もし、どこか遠い無人島にたった一人で置き去りにされたら、危険な海を渡る船を作り航海術を駆使して戻ってこられますか。私は、様々なモノや技術を生み出してきた先人たちの「知恵」を研究するだけでなく、現代においてそれを活用しながら後世に残していくための取り組みを行なっています。
例えば、オセアニアなど太平洋に暮す先住民たちのカヌー制作技術や、伝統的な航海術の復興運動の研究に携わり、先住民のアイデンティティや文化・技術を後世に伝えようと試みています。実際に、グアムでの芸術祭で、カヌーサミットの議長と務めたこともあります。
ポリネシアの先住民たちの星座にまつわる神話を紹介
最近では、天候や季節の変化を読む、航海術のための伝統的な天文学の研究を行い、当時の人々が生きていくために必要だった「知」を今日の生活で活用する目的でプラネタリウムを製作し、ポリネシアの先住民たちが大事にしてきた星座にまつわる神話を市民に紹介する取り組みも行なっています。世界の先住民といわれる人々のアイデンティティや文化復興を研究するだけではなく、文化人類学者も積極的にテーマに関わっていく姿勢を大事にしています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→教育、旅行・観光業、銀行、NGOなど
分野はどう活かされる?
NGOで活躍し、異文化理解やフェアトレード、防災などに関わっている大学院の卒業生がいます。
私のゼミでは毎年「星空人類学」といって、エアドーム型のプラネタリウムを借用し、ゼミ全員で文化イベントを企画して実行します。プラネタリウムでは学生が星座の解説をしますが、通常のようにギリシャの星座ではなく、エスキモー、アイヌ、ポリネシア、インカあるいはアボリジニがどのように生活に星座を使い、背景に物語を語っていたかを紹介します。これにあわせて古代遺跡の展示、あるいは星に関するグッズを作るワークショップを行います。スタッフのTシャツやポスターも毎年学生有志がデザインします。
これに先立ち、博物館とプラネタリウムが融合した、沖縄海洋博公園の海洋文化館の見学沖縄ゼミツアーを毎年行っています。2013年にリニューアルオープンした海洋文化館は後藤が総合監修をしています。このもようは、今年度の大学HPの人類文化学科のカバー写真に採用されています。