地盤工学

土の中にできる氷の塊が道路を壊す~寒冷地の地盤を守れ~


川口貴之 先生

北見工業大学 工学部 地球環境工学科 環境防災工学コース

どんなことを研究していますか?

北海道のような寒冷地では、土が凍ったり融けたりすることで、様々な被害が起こります。この原因の一つが、土中の水が凍り、それが地面を押し上げてしまう「凍上現象」と呼ばれる厄介な現象です。

冬の朝に足で踏むとサクッサクッと音がする「霜柱」と呼ばれる細い氷の柱が地表面にできることを知っている人は多いでしょう。凍上現象とは、これと同様な現象が地中で起きて、地中に氷の塊ができ、地表面が持ち上がる現象です。持ち上げる力はとても大きいので、道路に亀裂が入ったり、コンクリートの壁が押されて傾いたりもします。

新工法で道路わきの斜面を保護

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寒冷地を対象とした地盤工学を専門とし、凍上現象による地盤災害を防いだり、減らしたりする技術の開発に挑んでいます。凍上現象を繰り返した道路の近くにある斜面は崩れやすくなってしまいます。そこで、斜面にパイプを打ったり、表面を保護するための層を作る新しい工法を開発しています。これが寒冷地の人々の安心安全な生活に役立ってほしいと考えています。

また、最近では北海道の基幹産業である一次産業を工学的に支援するため、農地崩落の抑制や簡易で丈夫な林道に関する研究も始めています。

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災害に強い林道(切った木を運ぶ道)を目指して水はけの良さを調べているところ

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→国家公務員、地方公務員、ゼネコン(総合建設業)、建設コンサルタント
  • ●業務の特徴は→街づくりや橋や道路の計画・設計・施工・維持管理
分野はどう活かされる?

国家公務員として国道の計画や維持・管理に関する業務、斜面防災を得意とする建設会社で技術者として施工現場の監督業務、建設コンサルタントで地盤防災に関する設計業務などに、学んだ分野は活かされています。

先生から、ひとこと

地盤工学の魅力は、まだまだ解明すべき現象、解決すべき問題が数多く残っていることだと私は思います。地盤は、いつも私たちの足元を支えてくれている身近で頼もしい存在ですが、ひとたび大雨や大地震になれば、我々の生活や命を脅かす恐ろしい存在にもなります。陰ながら人々の安心・安全な生活に貢献できる地盤工学について、一緒に研究しましょう!

先生の学部・学科はどんなとこ

北見工業大学は日本で最も寒冷な地域に立地した国立大学です。また、本学には地盤工学、岩盤工学、地質学、地形学を専門とする教員がおり、互いに連携して研究を進めているという特色があります。

現在、この研究グループでは本学の厳しい気候地理的好条件を生かして、寒冷地特有の地盤災害に対する防災・減災に関する研究に取り組んでいます。また、メタンハイドレートが存在するオホーツク海に近いという立地を生かして、メタンハイドレートを有する海底土に関する研究も行っています。

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地盤を伝わる波の速さを使って、見えない地盤内の情報を調べているところ

先生の研究に挑戦しよう

私も所属している地盤工学会のホームページ(https://www.jiban.or.jp/index.php)には、「ドクターモグの地盤工学教室」や「Shunちゃんの模型実験動画」というコーナーがあり、地盤工学に関するとてもわかりやすい説明や実験がいくつも掲載されています。きっと地盤工学に興味が湧くはずです。気に入った実験は、実際に行ってみるとよいでしょう。

他にも、図書館に行って自分が住む街の地盤の成り立ちを調べたり、市役所や役場にある土砂災害に関するハザードマップを見てみたりするとよいでしょう。地盤防災技術の大切さがわかるはずですよ。

興味がわいたら~先生おすすめ本

それでもピサの斜塔は倒れない 知れば誰かに話したくなる地中のこと

応用地質株式会社

ジオドクター(地球のお医者さん)が、まるで人間を診察するように、掘らずに地下の孔を調べたり、空から地中を調べたり、船から海底を調べたりと活躍。日本の地盤がとても複雑であることや、ピサの斜塔が傾いた理由、地震や汚れた地盤の修復方法などについて、わかりやすく解説されている。地盤調査は地盤工学という学問において基本中の基本。その調査手法や地盤対策も多く紹介されており、地盤工学の魅力を知る第一歩に。構造物の建設や、地盤調査・対策工などを手がける地質調査会社による本。 (幻冬舎メディアコンサルティング)


地盤の科学 地面の下をのぞいてみると…

土木学会関西支部:編

私たちの暮らしに地盤は大きな関わりを持っている! 地盤の生い立ち、液状化や地盤沈下といった地盤災害、地盤を探査する技術など、地盤工学の全般についてわかる。「よい宅地、悪い宅地の見分け方」といった身近なテーマも。 (ブルーバックス)


キネティックサンド

98%は砂だけでできているのに、とても不思議な動きをする砂遊びのおもちゃ。ツブツブな土粒子から構成されている土の不思議な性質の一端を垣間見ることできる。


新・土なぜなぜおもしろ読本

大野春雄

見開きのQ&A形式で、土について、いろいろな側面から解説。対象は大学生や専門学校生となっているが、高校生でも十分にわかりやすく書かれている。 (近代科学社)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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