今のコンピュータをはるかに超える次世代型として期待されるものに、量子力学を用いた量子コンピュータがあります。現在のコンピュータは、0か1かの2つの値で表され、いずれかの状態しか持ちえない情報の最小単位(ビット)で計算は行われています。これに対して、量子コンピュータは量子ビットと呼ばれる、2値の重ね合わせ状態で情報を扱い、その結果、現在のコンピュータより桁違いに速く計算できるといわれます。そんなすごい量子コンピュータが実現した場合、RSA暗号という現在使われている主流の暗号理論はたちどころに解読されてしまいます。
量子暗号理論の研究
私は量子コンピュータと量子暗号理論を研究しています。RSA暗号など、現在インターネットの安全性の基盤になっている暗号方式の多くは、量子コンピュータに対して、きわめてぜい弱であることが示されています。そこで量子コンピュータの実現を前提とした場合、暗号理論はどうあるべきかを追究するために、量子暗号理論の研究を行っています。今やインターネットは社会基盤の一つであり、その社会基盤の安全性を支えているのが、暗号・認証技術です。将来にわたった安全保証が必要であり、量子コンピュータの普及を前提とした、量子情報セキュリティ技術へ移行していくものと思っています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→情報技術(IT)に関わる業種
分野はどう活かされる?
情報技術は至る所で必要なものなので、日常的に活かしていると思います。
数学科で学ぶ専門分野に線形代数や幾何学、整数論などがありますが、私の研究分野である暗号理論や量子計算では、これらの数学的な知識が必要です。純粋に数学を究めるのも楽しいかもしれませんが、暗号理論や量子計算研究では数学が実際的に役に立つことが実感できると思います。暗号研究や量子コンピュータの研究は、大学のみならず、産業界でも行われているので、大学院の修士課程や博士課程に進学し十分に学んでから就職するというキャリアパスもあります。
教育学部の数学科では、数学そのものの他に情報数学や数学教育を学ぶことができます。教員免許状の取得は義務ではないので、興味に合わせて臨機応変に学習していくことができます。また、専門分野を教員と対話的に学習するゼミが3年次からスタートするのも特徴的かと思います。