材料加工・組織制御工学

形状記憶合金

血管を中から拡げる医療器具「ステント」を形状記憶合金で


松井良介先生

愛知工業大学 工学部 機械学科

出会いの一冊

トコトンやさしい形状記憶合金の本

形状記憶合金協会(日刊工業新聞社)

SMA(形状記憶合金)がどのような性質を持ち、どのように造られて利用されているか?などをやさしい文章でまとめた一冊です。意外にも身近なところに使われているので、読んでいただくと様々な発見があると思います。

なぜ元の形に戻るのか?どのように形を記憶させるのか?ステントのように人体に入れて使っても安全なのか?などについても触れられており、SMAをもっと深く知りたいという方にもおすすめです。

こんな研究で世界を変えよう!

血管を中から拡げる医療器具「ステント」を形状記憶合金で

お湯に入れると形が戻る金属

私は「形状記憶合金」という材料について研究しています(略してSMAと呼んでいます)。皆さんはこの材料の名前を聞いたことがあるでしょうか?これは、「大きく変形させても元の形に戻る」という、とてもユニークな性質を持つ金属です。

大きく変形した後に元の形に戻すためには、その材料の「形状回復温度」より高い温度にする必要があります。例えば形状回復温度が60℃の材料なら変形後に熱湯に入れれば元の形に戻りますし、形状回復温度が-10℃なら室温で(加熱しなくても)大きな変形が元に戻る、というわけです。前者の性質は「形状記憶効果」、後者は「超弾性」と呼ばれています。

血管の形を記憶させる

この研究では、SMAの「超弾性」の性質を「ステント」と呼ばれる医療器具に応用し、現在は治療が難しい血管の病気を治療することを目指しています。ステントとは部分的に狭くなってしまった血管に入れ、内側から血管を押し拡げるものです。

形状回復温度を体温より低い温度に設定し、留置する血管より太い直径の形を記憶させておけば、常に血管を拡げようとしてくれるため、まさにSMAはステントにぴったりの材料と言えます。

細くても拡張力のあるステントを

現在主流になっているSMA以外の材料でつくられたステントでは、特に細い血管への適用が難しいことが課題になっていました。細い血管に挿入するためにはステントも薄く細くする必要があり、そうなると十分な拡張力を発揮できなくなるからです。

SMAは加工が難しい材料として知られていますが、複数のメーカーとの共同研究によって、細くても大きな拡張力を発揮できるSMAステントを開発するために、加工の方法などを工夫しながらチャレンジを続けています。

実物のステントを模擬したモデルを使ってシミュレーションをしている様子
実物のステントを模擬したモデルを使ってシミュレーションをしている様子
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私は幼い頃から動くものに興味があり、特に自動車は見るのも乗るのも大好きで、車種名を覚えて遊んだりしたほどでした。漠然と自動車に関わる仕事に就きたいと考えていたところ、大学4年生の卒業研究でSMAに出会いました。

当時はSMAについてわかっていなかったことも多く、研究をすればするほど新しい発見があり、「なぜ?なぜ?」を繰り返すうちにどんどん考察が深まっていく感覚を人生で初めて経験しました。間違いなくこの経験が現在の研究活動に生かされています。

研究で作製したステントを電子顕微鏡で観察している様子
研究で作製したステントを電子顕微鏡で観察している様子
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「高強度超弾性ステントの開発」

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もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 自動車・機器

(2) 医療機器

(3) 一般機械・機器、産業機械(工作機械・建設機械等)等

◆主な職種

(1) 設計・開発

(2) 生産技術(プラント系以外)

(3) 品質管理・評価

◆学んだことはどう生きる?

地域柄、自動車産業で活躍する卒業生が多くいます。その一方で、機能材料研究室の卒業生で近年希望者が増えている業種が医療です。SMAは医療分野で利用されることが多いということもあり、研究を通して医療業界に興味を持つ人が増えています。何人もの卒業生が、研究で得た知識を生かして医療機器や手術器具のメーカーで設計や製造技術のエンジニアとして活躍しています。

どんな業種・職種に就いたとしても「他の人にわかりやすく伝える」スキルはビジネスパーソンとして必須です。機能材料研究室では、プレゼンテーションや報告書などでわかりやすく伝えるスキルを養う機会を多く採り入れており、卒業生から「この経験が入社後に役立った」と言ってもらえることもあります。

先生の学部・学科は?

私が所属する機械学科では自動車部品(エンジンなど)の分解・組み立ての演習など、実機に触れ、手を動かして機械工学を学ぶことができる点が大きな特徴です。また、授業や研究はもちろん課外活動でも使える大きな工場を構えており、利用できる工作機械もこの地区で随一のラインナップを誇っています。

自動車産業や航空機産業が盛んな地域にあり、私も含めてメーカーから赴任されてきた先生も多くいますので、地場産業と連携した実践的な教育・研究を行っている点もポイントです。卒業後、エンジニアとして即戦力になりたい!という方はぜひ志望校の一つに加えてください。お待ちしています。

セルビアから招へいした研究者と研究ディスカッションをしている様子
セルビアから招へいした研究者と研究ディスカッションをしている様子
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

下町ロケット

池井戸潤 (小学館文庫)

中小企業の社長が様々な技術的・経営的困難を前に奮闘する様子を中心に、物語がわかりやすく描かれています。これを読むときっとみなさんもエンジニアになってみたくなるのではないでしょうか。私自身、ものづくりにかける技術者の思いに大変共感しました。


アイアンマン

監督:ジョン・ファヴロー

一人の天才技術者が、限られた設備と時間でとんでもなく強力なスーツをつくるところから始まるSF作品です。近未来はきっとこんな技術が本当に実現するかも?と思わせてくれますし、アイアンマンが単純にカッコいいので、観たことがない人はぜひ一度観てみてください。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

医学ですね。機械工学をもっと医療に生かしたいです。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

スイスかオーストリアです。きれいな山を見ながら過ごしたいので。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

家族と過ごす時間です。


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