます。これに目を通しておくと、高校での授業とはずいぶん違うことに気づくでしょう。

なぜなら、高校生までの科学―特に物理・化学・生物・地学などの基幹分野の科学―の内容は、最先端の知識には程遠く、50~100年前にわかったことが大半です。大学で学ぶ科学は、もっと最先端の知識や技術です。このギャップは、大学入学後の3年間の教育で埋めるのですが、これを先取りして理解しておけば、大学での授業の理解は、よりスムーズに学べるでしょう。あるいは、通常は4年時で行う卒業研究の前に、研究室での研究に参加させてくれる先生が見つかるかもしれません。

興味がわいたら~先生おすすめ本

有機化学美術館へようこそ 分子の世界の造形とドラマ

佐藤健太郎

著者が運営している有機化学美術館(http://www.org-chem.org/yuuki/yuuki.html)というウェブサイトをもとに、面白く美しい有機分子とその性質について紹介しています。その構造の美しさにフォーカスしています。有機分子は、炭素の結合が4本であることを理由にとにかく多様性に富んだ構造をしています。化学者の間でも「美しい分子は高い機能を持つ」と考えている人も多く、本書を読めば、有機化学の一端を垣間見ることができるでしょう。 (技術評論社)


化学ポータルサイト「Chem-Station」

化学全般に関するいろいろな最新の話題が数多く記載されているポータルサイトです。日本における化学情報ウェブサイトでは最も大きく、化学系学生のための就職情報や、化学の研究者のインタビューなども掲載しています。


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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