春になると植物は一斉に美しい花を咲かせます。開花は、日長条件の変化による花芽形成を誘導する植物ホルモンの働きで起こります。これを遺伝子レベルで見ると、植物細胞内のミトコンドリアの働きが大きく関与していることが、近年明らかになっています。ミトコンドリアが、開花ホルモンの分泌を調節する花成促進遺伝子を制御していると考えられます。つまりこの遺伝子を制御すれば、開花を早く促し、作物の早期栽培を可能にすると期待されます。
国内初パスタ用コムギ品種の開発へ
私は、パンコムギで、この花成促進遺伝子の発現が阻害され、開花が遅延することを見出しました。この研究は、開花をコントロールするための基礎研究になります。これらの知見を利用して、福井県での栽培に適した、早くたくさん収穫できる「早生多収コムギ品種」の開発を行なっています。このパンコムギの新品種の収穫はふつう6月の梅雨の時期ですが、私たちの研究が進展し、花を早く咲かせることができれば、収穫を前倒しできます。
このほか、畑や果樹園の雑草抑制用に畝などで育てる「リビングマルチコムギ」というムギの開発も行っています。さらにパスタ用のデュラムコムギを育成し、国内初のパスタ用のコムギ品種の開発に向けて取り組んでいます。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→地方公務員
- ●主な職種は→農学職
分野はどう活かされる?
農業試験場などで活躍しています。
農作物の品種改良は、とてもグローバルな研究領域です。現在、スペインやスロベニアと国際共同研究を行っています。この分野に是非、興味を持って、入ってきてください!
興味がわいたら~先生おすすめ本
公立大学法人福井県立大学ようこそ県大研究室
FBCラジオ(福井放送)で県大教員の紹介番組「ようこそ県大研究室」を放送。その一貫として2013年~2015年に「公立大学法人福井県立大学ようこそ県大研究室」1~4巻を出版。「これを読んで実際の研究がどのように社会の役に立つか知ってほしい」と現役の福井大学の教員は語っている。 (福井県立大学)