国際社会では「条約」という国際法が、一定のルールを形成しています。しかし国内社会とは違って、国際社会はルールを破った者に対する制裁が十分に機能せず、必ずしも法秩序によって安定的に社会が運営されているわけではありません。武装集団や一部の国家による「力の支配」が横行することもあり、国際法の力には限界があります。
しかし、個々人の人権を国際的な水準で保障するルールや、地球環境の保護のための国際的なルール、貿易を円滑に行うルールを設定したり、それらの活動を助ける国際機構を設立したりすることによって、国際法は社会の様々な局面で重要な役割を果たし、各国の国内法にも影響を与えて「法の支配」の実現に寄与しています。
国際法による武力行使のコントロール~国連の平和維持機能を法的観点から研究
私は戦争と平和や安全保障の分野を中心に研究しています。一昔前の戦争では使用が許されていた兵器が、今日では人道的な観点から国際法で禁止される場面もしばしば見られます。国連のような国際機構が創られてからは、国が集まり議論を重ねて、国際社会の平和と安全を維持するため、統制のとれた武力行使のあり方や、平和を維持するためにどのように軍事力を用いれば武力紛争を抑えることができるかが議論されるようになってきました。
もちろん、現実にはたくさんの武力紛争によって多数の一般市民が犠牲になっています。しかし国際法の役割は、そうした犠牲者を少しでも減らし、適正に軍事力を用いて平和を維持する仕組みを構築しようとするところにあり、私の研究も、そうした理想の実現に向けて貢献しようとするものです。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→公務員、民間企業
分野はどう活かされる?
本学法学部の学生の進路傾向としては、公務員、民間企業、大学院進学に分けられます。私のゼミでは「国際法・国際機構研究」をテーマに掲げており、他の法学・政治学のゼミと比べて、民間企業志望者は少なめです。私が安全保障分野を研究していることもあり、防衛省職員や幹部自衛官として就職する者もいました。
多くは国や地方の公務員になり、必ずしも国際法や国際機構の知識を直接活かせる職種に就くわけではありませんが、グローバル化が進展する中で、どのような職種においても本ゼミで学んだ国際的な視野で物事を考えることは求められますので、就職後、学生時代に学んだことは活かせるでしょう。
また、法科大学院へ進学して法曹を志す者や、さらに学びを深めて研究するために、研究大学院に進学する者もいます。
高校生のうちは、例えば新聞やインターネットのニュースの国際面に目を通して、疑問に思ったことをその都度調べるだけでも、たくさんの知識が身につきます。世界史の科目では、歴史的事象を受験のためにただ記憶するだけではなくて、大きな世界の流れを掴み、個々の事象がどのような背景から生じて、それが後の世にどういった影響を与えたのかという点を意識して学んでいくと、大学入学後に国際法や国際政治を勉強する際に役立ちますし、基本的な知識や教養の基盤を形成することができます。
本学法学部では、国際法の講義が開講されており、国際法の全分野を一通り学習できるようになっています。3-4年次の専門演習では、「国際法・国際機構研究」をテーマに掲げ、国際法と国際機構の両方を扱って学生の幅広い関心に応えています。国際法は法学分野に位置づけられますが、国際政治の動向にも大きな影響を受けるので、授業では政治学や政策的な視点も踏まえて解説しています。また1年次と2年次の演習では、毎年テーマを変えて様々な教員が少人数教育を通じて手厚い指導を実施しています。