植物たちの戦争 病原体との5億年サバイバルレース
編著:日本植物病理学会(講談社ブルーバックス)
植物の病気はなぜ起こるのか?植物を病気にしようと、巧みな感染戦略を駆使する病原菌と、病気になるまいと緻密な免疫系を発達させた植物。その攻防戦の分子メカニズムが、高校生にも分かりやすく書かれています。大学で学ぶような、植物病理学の最先端の知見も詰まっています。
この本を読めば、陸上植物が誕生した5億年前から、植物と病原菌が共に進化してきた軌跡を辿ることができ、ミクロなレベルで行われている驚きの攻防戦を知ることが出来ます。植物病理学の研究では、この本で紹介されているような、植物・病原菌に存在するビックリするような機構を発見する事があり、とても面白いです。
植物の免疫を逆手に取る、カビの驚きの感染メカニズム
植物の病気、原因の80%がカビ
植物の病気って、聞いたことはありますか?ピンと来ない人も多いかもしれませんが、道端の葉っぱに白い粉が付いていたり、冷蔵庫の葉物野菜がドロッと溶けたようになっていたり、果物にかさぶた状の傷が出来ていたり…これらは植物の病気によるものがほとんどです。
実は、これまでに日本国内だけでも10,000以上もの植物病害が報告されており、その原因の80%を占めるのが、カビ(糸状菌)による病気です。
強力な感染力は「付着器」にある
では、なぜカビの病原菌はそんなにも沢山の植物に感染できるのでしょうか。
カビの胞子は植物に付着すると、そこから発芽して「付着器」と呼ばれる黒い細胞を作ります。付着器の内部では圧力が高まりパンパンに膨れ、その圧力と酵素の力を使って、硬い植物の表面を突き破って侵入します。その後、カビの菌糸は植物の栄養を吸いながら感染を拡大し、植物体を蝕んでいきます。このように、カビの感染力が強い秘訣の一つには「付着器」があります。
付着器を作るメカニズムを農薬に応用
私は、カビが付着器を作るメカニズムについて研究しています。最新の研究では、「植物が作り出す免疫因子をカビが認識して、付着器を作る」ということが分かってきました。植物は病気になりたくないから免疫因子を出すのに、それに反応して付着器を作って感染してしまうカビの力には驚きです。
この研究を活かして、カビが付着器を作れず、病気を起こせなくなるような新しい農薬開発に貢献できればと考えています。
昔から国際協力に興味があり、どうしたら世界の食糧問題を解消できるのだろうと考えていました。高校生物の授業で、植物の遺伝子組換え技術によって厳しい環境へ適応できるようになると知り、植物学は飢餓を救える!と思って農学部への進学を決めました。実際の食糧問題には政治的な要素もありますが、植物病理学を研究することによって、少しでも健康な農作物の生産に貢献できればと思っています。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 理学部で生物学にどっぷり浸かってみたい |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 天気のいい南の国でのんびりしたい |
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Q3.一番聴いている音楽アーティストは? Beginの「オジー自慢のオリオンビール」。歌詞の中で「金がないなら海にが行くさ、魚があれば生きられる」との言葉がありますが、「そうか、人生失敗しても食べ物さえあれば生きられるのか!」とハッとして、その歌詞に背中を押される形で単身ドイツへ渡り、3年半研究員をしました。 |
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Q4.大学時代の部活・サークルは? 弓道部・ピアノサークル |