宗教学

日本やスペインに住むブラジル人にとっての宗教とは


山田政信 先生

天理大学 国際学部 地域文化学科

どんなことを研究していますか?

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日本では「宗教」と聞くとアブナイもの、アヤシイものと見られがちですが、実は宗教行事であるはずの初詣に抵抗を感じる人は少ないのではないでしょうか。そんな感覚のズレに気づき、発見を与えてくれるのが、私が研究している宗教社会学です。私は特に、多文化共生という観点から日本やスペインに住んでいるブラジル人の宗教を研究しています。さらに、ブラジルの地域研究と宗教研究も行ってきました。

初めは、ブラジルに住んでいる低所得者層、特にストリートチルドレンと呼ばれる子どもたちを対象とした地域研究でしたが、その後、地域研究の視点を保ちつつ、宗教に関わる事象に焦点を当てています。日本人移民と共に渡った天理教や生長の家などの新宗教、フランスからブラジルに渡った心霊主義、カトリック教会の変容やプロテスタント教会の伸展などが具体的なテーマです。

ブラジル人の宗教を介した地球規模のネットワーク

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最近の関心は、スペインに住んでいるブラジル人の宗教についてです。日本とスペインに住んでいるブラジル人同士が宗教を介してつながっており、彼らのネットワークが地球規模の大きな広がりを持っていることがわかってきました。

私たちの生活圏は、ともすれば日本だけに限定されがちですが、地球規模の広がりを持つ人たちのありようは、グローバル時代を豊かに生きていくためのヒントを与えてくれる可能性を持っています。

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スペイン・バルセロナ近郊のカトリック教会にて。メキシコ人神父とブラジルやコロンビアから移住した人たちと。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→官公庁、宗教施設、情報通信業、商社、服飾関係、建設業、製造業、観光業
  • ●主な職種は→営業、事務
分野はどう活かされる?

天理大学は宗教系の大学ということもあり、宗教学・宗教社会学の知識を宗教施設での勤務に直接生かしている卒業生がいます。一般企業等に就職した場合は、宗教学の知識を業務に直結させることは難しいですが、宗教学・宗教社会学で育まれる他者理解の視点は、どのような分野であっても私たちが人と関わっていく限り、有用な示唆を与えてくれます。

先生から、ひとこと

コロナ禍で内向き志向が強まりそうな時代状況だからこそ、ローカルを見据えながらグローバルな視点で考え活動できる人が、今まで以上に求められるようになるはずです。日本国内にいながらでも、生きた外国語は学ぶことができます。知らない世界の扉を開いてくれる外国語を身につけて、異文化理解を楽しんでみてください。

先生の学部・学科はどんなとこ

天理大学国際学部では、徹底的な語学指導はもちろんのこと、それらの言語が使われている国や地域に関する文化についての授業を行っています。中でも宗教文化は人々の生活と密接に関わっていますから、その知識を身につけることは必要不可欠だといえるでしょう。語学教育の歴史があり、少人数教育で定評のある天理大学で、スペイン語やポルトガル語、ラテンアメリカの地域と人々について学んでください。

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ブラジル・サンパウロカトリック大学大学院で行った特別講義にて。

先生の研究に挑戦しよう

・法務省のHPなどで外国人登録者数の推移(出身地別、在留資格別、都道府県別)を調べた上で、外国人の人々が来日した経緯・理由について一般書籍をもとにして学んでみよう。
・東海地方には、豊田市や豊橋市などのようにブラジル人がたくさん住んでいる集住地がある。それらの地域の小中学校へ赴き、ブラジル人にルーツを持つ子どもたちと触れ合うなかで、彼らの将来や夢について聞いてみよう。
・それらの集住地ではフェスタジュニーナ(6月の祭り)というブラジルの国民的なお祭りが行われる。実際に足を運んで陽気な人たちと一緒にダンスを踊ったり、そこで売られているブラジル食を味わったりしてみよう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

よくわかる宗教学

櫻井義秀、平藤喜久子:編著

宗教を学問として学ぶとはどういうことかから、神話、儀礼、経典、象徴、巡礼、教祖、信者、回心、信仰実践、布教、宗教組織、祖先崇拝、自然崇拝、シャーマニズムといった、宗教が含む要素を解説。そして世界5大宗教だけでなく、日本の神道やラテンアメリカ、アフリカ、オセアニアも含む世界の宗教、日本の近現代に興った新宗教まで、世界のあらゆる宗教を概説し、最後に現代社会における宗教の役割や課題を提示する。天理大学の山田政信先生は、ブラジルを含めたラテンアメリカの宗教全般を概説している。今後ますます文化的価値の多様化が進むことが予想され、そうした事態に臨むための知識を、本書を通じて身につけてほしい。 (ミネルヴァ書房)


よくわかる宗教社会学

櫻井義秀、三木英:編著

宗教を、社会を構成する要素の1つであるという側面から研究する宗教社会学。本書では、まず、宗教を研究する手法がわかる。さらに、土着信仰、新宗教、カルト、スピリチュアルなどをめぐるテーマや、「宗教と社会貢献」「エスニシティと宗教」「女性と宗教」「メディアと宗教」「法・政治と宗教」といった社会と宗教の関係など、宗教社会学の幅広い対象を概説している。そこからは、宗教を研究することが現代社会の理解に不可欠であることを知ることができる。天理大学の山田政信先生は、宗教研究の方法やプロテスタント教会における憑依文化などについて解説している。 (ミネルヴァ書房)


グローバル化の中で生きるとは 日系ブラジル人のトランスナショナルな暮らし

三田千代子:編著

日本で暮らす日系ブラジル人の生き方を通し、国家という枠組みにとらわれない、人の生き方や社会文化の姿を提示する。日本での日系ブラジル人の雇用、学校や教会、生活戦略など、多方面から検討されている。日系ブラジル人にとって宗教は異国においても重要だが、天理大学の山田政信先生が、宗教社会学の視点から、日本で設立されたブラジル系プロテスタント教会について執筆している。 (SUP上智大学出版)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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