近代以降の日本では、都市への人口集中が継続し、都市は空間的な拡大を遂げました。都市に着目すると、1990年代までは人口は郊外に分散していきましたが(ドーナツ化現象)、2000年代に入ると人口の都心回帰が顕著になり、タワーマンションが林立するようになりました。都市の人口分布は、分散傾向から集中傾向へと転換したのです。その結果、郊外住宅地では、高齢化が進展し、空き家が目立ち始めました。
一方、近年では、都市から農山村への移住が活性化しつつあり、テレビ番組で農山村の生活を取り上げることが増えました。過疎化が進展した農山村が、新たな価値を生み出す場として注目され始めています。
私の研究は、以上のような社会の変化を「人口」をカギとして読み解いていこうというものです。
人口から都市・地域の形成の歴史をみる
人口は地域の実態を示す指標の一つであり、それに基づき地域の施策が立てられています。過疎過密や地方創生など地域の諸問題の解決に向けた基礎的条件を検討するときに役立っています。また、人口を出発点として、都市や地域の形成史についても研究を進めています。この観点は、歴史を踏まえたまちづくりや、地域振興に役立つものと考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→教育、公務員、運輸・通信業
- ●主な職種は→教員、塾講師、営業
- ●業務の特徴は→人にものを教える・伝える、地域の現状を踏まえたサービスの提供
分野はどう活かされる?
・学校の教員
・旅客輸送に関わる業務では、人口分布や地域間の結びつきの強さが需要予測に欠かせないようです。
・地域的課題を見つける仕事では、資料分析や統計分析、聞き取り調査の結果などを総合する力が問われるようです。
地表面で生成する様々な現象を空間の視点で読み解いていくのが地理学です。対象とする空間にどのような特徴があるのか、それはどのように変化するのか、そこでどのような問題が生じているのか、そこはグローバルな世界とどのようにつながっているのか、その空間と人々の営みはどのように関係するのかなど、空間に関わる新たな知識を学び、生み出すことが、大学で地理学を学ぶことの醍醐味です。「地面の上」で生じている現象なら何でも地理学の対象です。あなたも地理学を学んでみませんか?
教育学部地理学教室には、地理学史・社会地理学を専門とする教員と人口地理学・都市地理学を専門とする教員が在籍しています。スタッフは少ないですが、対象地域は農村から大都市までカバーし、研究手法も地理学という学問の歴史的検討から現代社会に関する統計を用いた分析までカバーしていて、バランスが取れています。
教育学部のため、教員になるための濃密なカリキュラムが組まれている中、地理学の専門課程では、学生の自主性を重視した指導を行っています。教員1名あたりの学生数は1ケタであり、きめの細かい指導が可能です。
また、和歌山大学には、観光学部や経済学部、システム工学部に地理学を専門とするスタッフが在籍しているため、学部の違いによる単位の制約はあるものの、地理学を幅広く学ぶことができます。