外国語教育

外国語学習者はどのように言語を習得するのか~第二言語習得研究


吉冨朝子 先生

東京外国語大学 総合国際学研究院

どんなことを研究していますか?

第二言語とは第一言語以外に学習する言語のことで、私は第二言語習得、つまり人が外国語をどのように習得するのかについて研究を行っています。第二言語習得には、学習者の「年齢」「言語適性」「学習動機づけ」「認知スタイル」「性格」といった様々な要因が影響を及ぼします。こうした要因について調査したり、学習者の外国語能力がどのように発達するのか、その過程を調査したりしています。

言語学習過程をよりよく知ることができれば、効果的な指導法、教材開発などに活かすことができます。また帰国子女などの外国語能力が失われていく外国語喪失過程や、外国語能力を維持するための保持教育・再学習過程にも興味があります。

英語のスピーキング・タスクおよびテストの開発

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最近は、英語のスピーキング・タスクやテストの開発を行っています。スピーキング能力をヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)という、国際的な統一基準を使って評価すること、またスピーキング能力を継続的に評価して、スキルアップのために必要なレベル別のタスクを作成することで、学習活動と能力評価が連環したプログラムができます。

東京外国語大学では入学試験の英語科目で4技能を課すようになりましたが、入学後も定期的に4技能を測定し、伸ばしていくための自律学習支援活動を行っています。

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吉冨先生がセンター長を務めている英語学習支援センターにて。スピーキング・セッションに参加している学生たちの様子。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→教育・学習支援業、出版業、公務員
  • ●主な職種は→教員、編集者、通訳・翻訳、研究職
  • ●業務の特徴は→英語をはじめとする高い語学力を活かす仕事をしていること
分野はどう活かされる?

英語の教員、英語の教員の養成、英語に関わる教材・テスト・辞書等の開発や編集、社内通訳などに従事しています。

先生から、ひとこと

言語はスキルですので、「使ってなんぼ」です。英語にたくさん触れて、下手でも使ってみることで力が伸びます。

先生の学部・学科はどんなとこ

本学では英語教育学や第二言語習得研究を専門とする教員が揃っており、28の専攻言語を含む約80の世界の言語、それらの言語の言語学、文化・地域研究等に関する授業が提供されていますので、多様な言語や文化、またその言語文化の社会・教育・政治・経済・国際関係・歴史・宗教・芸術等について学ぶことができます。

英語教育学のほかに、日本語教育学・通訳翻訳研究・多言語多文化共生社会論・コミュニケーション論といった言語研究の応用分野を幅広く勉強することもできます。

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普段授業で使っている教科書

先生の研究に挑戦しよう

自律的な言語学習者になるには何をすればいいかを把握するために、自分で自分の言語学習を記録に残してみましょう。これにより、自分の学習目的を可視化し、学習法・学習成果を意識的に振り返ることができ、自らの改善点を発見したり、具体的な学習計画を立てられたりできるようになります。

このような「学習ポートフォリオ」の作成は、外国語学習者としての自分を自己評価し、学習行動をより良くすることにつながるだけでなく、第二言語習得研究や外国語教育学に携わるのに大事な姿勢を身につける上でも役に立ちます。

興味がわいたら~先生おすすめ本

外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

白井恭弘

外国語学習を科学的に見るとどういうことが言えるかを、平易な文章でまとめた入門書。第二言語習得論を踏まえることで、外国語学習過程の様々な現象がどのように説明できるか、自分の英語学習経験と照らし合わせて読んでほしい。学習法の改善につながるヒントやアドバイスなどもたくさん書いてある。 (岩波新書)


第2言語習得と母語習得から「言葉の学び」を考える より良い英語学習と英語教育へのヒント

和泉伸一

第二言語習得と母語習得の類似点や相違点を見ていくことで、日本における英語教育にとって最適なアプローチは何かを探っている。言語習得のプロセスや理論を体系的にわかりやすく解説しており、指導・学習の質向上に役立つヒントが書かれている。 (アルク)


コミュニカティブな英語教育を考える 日本の教育現場に役立つ理論と実践

上智大学CLTプロジェクト:編

英語教育学、第二言語習得研究に関わる研究者たちが、様々な視点から日本における外国語教育を見直し、コミュニケーション能力の育成を目指した英語教育について、指導改善に役立つ理論や実践例を提示している。 (アルク)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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