現在、日本の国の借金の残高は、他の先進国と比較しても、極めて高い水準にあります。私は、財政赤字の拡大を抑制するために、どのような政府予算の政策間の配分のしかたが望ましいか、分析に取り組んでいます。たとえば、財務省は予算総額とその配分を決定しますが、実際には各省庁が様々な施策を実施するために詳細な予算配分を行います。つまり、予算を決定する財務省が、実際の各施策への予算配分を他者に委任する形になり、財務省が望む配分が実現されないという問題が生じます。
私は、このような予算の各施策への配分に関する決定が、政府内の複数の部門で分担して行われることで、政策の経費がどのような影響を受けるのかを分析しています。国が地方に予算配分する地方交付税、あるいは公共事業などでも、適切な水準を超えた、過剰な予算配分が起こっていると考えられます。どのような制度改正を行えば、適切な予算配分が実現されるか、予算編成を表現するモデルを作り、考察しています。財政赤字が深刻化する中、予算の適切な配分は、財政・公共経済という学問の重要な研究課題です。
高齢者向けの予算が増え、若い世代向けの予算が減らされる
次の選挙で勝ちたい政治家は、政府支出の拡大を支持する傾向があります。特に、高齢化社会では、高齢者向けの政策を充実させることは、選挙での得票数を増やすために有効です。政府の財源は有限ですから、高齢者向けの政策への予算が増える一方で、より若い世代向けの政策への予算が減らされることになれば、世代間で不公平が生じます。すべての世代が、偏りなく恩恵を受けられる経済を実現するために、より良い制度・政策のありかたを探ることを目指しています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→公務、金融・保険業、運輸・通信業など、多岐にわたります
理論分析を行う教員と実証分析を行う教員のバランスがとれている学部だと思います。また、公共経済学、財政学のみならず、社会保障論、金融論、労働経済学など、政策の効果を分析対象とする分野で、学術的な研究を進めながら、同時に実際の政策の動向にも関心を持ち、具体的な提言を発信している教員が多く所属していることも、特徴の一つです。
興味がわいたら~先生おすすめ本
私たちと公共経済
寺井公子、肥前洋一
選挙権年齢が18歳以上になり、高校生にとって政治は身近なものになった。著者の寺井先生は、「本書では、現実の政策の評価に使える『ものさし』を提示した。有権者としてふるまうときに、本書が役立つことを願う」と語る。本書は、初学者向けの「公共経済学」の教科書。「政府に期待されている役割は何か」「なぜ政府は時々期待を裏切るのか」を、経済学の考え方に基づき説明する。公共経済学の理解に必要な「ミクロ経済学」の基本にはじまり、生活保護、税、年金などの個別の、私たちが直面している「財政問題」を解説。経済学と政治学、心理学との着眼点の違いなどにも触れているので、「公共経済学」という学問分野が理解できる。 (有斐閣ストゥディア)