「日本文化とは何か」と考えても、簡単に答えは出ません。自分の背中を見るためには鏡が必要なように、鏡となる異文化理解を通して自分の国の文化を理解することができます。私は、ふつうに生活するふつうの人々=「常民」の暮らしや文化を研究してきました。特に最近力を入れているのは、ブラジルに渡った日系移民たちに日本文化がどのような影響を与えたのかを明らかにする研究です。
民具から宗教まで、常民の日常生活を知る
現地調査を行い、使われていた「民具」(生活の道具)や残されている史料を調べたり、移住した人々からの聞き取り調査を行なったりしています。比較民俗研究会を主宰し『比較民俗研究』という機関紙を発行してから約30年間、言葉の壁がない「民具」から、祖先崇拝や、祈祷師を軸とするシャーマニズムといった民俗信仰、仏教の受容と土着の問題に至るまで、幅広いテーマを追求しています。それぞれの国、地域の常民の日常生活を知ることが、遠回りのようでも、人類の最大の不幸である戦争を抑止することにもつながると考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→大学、研究所、博物館、地方公務員
- ●主な職種は→大学教師、研究所研究員、博物館学芸員
- ●業務の特徴は→調査・研究、地域振興策の企画・実行
分野はどう活かされる?
・博物館における学芸分野(とくに歴史・民俗方面)に従事・市・町・村史の編さん・大学教員(民俗学、歴史学、文化人類学方面)としての教育・研究・研究所の研究員として民俗方面の調査研究
小学校から大学まで学ぶ知は、合理的な科学「知識」です。一方、かつての民俗社会(ムラ)での知は生活体験から身につけた「知恵」です。どちらの知が優れているかではなくそのバランスが大事です。「知識」は実際の経験を通して、生きる力、生活の「知恵」になるともいえます。本を通してだけではなく、五感を総動員しての学び、旅の効用を民俗学の大成者、柳田国男は説いています。大学入学後、皆さんは、人に成る「成人」になります。無理じいという勉強ではなく、大学は自発的に学べる場と時間です。社会人として活躍する道をこの機に見つけてください。
大学院は、普通の人々のくらし、常民文化を研究する日本常民文化研究所を母胎にした研究科で、文字資料と非文字資料をともに扱う歴史民俗資料学が学べる国内唯一の研究科です。近年は文科省から国際常民文化研究機構の拠点に認定され、多くの留学生も学んでいます。特に、海洋民俗研究、民具研究の調査研究、教育に力を注いでいます。