◆どのような研究をされていますか
液晶は、特異な性質を持ったユニークな物質です。物質は気体、液体、固体の状態がありますが、液晶は3つの状態と異なり、液体と結晶の中間状態です。結晶のように分子の向きが決まっているにもかかわらず、分子は自由に動けます。その特徴を利用したものが、液晶テレビです。私はこの2つの異なる性質を併せ持つ液晶分子について研究してきました。
液晶分子は、自己組織化といって、分子が勝手に集まり液晶状態を作り出します。この性質を活かした様々な機能を実現するために液晶材料の性質を調べ、ミクロの世界で分子の働き・ふるまいを自在に制御できる「液晶マイクロカプセル」を開発してきました。超微細サイズのシステムを動かすナノマイクロシステムの学問分野を切り拓く液晶研究といえます。
◆どんな成果が上がりましたか
私は学生時代から今日まで液晶の分子設計ひと筋、10年以上取り組む液晶のエキスパートです。一般的に物質の状態は、多くの分子が集合した時に現れます。この度の液晶流体マイクロカプセルの研究で着目したのは、どの程度の量の分子が集まると、液晶としての性質が現れてくるのか?という点でした。
普通は、分子の数がある程度少なくなると、液晶の性質が弱くなります。しかしこの研究の結果、液晶の性質が強まる場合もあることを初めて発見しました。このような液晶の分子制御の研究を応用し、液晶分子の集まった微小界面を制御することで、望みの微細構造を作製し、新たな液晶の分子材料を作り出せます。
◆その研究が進むと何が良いでしょうか
例えば、液晶は金属を含まないため、普段は磁石の働きをしません。ところが液晶に光を当てると、液晶相が液体状態になる融点で、磁性が強くなることを最初に発見しました。この発見により、光によって電気・磁気のオン・オフが可能な分子スイッチになるのではと期待されています。
このように今日まで、液晶の応用面につながる数多くの世界的な発見を果たしてきました。様々な液晶のユニークな性質を発見しては、これを利用した新規の液晶デバイス制作を続けています。
物質の機能の基本は「何かの刺激に応答して、物質が変化する」ことにあります。刺激に応答しやすい方が、使うエネルギーは少なくて済みます。また、分子が勝手に並ぶ性質を使えば、人間が無理やり並べるよりも、使うエネルギーは少なくて済みます。液晶は、結晶よりも刺激に応答しやすく、液体と違い勝手に並ぶので、あらゆる用途で使用するエネルギーを劇的に減らせると考え、分子レベルで制御するための基礎研究を行っています。
大学入学当時の私は、化学が得意で、数学が好きで、心理学に興味がある学生でした。高校時代の恩師である数学の先生に相談した際、数学を活かした化学を選ぶ方が強みを活かせるのではないかと言われ、納得し化学を選びました。
実際、数学を活用した研究も進めています。特に、分子同士の相互作用に興味を持っていますが、これは人間同士の相互作用を考える心理学と共通しています。専門選びは直感でしたが、後から考えると必然と言えそうです。
研究者を志したのは、研究室に配属されてからのことでした。基礎研究の興奮を知った後に就活の季節が来たわけですが、もはや企業への就職には興味が持てなくなっていました。
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主に実験研究を行います。新しい機能性の材料を創り出すために不可欠な、材料の構造と機能の相関について研究しています。テーマは従来の化学や物理学の枠からははみ出ているため、本や論文などを読んで勉強すること以上に、実験対象に教えてもらう姿勢が重要になります。
◆主な業種
化学・化粧品・繊維/化学工業製品・衣料・石油製品(プラントは除く)
◆主な職種
・基礎・応用研究、先行開発
・設計・開発
・生産技術
・製造・施工
・生産管理・施工管理
・品質管理・評価
◆学んだことはどう生きる?
学生時代の研究分野そのものを活かしているという話は、あまり聞きません。また、卒業生に具体的な業務内容を聞くこともありません。学生時代に学んだ課題解決の方法が役立てば、大学院で学んだ意味があるのだと思います。
境界領域の研究では、試験でいい成績を取れるかということよりも、自分はどのようなことが好きか、どのようなことが嫌いか、どのような嗜好・思考傾向があるのか…それらを知ることが、非常に重要となります。
受験勉強をしていると忘れてしまいがちですが、何をしている時に自分が楽しいと感じるのか、よく意識して過ごしてもらえれば、自ずと独自性の高い、世界に注目される研究ができるようになると思います。
液晶ディスプレイは液晶と光の相互作用を電圧によって制御しています。それは分子の動きを見ているとも言えます。液晶ディスプレイにも使われる偏光板を使って、さまざまな分子の動きを観察してみましょう。例えば、石鹸水や食べられる食品添加剤などにも水溶液が液晶となるものがあります。
液晶の歴史
D・ダンマー、T・スラッキン 鳥山和久:訳 (朝日選書)
液晶がどのように発見され、どのように研究されてきたかが、研究者達の人生と絡めて書かれている。メインの研究は、液晶から液晶ディスプレイへの応用と思われがちである。しかし実際は、発見から数十年もの間、そのような応用は予想もされていなかったのだ。
また現在でも、ディスプレイ以外への応用研究・基礎研究が盛んであることを、本書から伺える。このような基礎から応用への流れは、あらゆる学問分野に通じるものだ。文字数が多く、最後まで読むのは少し難しいかも知れないが、こういう本が読めるようになってから大学に入ると、大学生活を幸せに送れるだろう。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? もう一度、化学と心理学 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 米国。服のサイズが合うので |
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Q3.一番聴いている音楽アーティストは? ケツメイシ |