腰やひざの痛みはなぜ起こる?原因になる酵素の制御メカニズムをつきとめ、新たな治療法の確立を目指す
関節の「クッション」を壊す酵素
高齢者のみなさんに今困っていることを聞くと、多くの人が、腰が痛い、ひざが痛いなど、あちらこちらの痛みを訴えると思います。実はこの多くが、変形性関節症という病気なのです。腰や膝の関節には、細胞外マトリックスと呼ばれるタンパク質があり、関節にかかる衝撃を和らげるクッションのような役割を担っています。これを分解する酵素である「マトリックス分解酵素」が細胞外マトリックスを壊してしまうことで、関節に痛みが出るのです。
高齢者が快適に人生を過ごせる社会に
私はマトリックス分解酵素を抑制する方法について研究をしています。変形性膝関節症は、今の医療では治すことが難しい病気です。マトリックス分解酵素を制御する方法を見つけ、変形性関節症の新たな治療法を確立することが出来れば、高齢者が痛みなく快適に過ごせる社会になっていくことができます。高齢者の生活の質が向上し、労働できる高齢者や、積極的に消費活動にいそしむ高齢者が増えると予測されます。
一般的な傾向は?
●主な業種は→病院、大学や製薬企業、研究所、医療検査機器メーカー
●主な職種は→臨床検査技師、研究者やアプリケーションスペシャリスト
●業務の特徴は→医療関係
分野はどう活かされる?
医療検査機器のプロフェッショナルになっている人や研究所で働いている先輩がいます。
保健学科の検査技術科学専攻では、がんや心臓病などさまざまな研究に取り組んでいます。臨床検査技師を目指している卒業研究の4年生や、より幅広い進路を目指して大学院へ進学した学生たちが自分たちのテーマを決めて取り組んでいます。外国人の留学生が多いのも特色で、研究室では色々な国の食べ物や文化を体験することもできます。
先生からのメッセージ
患者さんの数の多さでは、他のどんな病気にも負けません。世の中に、グルコサミンや飲むヒアルロン酸などと謳った食品関係のコマーシャルがたくさんありますが、本当に効いているのかどうかはよくわかりません。
ぜひ、サイエンスの力で新しい治療法を開発してみましょう。研究室に来る時間も各自に任されており、自由に研究を楽しんでいます。私の研究室では、留学を経験する先輩たちもたくさんいて、この分野では世界でトップレベルの研究者と直接交流できるチャンスもあります。研究室のホームページやインスタグラムをみていただけたらと思います。
先生の研究に挑戦しよう!
【テーマ例】
細胞が分泌する小胞を顕微鏡で観察したり、そこに含まれるRNAなどを解析したりしてみよう。
レナードの朝〔新版〕
オリヴァー・サックス 春日井晶子:訳(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
研究のことだけでなく、いろいろなことを学んで広い視野を持ってほしいと思っています。今回紹介するのは、イギリスの神経学者・医師オリバー・サックスが書いた医療ノンフィクションです。
嗜眠(しみん)性脳炎という世界的に大流行した難病に挑む医師・サックスの奮闘と患者の交流を描いています。嗜眠性脳炎は別名、眠り病と言われる原因不明の病ですが、サックスはパーキンソン病向けの新薬を投与し、覚醒させました。しかし病原体の耐性により、やがて効果が薄れていった状況を記しています。この実話は、1990年米国で内容を再構成したフィクションという形で映画化されました。日本での公開タイトルは『レナードの朝』。映画は患者をレナードという男性に絞り、レナードと医師の二人は、患者と医者との関係を超えた友情を育んでいくという展開になっています。

