天文学

超巨大ブラックホール

死につつある超巨大ブラックホールを捉えた!寿命解明へ


市川幸平先生

早稲田大学 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻

出会いの一冊

重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち

ジャンナ・レヴィン、訳:田沢恭子、松井信彦(ハヤカワ文庫 NF)

重力波検出器LIGOの重力波検出に至るまでの重力波観測の歴史やドラマが魅力たっぷりに書かれています。私の研究である超巨大ブラックホール観測も、2030年代にファーストライトを迎えるとされているLISAという重力波観測衛星ができれば可能になるのですが、その礎となる地上重力波観測の歴史を知りたい人にピッタリの本です。

私が原著で読んだので、英語が得意な方は原著の"Black Hole Blues and Other Songs from Outer Space"にトライしてみてください。

こんな研究で世界を変えよう!

死につつある超巨大ブラックホールを捉えた!寿命解明へ

X線で見える活動銀河核

この記事を読んでいるみなさんは、夜空を見上げると数多くの星や銀河が見えることを知っていることでしょう。では、もしみなさんが地球の大気を飛び出して、(あのレントゲンで有名な) X線の「眼」で宇宙を見たらどうなるでしょうか。

実はX線でも無数の明るい天体が見えるのです。星はX線を作るのがあまり得意ではないので、この天体の正体は星でも銀河でもなく、そのほとんどが活動銀河核と呼ばれる超巨大ブラックホールであることがわかっています。これが私の研究対象です。

1000光年以上のスケールなら観測できるんだ!

この超巨大ブラックホール、実はまわりにあるガスが落ちてくることで少しずつ太ります。その際、ガスは重力エネルギーを開放して非常に明るく輝き、X線を出して、先ほど紹介した活動銀河核として観測されるのです。

ですが、この活動銀河核がどの程度のあいだ活動するのか (=ものを食べて太るのか)はわかっていませんでした。私は、この活動銀河核が作り出す1000光年以上の大規模構造を利用することで「今まさしく活動を終えようとする」現場を捉えることに成功し、これは活動銀河核の寿命解明への大きな一歩となりました。

この研究のきっかけは、同僚から「市川くん、変な天体があるんだけど、活動銀河核があるかどうか調べてくれへん?」と言われて調べてみたところ、大きなスケールでは活動銀河核っぽいのに、小さいスケールでは活動銀河核の兆候がまったく見られないという変な性質を持ったものでした。あるとき、「あ、大きいスケールは光の情報が届くのに時間がかかるんだ」とわかってからは同僚とワクワクしながら論文を書いたのを覚えています。

今回の研究テーマのターゲット天体のひとつであるVLA望遠鏡とアルマ望遠鏡の観測から得られたArp 187の電波画像 (VLA 4.86 GHzに青、VLA 8.44 GHzに緑、アルマ望遠鏡 133 GHzに赤を割り当てた擬似カラー画像)。2つの電波構造が見えるが、中心核 (画像中央部)は暗く、活動銀河核が「死につつある」ことがわかる。(画像:(C)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Ichikawa et al.)
今回の研究テーマのターゲット天体のひとつであるVLA望遠鏡とアルマ望遠鏡の観測から得られたArp 187の電波画像 (VLA 4.86 GHzに青、VLA 8.44 GHzに緑、アルマ望遠鏡 133 GHzに赤を割り当てた擬似カラー画像)。2つの電波構造が見えるが、中心核 (画像中央部)は暗く、活動銀河核が「死につつある」ことがわかる。(画像:(C)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Ichikawa et al.)
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

大学 (理学部) に入って当初は化学をやろうと思っていたのですが、すぐにつまらなく感じて挫折し、2回生になり大学数学にも挫折し、物理をやっていたら極限的な環境が実現できる宇宙物理学をやりたくなり、X線天文学の研究グループにはいったのが天文学を始めたきっかけでした。興味があるものはとりあえずやってみるの精神で、今ではX線に限らず電波・光赤外線・重力波なども利用して超巨大ブラックホールの研究をすることになりました。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「千年以上の超長期時間変動を用いた活動銀河核の観測的研究」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
すばる望遠鏡の観測準備のようす。手前は大学院生 (当時)、奥は共同研究者の博士研究員。最近はすばる望遠鏡のあるハワイまで、国立天文台の本部三鷹キャンパスのリモート観測ルームから観測も行うことができるようになっており、ハワイにあるすばる望遠鏡の観測開始時点では日本はまだ昼間であることがわかる。
すばる望遠鏡の観測準備のようす。手前は大学院生 (当時)、奥は共同研究者の博士研究員。最近はすばる望遠鏡のあるハワイまで、国立天文台の本部三鷹キャンパスのリモート観測ルームから観測も行うことができるようになっており、ハワイにあるすばる望遠鏡の観測開始時点では日本はまだ昼間であることがわかる。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) コンサルタント・学術系研究所

(2) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関

(3) 航空機・航空機器

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

(2) 大学等研究機関所属の教員・研究者

(3) コンサルタント(ビジネス系等)

◆学んだことはどう生きる?

航空宇宙分野で流体シミュレーションの企業に就職した学生やコンサルタントになった学生がいます。天文学の直接的な知識が生きることはないと思いますが、天文学の研究をやるうえでは論文を読み、共同研究者と議論をし、結果を論文にまとめ、国際会議で発表などもすることになります。この、プロジェクトを始めから最後まで自分がリードするという一連のプロセスを経験したこと、しかもそれを英語で行ったことが、現在の分野でも強みとなっていると聞いています。

先生の専攻は?

私は超巨大ブラックホールの観測をやっていますが、早稲田大学の物理学及応用物理学専攻には他にも銀河の観測、高エネルギー天体観測や理論天文学など、天文学の幅広い領域の研究者がいらっしゃいます。

また、大学入学の時点では天文学の研究をやるぞ!と決めている人は少数だと思いますので、物理全般を学び、その上で天文学を卒業研究などで選ぶことができるのも早稲田大学の物理学科・応用物理学科の良いところだと思います。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

マルチメッセンジャー天文学が捉えた新しい宇宙の姿 宇宙の物質の起源に迫る

田中雅臣(講談社ブルーバックス)

みなさんが思いつく可視光の天文学だけでなく、ニュートリノ・宇宙線・重力波を使った天文学の魅力がたっぷり詰まった本です。このような天文学もあるのかとぜひ知ってもらいたいです。


四畳半神話大系

森見登美彦(角川文庫)

大学生時代によく行った近所の本屋さんで紹介されていた本です。このような文章が紡げる人がいることに、当時衝撃を受けました。同じタイトルのアニメもオススメですし、著者の他の本もぜひ読んでください。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

物理学か、あるいは歴史学

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

Jazzが好きで、色々聞くのですが、Dave Brubeckが好きです。一つ上げるとしたら、代表作の『Take Five』でしょうか。

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

『涼宮ハルヒの消失』です。いまだに見た映画館の場所、上映後の景色を覚えています。

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

空気清浄機かなにかのモニターで、届いた空気清浄機を一週間家に置いて送り返すだけという謎アルバイトをやったことがあります。


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