人間の豊かな衣食住のために、私たちは植物から様々な恩恵を受けています。特に、植物が持っている食の可能性を最大限引き出す上で、植物が持っている遺伝子の探索や機能の解明が注目されています。
近年、ゲノムと呼ばれる全DNA情報を得ることが高速で安価に決定できるようになってきました。植物の遺伝子を直接解析したり、多様な品種や交配してできた系統を実際に栽培と調査をして有用な遺伝子を探し出し、新しい品種育成に利用する学問を、「遺伝育種科学」といいます。
実際に田んぼでイネを栽培し、有用な遺伝子を探し出す
イネは、日本やアジアで食生活を支える最重要穀物です。私は、イネの多様な品種・系統を使った研究に取り組んでいます。具体的には、品種だけでなく、複数のイネを交配してできたものを田んぼで実際に栽培し、開花期や収穫量、病虫害抵抗性などの農業上重要な形質を測定しています。その形質を決めている遺伝子の探索によって、関与する遺伝子がいくつあり、それらがどう作用をするかを調べ、新品種を実際に育てたいと思っています。
地球全体を含め環境変動が非常に激しくなっているため、食糧の安定生産と供給が社会情勢安定のためには不可欠な要因の一つです。その解決策の一つとして、遺伝育種学や新品種育成で、その安定化を進展させたいと考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→製造業、地方公務、研究
- ●主な職種は→製造工、技術者、農業研究者
- ●業務の特徴は→農産物の栽培や保護、食品製造、植物の研究
分野はどう活かされる?
食品の製造や営業・企画、農家や企業との研究交流や指導、植物の栽培・管理と特性調査などに従事しています。
身近なものや、ちょっとしたことに疑問を持ってみてください。米作りだけでも様々な作業行程を経て食卓へ並んでいますが、わかりますか?自分が知っているや理解していることは本当にそうなのでしょうか?自分で調べたことは必ず身についていき、次へと発展していきます。特定の分野に偏ることなく、様々なことに興味を持って幅広く勉強していって欲しいです。
神戸大学農学部は、京阪神の大消費地の中にある一方、周囲は大きな農業生産地に隣接し、国際貿易港である神戸港も近く、国際性と地域性を学ぶ条件が備わっています。自然に学んで、人類の活動の源となる食料生産を支える「食料・環境・健康生命」に関わる課題を探究し、「農場から食卓まで」を包含した教育と研究を行っています。「遺伝育種科学」を専門としている教員は多く、様々な動植物を対象としています。
興味がわいたら~先生おすすめ本
日本における農産物のゲノム研究
旧農業生物資源研究所のサイトで、イネ、ムギ、ダイズ、ブタ、カイコなどのゲノム研究が紹介されています。また、イネゲノム完全解読10周年を記念したページもあります(http://www.naro.affrc.go.jp/archive/nias/rice10/)。