なぜ高齢者のミスのほうが大事故につながるのか
同じミスでも若者と高齢者では意味が異なる
テレビを見ていると、高齢者がアクセルとブレーキを踏み間違えて、大事故になったというニュースをよく見ます。しかし、なぜ高齢者がアクセルとブレーキを踏み間違えると大事故になってしまうのでしょうか。
実は、皆さんのように若くて、免許を取り立ての人も、アクセルとブレーキを踏み間違えることが多いそうです。同じ「エラー」であっても、若い人と高齢者では、その意味が異なるようです。
エラー後の対応の遅れやエラーの連続が大事故に
私の研究では、このようなエラーの問題を「加齢」という観点から分析しています。とりわけ、エラーが起きた後の問題に注目しています。なぜかというと、高齢者では、アクセルとブレーキの踏み間違いのようなエラーが起きた後の対応が遅れたり、エラーを続けて起こしてしまうような例があるからです。
記憶に新しいところでは、2019年の、池袋の交通事故があります。この事故では大変悲惨な結果を生み出してしまったのですが、事故の詳細を見てみると、人を巻き込んだ大事故に至る前に、小さなエラーを起こし、エラーが連続する中で、最終的に大事故につながっている可能性があります。
このようなことから、操作上でエラーが起きるような状況を設定しておき、そのエラーを研究対象として、大学生のような若い人と、高齢者では、何がどのように異なるのかを、心理学の実験の中で分析しています。
高齢者の方々の、様々な行動特性を知ることで、より住みやすい環境を設定するための、基礎的な知見が得られるものと思います。例えば、高齢者のエラーの特徴を知ることで、大事故につながらない装置を工夫することができるかもしれません。そのことが、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」ことにつながるように考えています。
「高齢者にみられる実行機能の特徴-エラー後の対応に注目して-」
◆講義初回に話すこと
心理学は高校までの教科にないので、心理学という学問分野のポイントをまずつかんでほしいと考えています。そのために、自分の研究テーマである「エラー」の問題をどのように研究しているのかを例にしながら解説しています。
◆主な業種
(1)病院・医療
(2)金融・保険・証券・ファイナンシャル
(3)大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
◆主な職種
(1)医療系専門職(臨床検査技師・理学療法士等)
(2)一般・営業事務
(3)教育機関教員、インストラクター
◆学んだことはどう生きる?
学部段階では、心理学をベースにしつつ、その後、対人援助領域(例えば、看護学や言語障害学)に進み、その分野の研究者として活躍している卒業生がいます。心理学で、基本的な研究法や統計法など、科学的なスキルを身につけた上で、さらに興味のある分野に進むことができるのが特徴と言えます。また、企業の中で、商品開発を行っている卒業生もいます。同様に、科学的なスキルをマスターしたことで、選択肢が広がったものと思います。
立命館大学の総合心理学部では、範囲の広い心理学のみならず、心理学の周辺領域まで含めて、人間科学分野を学修できるのが最大の特徴です。30〜40名程度のスタッフが、広い範囲をカバーしています。さらに、心理学の分野で、使える英語のマスターを目標に掲げています。「英語」を学ぶというよりも、「英語」で心理学を学び・発表するスキルの獲得を大事にしている点が本学の大きな特徴と言えます。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? カナダ。自然が豊かだから。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? グレン・グールド。特に、バッハの『ゴルトベルク変奏曲』。 |
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Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『ショーシャンクの空に』 |
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Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 発達に問題を抱えたお子さんの家庭教師。 |
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Q5.研究以外で楽しいことは? 時代小説を読んだり、地方の建物を探訪すること。 |