情報ネットワーク

スマホデータの増加負荷を軽減!高信頼な無線制御を目指す携帯情報ネットワーク研究


峰野博史 先生

静岡大学 情報学部 情報科学科/総合科学技術研究科 情報学専攻/グリーン科学技術研究所

どんなことを研究していますか?

スマホの普及が進み、動画コンテンツの増加に伴い、携帯電話網の情報量が急激に増えています。その解決策として、WiFi スポットの増設や、新たな周波数帯域を併用するなど、携帯電話網の負荷を分散させるオフローディングが行われています。オフロードとは、積荷を降ろす、解放するなどの意味で、IT分野では、あるシステムの負荷を他の機器などが肩代わりして軽減する仕組みをいいます。それを担っているWi-Fiによって膨大なモバイルデータ処理を肩代わりさせることは、先進国都市だけでなく、新興国を含め世界的な広がりを見せています。ただし現在のモバイルデータの処理手法は、まだ改善の余地があります。

Wi-Fiスポットに代わりうる、もっと繋がりやすい技術を!

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改善すべき問題点とは、携帯電話網の情報量は時間的には夜間に、空間的には都市部に集中することが挙げられます。私は、このようなモバイルデータの時間的、空間的局所性を考慮して、もっと効果的な繋がりやすさが可能と考えました。電波を中継してくれるWi-Fiスポットは、携帯電話網に比べ高速通信が可能ですが、通信可能範囲は狭く、Wi-Fiスポットに接続しないほうが安定通信できる場面や、そもそも近隣にWi-Fiスポットがなく、オフローディングできない場面も多いです。そこで時間的、空間的、通信路的な3 次元で利用効率を最大化させる、多種多様なモバイルデータの特性に応じた、モバイルデータの 3D オフローディング手法の確立に取り組んでいます。通信の分野でも、深層強化学習といった人工知能を用いて複雑な局面での最適な制御手法を見つけようとしています。

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研究室の様子

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→情報・通信、電機メーカー・通信キャリア、Webサービスなど
  • ●主な職種は→ネットワークエンジニア、研究開発、システムエンジニア、AIエンジニア
分野はどう活かされる?

研究室で切磋琢磨してきた知識や技術を活かし、次世代を担う情報通信技術やネットワークシステム、IoTやAIを用いた新サービス創出に関する業務に従事している卒業生が多い。

先生から、ひとこと

情報ネットワークの分野でも、機械学習や深層学習の活用が注目されています。様々な課題に対して、解決するための方法は多岐に渡り、学問の境界もあいまいになってきています。情報ネットワーク分野の研究成果を活かし、物理的な事実を定量的に示す膨大な「データ」を集め、それらに目的に応じた処理を施すことで質の高い「情報」として扱えるようにし、機械学習や深層学習などのAIを活用することで価値のある「知識」を見い出せれば、新産業を創造するための「知恵」を創出できます。例えば、当研究室では本研究成果の一部を活用することで、トマトの高糖度栽培を支援するAIの研究開発に世界に先駆けて成功しました。みなさんも、これまでの既成概念にとらわれず、斬新な発想で新たな世界を創造していってください。

先生の学部・学科はどんなとこ

静岡大学情報学部では、コンピュータネットワーク、オペレーティングシステム、データベース、アルゴリズムとデータ構造、機械学習、確率統計といった様々な知識や技術をベースに、実社会において講義で勉強した内容がどのように関係するかまで、実験・演習系科目を通して実体験するカリキュラムを整備しています。中でも、Webシステムをゼロから構築し、これまでの知識とネット上の最新情報を駆使して性能をどこまで最大化させられるかグループで競う実験はやりごたえがあると思います。

技術革新の早い情報化社会に追従していけるような広い視野と好奇心を持って、情報ネットワーク分野をさらなるステージへと飛躍していける人材育成に努めています。

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研究室のメンバー

先生の研究に挑戦しよう

RaspberryPi等の安価で入手可能なIoTデバイスを体験しながら、世の中の様々な社会問題を解決するために、どのようなICTの活用方法が考えられるかをグループワークなどで議論してみましょう。アイディアソンと呼ばれるITの新しいアイデアを生むようなイベントを行うのもいいでしょう。そうした経験から、アイデア実現のために必要な知識や技術(プログラミング、アルゴリズム、確率統計など)が何かを気づくことができるでしょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの

松尾豊

将棋や囲碁、画像認識、自動運転など、知的情報処理に関する技術革新が目覚ましいが、人工知能が人間を超えられる可能性について、高校生にも読みやすくまとめられている。特に、昨今話題の「ディープラーニング」の特徴など、人工知能ができること、これからできるようになりそうなことがわかる。人工知能の飛躍のためには、多種多様なモバイル・センサデータの集約、効率的な処理基盤の実現など「情報ネットワーク」領域のアプローチも重要な役割を担う。細分化された学問領域にとらわれず、他領域へ展開することや、逆に他領域の発想を導入するなど、「情報ネットワーク」領域へ新たな飛躍を与えられる可能性が感じられる。 (角川EPUB選書)


電脳コイル

202X年、「電脳メガネ」が小学生の間で大流行する電脳世界が舞台のSFアニメ。拡張現実や情報ネットワークに関するキーワードが面白おかしくちりばめられており、設定などもよく考えられている。今後の情報社会がどうあるべきかなど考えさせる契機になる。NHK教育で放映された。 (磯光雄)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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