環境農学(含ランドスケープ科学)

ムクドリ

集団ねぐらで住民を悩ますムクドリ その行動を追跡


橋本啓史先生

名城大学 農学部 生物環境科学科(農学研究科 農学専攻 緑地創造学専修)

出会いの一冊

景観の生態史観 攪乱が再生する豊かな大地

森本幸裕:編(京都通信社)

京都大学名誉教授の森本幸裕先生の退職記念で編まれた高校生以上を対象とした景観生態学入門。教え子や共同研究を行ってきた研究者が、景観生態学や造園学、緑化工学の視点から、国内外の(都市を含む)様々な生態系での生物多様性保全、生態系サービスの評価、自然再生、震災復興について執筆している。

私も3節+αを分担執筆。1つの話題につき2-4ページ程度で、興味のある項目を拾い読みしてもよいだろう。出版からすでに10年以上が経ち、最新とは言い難いが、「ランドスケープ科学」が扱うテーマの幅広さと学際性、魅力、社会課題に応える力を知ることができるだろう。

こんな研究で世界を変えよう!

集団ねぐらで住民を悩ますムクドリ その行動を追跡

集団ねぐらを追い出すのは難しい

黒色の中型の野鳥であるムクドリは、夜を群れで眠る習性を持っています。夕方、駅前で騒ぐ鳥の大群を見聞きしたことのある方も多いのではないでしょうか。ムクドリは特に夏から初冬にかけて大規模な集団ねぐらを形成し、近年は市街地の特に駅前の街路樹等をねぐらにし、騒音や糞で住民は悩まされています。

集団ねぐらを追い払う手法は、光や音を出す機器、猛禽類の模型や剥製、鷹狩用の生きたタカを使用するものなど、様々考案されており、一定の成果を上げていますが、ねぐらが別の場所に移動したり、近隣のねぐらに合流するだけで、移動先でまた軋轢が起きたり、しばらくすると元の場所に戻るなど、根本的な解決策は見つかっていません。

しかし、これほどの数のムクドリが、日中、どこで過ごしているのでしょうか?

GPSロガーをムクドリに装着して追跡

私も行政・マスコミからムクドリのねぐら問題についての相談・取材が度々あり、関心を持ってきました。研究室の学生らと名古屋市内のムクドリ集団ねぐらの位置情報を集め、また先行研究を見る中で、行動圏に関する研究が十分に行われていないことを認識しました。

今回の研究では、近年軽量化され、ようやくムクドリ大の鳥類にも装着できるようになったGPSロガーを、多個体に装着して追跡することを計画しています。

市街地の集団ねぐらと人との軋轢を解消する策にはすぐには結びつかないかもしれませんが、日中の行動圏や利用環境が明らかになり、個体数抑制のための基本情報が得られるはずです。

夕方、市街地の上空を飛んで集団ねぐらに向かうムクドリの群れ
夕方、市街地の上空を飛んで集団ねぐらに向かうムクドリの群れ
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

野鳥観察が趣味となったのは、中学生の時に学校の隣の公園で同級生に鳥を教わってから。初めて探鳥会に行った場所は、開発の危機にある里山です。

そこで鳥も棲みやすい公園づくりに関わりたいと思いましたが、里山は公園化だけでは守れないと知り、大学では農林業も学ばねばと。しかし小学生の頃に住宅地に点在する庭木を巡回する虫を追った経験や、住宅地内に残る林を行き来する鳥を観察するうちに、都市の鳥の研究をしたくなりました。

日中、地面で採食するムクドリの群れ
日中、地面で採食するムクドリの群れ
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「市街地に集団塒を形成するムクドリの行動圏、採餌場所および集団塒間の交流の解明」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 建設全般(土木・建築・都市)

(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) 生産管理・施工管理

(2) 技術系企画・調査、コンサルタント

(3) 保守・メインテナンス・維持管理、運用・システムアドミニストレータ・サービスエンジニア

◆学んだことはどう生きる?

元々は「花卉・造園学」、「ランドスケープ・デザイン学」の研究室で、私も造園に関する講義(ランドスケープ・デザイン学、緑地環境学、緑地植物学)をしており、造園・緑化業界(多くは施工管理だが、設計、植木業、エクステリア用品販売も)や市役所等に就職する卒業生が多いです。

名古屋市役所に「造園職」で入ると、各区の土木事務所に配属されて街路樹管理なども担当することがあり、ムクドリ対策にも実際に携わっているようです。

先生の学部・学科は?

当学科では1年生から野外実習が多く、動植物や土壌、公園・庭園に関して現地で学ぶ機会があります。室内で地理情報システム(GIS)ソフトの演習も行っています。化学分野の実験・演習、必修講義も多くあります。

動物に興味のある学生が多く入学し、「野生動物生態研究会」という学生サークルに大勢加入し、野外調査や標本作成を学生だけでも活発に行っている他、なごや生物多様性センターや日本野鳥の会愛知県支部等の調査にも参加しています。

先生の研究に挑戦しよう!

市街地で小鳥やチョウが大通りを横断する際、どのような場所で渡るのか観察してみましょう。道幅は何mか、出発地と到着地の特徴(植物の有無や樹木の種類・高さ、出発地に至るまでの緑の連続性など)、中央分離帯に植栽があればその特徴を記録してみてください。

それらの特徴は、鳥やチョウの種類、季節によって異なるでしょうか?このような情報は、生きものが移動しやすい都市の緑のネットワーク計画を立てる際に役立ちます。

中高生におすすめ

生き物の「居場所」はどう決まるか 攻める、逃げる、生き残るためのすごい知恵

大崎直太(中公新書)

ニッチ、天敵不在空間、そして繁殖干渉で生き物の分布が決まるという話で、生態学の歴史もよくわかる。


都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰

唐沢孝一(中公新書)

都会にも意外にも多様な野鳥が棲んでいて(時代による変化もあって)、身近なところにも研究テーマがいろいろあることがわかる。この分野では、双眼鏡と筆記具(現代はパソコンも)だけで、アマチュア研究者として、楽しみながら研究を続けている人も多い。


僕には鳥の言葉がわかる

鈴木俊貴(小学館)

鳥(シジュウカラ)の言葉(文法もある!)自体も興味深いが、動物にも言語があるということを、工夫された実験によって証明した研究プロセスから学ぶものが多い。フィールド研究で博士号を取得する大変さも知ることができるだろう。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

イギリス。都市鳥と人との距離が近い!また、小中学生の頃は「シャーロック・ホームズ」シリーズの愛読者(TVドラマも)だったため。

Q2.感動した/印象に残っている映画は?

南極物語、もののけ姫、WATARIDORI(Le Peuple Migrateur)、鳥の道を越えて

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

GISソフトを使った紙媒体の植生図のデジタルデータ化

Q4.好きな言葉は?

「すべてのものは、そこにあるべくしてある。」(中学の地理の先生のそのまた恩師の教えだそうだが、生物の分布にも通じると思って鳥の分布予測モデルを研究している)