水を浄化しながら希少金属も得られる!2つの価値を持つ材料を追求
深刻な水問題と貧困の解決へ
私たちの研究は、規則的な構造を持つイオン交換体やナノシート積層膜を用いて「なぜあるイオンは選択的に吸着されるのか」という謎を解き明かすことを目指しています。無機結晶材料の層間でのイオン配置や相互作用を理解し、水の浄化や資源の回収に役立つ新しい材料を開発することが目的です。
この研究の背景には、アフリカ諸国をはじめとする様々な地域での深刻な水問題があります。安全な飲料水を確保するために有害金属カチオンやアニオンの除去は喫緊の課題であり、同時に資源の乏しい国々では水からの希少金属回収が将来の産業基盤にもつながります。水をきれいにしながら資源も得られる、そんな二重の価値を持つ材料を追求することこそが、私たちの研究の核心です。
イオン選択性を高め、ナノシート膜の性能を高める
研究の中では、予想外の現象にも遭遇します。例えば、イオンの大きさ等の熱力学的安定性で考えれば選択的に吸着されることが予想されるのですが、実際には複数のイオンが吸着しイオン選択性が低くなることなどが挙げられます。この矛盾を解くために理論計算と実験を組み合わせ、層間水分子やゲストイオンとホストとの相互作用を正しく評価しようと日夜邁進しています。
一方で、ナノシート膜の積層が均一に進まず性能にばらつきが生じたり、複数のイオンが共存する環境で選択性が低下するなどの課題もありました。そこで、層間に有機分子を導入して選択性を高めたり、膜の構造を精密に制御して透過性と安定性を両立させる工夫を重ねています。
下:無機イオン交換体が選択的にリチウムイオンを吸着する様子を示しています。
私は高校時代から漠然と科学に憧れを抱いていました。東京農工大・東京科学大に進学し、素晴らしい先生方に出会い、固体触媒や材料科学の分野で学びました。ナノの世界で緻密に組み立てることにより反応効率や選択性を劇的にかえることができます。私たちの社会を一変する、まさに「ゲームチェンジ」を引き起こす可能性を秘めた分野だと感じています。新しい材料を通じて、実生活を大きく変えられることに強く魅了され、研究の道を志すようになりました。
◆主な業種
(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(2) セラミクス、ガラス、炭素
(3) プラント
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 生産技術(プラント系)
(3) 品質管理・評価
◆学んだことはどう生きる?
セラミクスや電子部品材料の開発に携わり、大学で培った固体化学や材料科学の知識を活かして新規材料設計に挑んでいます。また、水をきれいにするエンジニアリング分野で分離膜や機能性フィルムの研究開発を担当し、学生時代に学んだイオン輸送や膜材料の知見を応用しています。いずれも在学中の研究経験を基盤に、社会に直結する最先端技術の現場で力を発揮しています。
信州大学の「アクア・リジェレーション機構」や「物質化学科」では、水に関わる研究を幅広く行っています。世界のトップを走る先生方が集まり、きれいな水をつくる技術から、資源を回収する材料開発まで挑戦しています。特に計算科学や情報科学を取り入れて、ナノメートルの世界で水やイオンがどう動くのかを明らかにできるのが大きな強みです。ここに来れば、社会や環境を大きく変える研究に参加できます。
イオンを選択的に分離する固体材料や膜材料について
クラウンエーテルは、環状の分子で酸素の輪が特定のイオンを「抱きかかえる」ように取り込みます。チャールズ・J・ペダーセンはこの分子を発見しノーベル化学賞を受賞しました。イオンの大きさに応じて選択的に吸着でき、水の浄化や金属の回収などに役立ちます。ほかにも、生体模倣の分離膜や無機イオン交換体など広く存在するので、調べてみましょう。
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 数学と物理、プログラミング |
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| Q2.感動した/印象に残っている映画は? 最近では『国宝』 |
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| Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 子育て |
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| Q4.好きな言葉は? 好きなことに本気になる |

