外国語教育

多言語・多文化社会日本、外国人住民にはどのような言語支援が求められるか


斎藤早苗 先生

東海大学 文学部 英語文化コミュニケーション学科/文学研究科 英文学専攻

どんなことを研究していますか?

近年、外国籍の人々が増えているだけでなく、定住化も進んでいます。このような増加傾向は欧米先進国の例を見ると、今後も続くと思われます。50年後の日本は今よりさらに多様な言語や文化で織りなす多言語・多文化社会になっていると予想します。

母語を保持することは基本的な権利

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外国人の居住者が集住する地方都市の自治体の外国人居住者に対する言語支援に関する実態調査を行ない、日常生活や学校教育で抱える問題点を整理しています。自治体が情報を発信する際に昨今、注目されている「やさしい日本語」による言い換えや「平易な英語」の使用はどの程度有効か、また、言語や教育の面からどのような支援ができるかについての提言につながる調査を行っています。

この研究を続けていく中で、言語支援問題が複雑に絡み合っていることもあり、単独の問題を扱うだけでは解明は難しいです。結果、今では、さらに複眼的な見方を持って、言語教育の側面から外国籍児童生徒への母語保持教育、さらに、子どもたちが母語によって教育を受け、文化的営みを続けていけるような環境の整備など今後の多言語社会に生じる課題の探求を続けています。

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英語の教員を目指す、ゼミのゆかいな仲間たち。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→教育・学習支援業、公務
  • ●主な職種は→英語の教員、公務員
  • ●業務の特徴は→ホテルや空港での接客や、英語の教員として中高で教育に携わる仕事
分野はどう活かされる?

卒業生の大部分は小学校、中学、あるいは高校の教育現場で英語の教員として活躍しています。英語教育学ゼミで学んだ諸事、あるいは、自身の経験(海外留学や介護体験、中学や高校での学習支援など)を活かし、日々奮闘しています。また、課外活動であるサッカー、バスケットボール、さらにテニスなどのクラブ活動にも携わっていた人は、クラブの顧問として培ってきた力を発揮し、指導に励み、生徒たちと共に目標に向かって励んでます。

先生から、ひとこと

これから大学で学び、社会へ羽ばたいていくみなさんへのメッセージとして二つあります。一つは、「学び続ける」です。世界の社会や産業の急速な変化にともなって、人口問題、災害、感染など様々な課題が地球規模で多くなっています。だからこそ「学び続ける」精神を確固としていく教育は大切です。自らの思考、創造、そして行動する力を伸ばしていくことの大切さを共に考えていく中で、一つでも夢中になれるものを掴んで、生涯学び続けてください。

もう一つは、「強くて心優しい心」です。複雑に絡み合っている難題にあう時代にあってこそ、多様な人が集まり、協働できる人が育つより健全な社会にするために、従来の教育を振り返り、世界中の物事や人々と影響しあい、多様な相互作用を通して情報を得て、物事の理解を深めていってください。つまるところ、多様な言語文化的背景を持つ人々への思いやり、それでいて、何事にもひるむことのない強い心を持つ人として活躍していくことを信じてやみません。

先生の学部・学科はどんなとこ

全学部における理系・文系を超えた総合力の育成をねらいとしたカリキュラムは本学の特色の一つです。理系と文系双方に知見を持ち、多様な立場や価値観を持つ人たちと交流し、学びます。

このような基本的理念の基に、文学部では文明系、歴史系、言語・文学系、コミュニケーションの学びを通して人間とは何かを複眼思考を持って学びを深めていきます。そして、文学部に属する英語文化コミュニケーション学科では4つの分野、文学、言語、コミュニケーション分野があります。それぞれの専門分野で培った多面的思考力をはじめ、言語力、実践力、探究心を持って国内外で活躍していくことを願い、教員一同一丸となってサポートしていきます。

加えて、短・中・長期海外留学のプログラムも多様であり、目的に応じて、英語圏だけでなく欧州や東南アジア諸国への留学、スピーチコンテスト、さらにディベートに挑む場を掴めることも特色です。

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イギリスでの語学研修に行ってきました。

先生の研究に挑戦しよう

〈テーマ例〉
・子どもたちの特別支援や高齢者の介護とは
・外国籍の子どもたちがかかえる学習上の問題・学習支援の現状
・外国籍の級友について (インタビューなどの手法を用いても良い)
・地域の言語景観(看板や標識などを写真に撮り、英語を含む多言語による表示はどのようなものがあるか、あるとしたら誰のため、目的、分かりやすさを調べる)

興味がわいたら~先生おすすめ本

外国人と一緒に生きる社会がやってきた! 多言語・多文化・多民族の時代へ

河原俊昭、山本忠行編

クラスに外国籍クラスメートが転校してきたといったエピソードをもとに多言語社会の課題を考えます。「外人」と呼んで仲間はずれにするのか友達になるのかといったことを考える機会を与えてくれます。文化の違いからお弁当を持参しなかったり、母国の国民の休日に休んでしまったり。学校で何が起こっているか、外国籍を持つお父さんやお母さんの悩みや先生たちの悩みなどが本書を通して見えてきます。外国語教育の視点では、例えば「目玉焼き」は英語で”sunny-side up”と言うが、「アメリカ人は太陽を連想しながら目玉焼きを食べるのかな」というように、言葉から考え方や思考も様々であることに気づくような、道標のような本でもあります。 (くろしお出版)


Multicultural Japan 多文化社会日本の道しるべ

Carolyn Wrightほか

英語のテキストですが、多文化・多言語社会へと向かっていく日本の社会の問題、例えばアイヌ語や沖縄語の将来、日本育ちの外国籍クラスメート、日本のインターナショナルスクール、外国人住民が暮らす地域の事情など、多文化社会の諸問題について知り、周りのお友達と一緒に考えます。 (Carolyn Wright、Colin Sloss、木村麻衣子、斎藤早苗、河原俊昭、高垣俊之/南雲堂)


日本語が話せないお友達を迎えて ~国際化する教育現場からのQ&A~

河原俊昭、山本忠行、野山広:編・著

この本が想定している読者は幅広いです。高校生はじめ、大学生、学校の教員、子どもを持つ保護者の方、外国人の支援に従事する方々、自治体の関係者などの一般の方々です。子どもたちの顔を描いたイラスト入りで、読者の人たちに深く関係する事柄をQ&A形式で書かれています。もしかしたら外国人の子どもたちを迎えていた日本人の子どもたちが逆の立場にあうこともあります。主人公の鈴木家と一緒に、様々な国籍を持つ子どもたちが抱える言語問題に向き合って考えます。また、将来、日本語教師や通訳になりたい人たちのためのヒントも発掘できる本です。 (くろしお出版)


言葉と文化 Language and Culture

ジョン・マッコーネル

高校向けの上級レベルの英語教材で、言語と文化について基本的な概念がわかりやすく説明されています。「何年やっても英語を話すことができない」というフレーズをよく耳にしますが、本書を通して、言葉とアイデンティティー、言葉と思考、言葉と社会とのつながりや、非言語の存在などがわかり、言葉を習得するに際には、その背後にある文化や社会とは切り離せないのだ、という基本的なことに気づけるでしょう。外国語学習を通して、異なる文化や異なる国籍の人たちへの尊敬の念を持ってもらいたいです。 (雨宮剛:編註/成美堂)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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