車も測れる超大型CTスキャンでも、部品の高精度3次元データを
製造業のものづくりに役立つ「形状モデリング」
形は、皆さんの身の回りのあらゆるところにありますね。私の研究テーマ「形状モデリング」は、特定の分野にだけ資するものではありませんが、特に製造業では製品の形に対して非常にシビアな条件が求められており、今ある方法ではうまくいかないことが多いです。そこで、時には企業の方たちとも協力しながら、ものづくりに役立つ方法を考えています。
テラバイトデータを扱う処理が必要
物の形をコンピュータに取り込む技術として、X線を使って物の内部の情報を得るCTスキャンが注目されています。製品を構成する部品ごとに3次元の形をデータ化するのが目的です。
ところが実際には、金属がうまく測れない・同じ素材の部品の境目が分かりにくい・もっと高精度にしてほしいなど、ものづくりに使うにはたくさん課題があることがわかりました。
最近は、車も測れるほどの超大型CT装置が開発されつつあります(一般的な装置のサイズは黒板位で、測れるのは直径20~30cmまで)。超大型装置では、数テラバイト(数千GB)ものデータができるので、上記の課題に加え、大きなデータを扱うための特別な処理が必要です。
数時間でできるアルゴリズムを考案
CTを使ってもっといいものを作りたい! という要望に応えたくて、半自動で部品の形を精度よく出せるアルゴリズムを考えました。今まで2週間かかっていたことが数時間でできるようになりました。
機械学習などのソフトウェア技術が話題ですが、技術の目的は人を駆逐することでなく、人がそれらを活用してよい社会をつくることです。形の処理技術の研究を通じて、誰もが豊かで暮らしやすい未来を拓いていきたいです。
最初から工学を志したわけではなく、結果的に工学者となりました。こだわりを持たず柔軟に進んだのが良かったです。
医学部希望でしたが入試でふるわず、見学会が好印象だった情報科学科を選びました。苦手だった数学、やってみたらもっと苦手なプログラミングが主な内容でしたが、先生方に恵まれ数学が好きになりました。
友人と受験した他大の大学院は情報理工学系。博士課程は、修士課程の先生のご紹介で工学系に進みました。そこで企業の方たちの熱い思いに触れ、ぜひ役に立ちたいと思いました。この面白さは高校の時は知らなかったことです。
「大型アセンブリ品の大規模X線CTデータからの高精度部品抽出」
「設計工学・機械機能要素・トライボロジー」が 学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)
その領域カテゴリーはこちら↓
「14.ロボット・自動車・機械」の「56.機械工学(設計、エンジン、材料、流体等)」
◆主な業種
(1) 自動車・機器
(2) 精密機械・機器(医療機器・光学機器を除く)
(3) ソフトウエア、情報システム開発
◆主な職種
(1) 設計・開発
(2) システムエンジニア
(3) 生産技術(プラント系以外)
◆学んだことはどう生きる?
(東京都立大学の)研究室でX線CTスキャンを学ぶうちに興味がわき、CTを活かした自動車の設計製造をしている卒業生がいます。自動車業界は昔から最先端の技術を取り入れており、CTの利用にも積極的です。最近は電気自動車への移行もあり、切らずに内部を調べられるCTが様々な場面で取り入れられています。
この方は、大学で熱心に学んだCTの知識を活かして、世界的な自動車会社で最先端のCT技術を駆使し、毎日楽しく働いているそうです。
(2023年度まで所属していた)東京都立大学機械システム工学科は、ロボットから生体まで「機械システム」という観点で幅広く研究対象としています。恐らく誰でも、興味あるテーマに出会えるのではないでしょうか。在学生は、自分の研究に主体的に取り組む=責任をもつ姿勢にも優れ、早くから国際学会で発表する人も多いです。
また、学生同士とても仲が良いです。私は国内外の大学におりましたが、どこよりも人間関係が良いと感じます。研究室でも勉強や研究の協力体制が自然と整っています。
形のデータは皆さんの身近なものでも作れます。そう、スマートフォンです(※機種によります)! カメラで3Dスキャンできるアプリがあるので、使いやすいものを選んでください。
データはそのままではボロボロですが、obj や ply といった形式に変換すると、MeshLab というソフトで不要な部分を消したり穴を埋めたりできます(YouTubeに詳細が載っています。Vertices removal, surface reconstruction)。穴が埋まれば、3Dプリントもできますよ。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 芸術でしょうか。苦手分野に進んでしまったので、適性を活かす道を選んでみたいです。美術品の修復士として世界中を回りたいですね。 |
|
Q2.一番聴いている音楽アーティストは? Sigur Rósの『Hoppípolla』という曲が好きです。気分転換には低音の効いた洋楽を聞くことが多いです。 |
|
Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 15並べは小さいころから得意でした。最近はブロックの色を合わせて消していくスマホゲームにはまり、一時期、プロになれるのではと思うくらいできて怖くなり止めました。(余談ですが、この手のゲームは大学で習う数学「群論」を使うと仕組みが解明できます) |
|
Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? バイオリン。一生続けられる趣味というだけでなく、教わる側の気持ちを忘れない役にも立っています。 |