外国語教育

外国語学習には、動機づけと学習ストラテジーが重要


大和隆介 先生

京都産業大学 外国語学部 英語学科/外国語学研究科 英米語学専攻

どんなことを研究していますか?

外国語学習では、記憶力や分析力など認知的要素と同じくらい、動機づけや感情をコントロールする能力、他者と協力して学ぶ姿勢など情意的・社会的要素が重要であることが明らかになってきました。長期的に高い動機づけを持って言語学習をするためには、「こうなりたい」と明確にイメージできる「理想自己(Ideal-Self)」を持てるかどうかが非常に重要な鍵となります。

「英語を使った仕事がしたい」「英語がペラペラになって外国人の友だちを作りたい」といった漠然とした空想ではなく、「感動したあの映画を字幕なしで見られるようになりたい」「自分が得意とする〇〇〇の素晴らしさをYouTubeを利用し英語で世界にアピールしたい」「難民キャンプの子供たちを助けるために国際機関で働く英語力をつけたい」といった具体的でリアルなイメージを持つことが何よりも大切です。

どのようにすれば言語学習への動機づけを高め理想自己を持つことができるのか、その要因を探りつつ、学習意欲を維持しながら効果的に学習する方法を明らかにすることが、私がこれまで取り組んできた研究です。

優れた英語学習者はどのような特徴を持っているのか?

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母語の習得と異なり、外国語学習はあまり苦労せず上達する人と努力しているのに上達できない人がいます。前者のような優れた学習者と後者のような未熟な学習者の大きな違いは、自分に合った学習ストラテジーを使っているかどうかであることが、これまでの研究から明らかになっています。

優れた学習者は、小学生から大学生に至るまで、自分のやりたいことを自覚し、つらい作業も楽しみながら目標に向かっていくためのコツを知っています。このような資質は、生得的に備わっているのではなく、環境や本人の努力により習得されるものです。

そのためには、自分自身を多面的に理解し、自分に合った学習ストラテジーの使い方を習得することが、最初は遠回りに思われるかもしれませんが、最終的には成功への早道となるのです。

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大和ゼミの学生たちと

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→教育・学習支援業(大学院への進学も有)、情報通信業、サービス業
  • ●主な職種は→教員、一般職、営業職
分野はどう活かされる?

学習ストラテジーや動機づけの研究は、言語学習にとどまらず他の分野においても応用可能であり、「自分が置かれた環境」で自らを輝かせるための有効なツールとなります。

先生から、ひとこと

日本では「沈黙は金」と言われることもありますが、グローバルスタンダードでは「沈黙は存在していないのと同じ」です。朝から晩までおしゃべりしている必要はありませんが、必要なとき自分の意見をしっかり言えるように豊かな教養を身につけましょう。そして、自分の能力に限界を設けず、やれば何でもできるんだという気持ちで、やりたいことにがむしゃらに取り組んでください。

先生の学部・学科はどんなとこ

自然豊かな広大なキャンパスに10学部15000人がともに学んでいます。外国語学部英語学科では、確かな英語運用能力をベースとして、幅広くグローバル社会で活躍できる人材を育成するカリキュラムを用意しています。「読む」「書く」「話す」「聞く」「議論する」のコミュニケーションスキルを基礎から段階的にステップアップする内容で、多様な短期・長期の留学プログラムがあることも魅力です。

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ゼミの様子

先生の研究に挑戦しよう

具体的に、次の内容を試すと良いと思います。
(1)自分がこうなりたいと思うロールモデル(目標)となる人の特徴を詳しく調べる。
(2)自分が、目標に向かって努力しているときに、上手く行っているとき時と上手く行かないときの違いを詳しく分析する。

興味がわいたら~先生おすすめ本

英語学習は早いほど良いのか

バトラー後藤裕子

言語学習者の多様性を構成する要因の中でも、多くの人の興味を引く「年齢」に焦点を当てて解説している本です。言語習得と年齢の関係について、これまでの研究でどのようなことが明らかになっているのか、どのようなことが未解明な問題として残っているのか、最新の研究成果も踏まえながらわかりやすくコンパクトにまとめられている良書です。 (岩波新書)


科学的根拠で示す学習意欲を高める12の方法

辰野千尋

本書は、言語教育に特化した動機づけを扱った書ではなく、学習一般にかんする動機づけについて解説しています。これまで、心理学において動機づけについてどのような研究が行われてきたかが平易な言葉で説明されており、そこで得られた研究成果を教室での指導や学習にどのように活用するかについて、12の方法に整理し具体例を挙げながら丁寧に説明している良書です。 (図書文化社)


言語学習と学習ストラテジー

大学英語教育学会、学習ストラテジー研究会:編

日本の英語教育の状況を踏まえて、国内外の学習ストラテジーの研究を包括的に解説している本です。個人差研究および認知理論研究の観点から、学習ストラテジーが言語習得において果たす役割や効果的指導法が豊富な資料に基づいて詳しく説明されています。多くの日本人が長年苦労している英語学習において、楽しみながら上達していく優れた学習者になるために、一人一人の学習者が理解し実践すべき学習ストラテジーについて理論と実践の両面から説明している良書と言えるでしょう。 (リーベル出版)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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