東京大学のアルバート・アイラー 東大ジャズ講義録・歴史編
菊地成孔、大谷能生(メディア総合研究所)
実は即興とは何かを最新の視点から広く俯瞰するような日本語の本はまだほとんどありません。まずは、即興というものがどういうものか体験するために、CDや配信でも構わないのでジャズを聴いてみて欲しいと思います。
本書は、一流ジャズミュージシャンが東京大学でジャズとは何か、音楽理論とは何かを極めて明快に説明した講義録です。即興が実は高度な知識や熟練した技術によって可能となっていること、リアルタイムの演奏でジャズミュージシャンが何を行っているのか、そしてこのような音楽がアメリカという国で生まれた背景を理解することで、ジャズの聴こえ方が変わってくるはずです。
人や社会を動かす「即興」の力をジャズや文学から考える
次に何が起こるかわからない「即興」の力
私の研究テーマは「即興(インプロヴィゼーション)」です。即興と聞くと、ジャズのアドリブやヒップホップのフリースタイル、舞台のアドリブ劇を思い浮かべるかもしれません。次に何が起こるかわからない即興は、私たちをワクワクさせるだけでなく、実は私たちの生き方を変えたり、社会を動かす力にもなりうる――そのことを文学・音楽・演劇・アートなどをつなぎながら考えています(こうした学問を批判的即興研究と言います)。
ジャズは「民主主義のモデル」
特に着目しているのが、アメリカの思想家や芸術家の多くが、アメリカという国家それ自体を「まだ完成していないもの」として即興的にイメージしてきた点です。それは民主主義という彼の国の基本理念にも関わる問題です。なぜなら、民主主義とはさまざまに異なる他者と共に、未知なるゴールを目指して即興的に社会のあり方を変化させてゆくことだからです。
例えばアフリカ系の文化が西欧の音楽と出会い20世紀初頭のアメリカに誕生したジャズは、お互いのアイデアを交換しながら一つの曲を演奏するそのスタイルから、「民主主義のモデル」と理解されるようになりました。この新しい芸術体験に触発された作家や思想家たちは、現実の人種や社会のあり方を問い直し、公民権運動などの変革へとつながる「別の(=オルタナティブな)世界」を想像し、それこそが真のアメリカの姿であると提示しました。
こうした事例を通して、「人や社会を変える方法」としての即興において「何が起きているのか」を言葉にしていくことを目指しています。
「Still in the Making: The Culture of Improvisation in American Modernism」
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 文化人類学か民俗学かもしれません。理由は散歩と人間観察が大好きだからです。 |
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| Q2.感動した/印象に残っている映画は? ジョン・カサヴェテスの全作品。 |
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| Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 中1でやったゼノギアス。 |
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| Q4.大学時代の部活・サークルは? ジャズ研に入り浸っていました。 |

