ロボットの動きをコントロールするためには、機械力学・制御工学はなくてはならない学問です。その分野で今注目されているのが、ヒトの運動を解析し工学に役立てる学問=バイオメカニクスや、福祉機器を開発する研究=福祉工学です。
私はバイオメカニクス、福祉機器を開発する福祉工学を専門にしています。例えばヒトがペットボトルのふたを開けるときどのように指を使っているのか、洗濯機の中の洗濯物を取り出すときにどんな手足の力を使って取り出しているのかといった、ヒトの運動を計測できる装置の開発をしています。ヒトの身体に直接取りつけられ軽量・小型で信号を無線でパソコンに送ることのできる、ウェアラブルな運動計測装置を開発したのです。その計測結果などを用いて、手足の不自由な方のための筋電義手や義足の開発、リハビリテーションを促進するためのジョギングマシンなどの開発を行っています。
その他に、「機械力学・振動工学」を使って、車両や家電機器などの振動騒音の低減化技術に関する研究もしています。これらは、「うるさい、乗り心地が悪い」など生活に関わる問題であるだけでなく、故障や破壊につながる原因を事前に防止する重要な研究で、計算機を使った解析や実験を通して企業との共同研究で解決していきます。
ゴルフクラブの開発
またウェアラブルな運動計測装置を用いて、様々なスポーツの運動解析も行っています。ヒトの身体には骨格と筋肉が有り、それがうまく協調してスポーツなどの運動を実現しています。そこで、ヒトの筋骨格を考慮して、例えばゴルフのスイングに適合したゴルフクラブの開発を行うなど、実験・解析シミュレーションの両面からアプローチを試みています。ヒトの身体をモデル化し、チャイルドシートの安全評価なども行っています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→大学、自動車、電機機器、メカトロニクス、ロボット
- ●主な職種は→研究、設計、開発
- ●業務の特徴は→新機種開発、トラブルシュート用ソフト開発
分野はどう活かされる?
振動騒音の低減技術は、自動車、家電機器等の低振動・低騒音化に、ヒトの運動を研究する運動学は、計測機器開発、医療機器開発に役立っています。
大学では、高度な専門知識を学んでもらうことはもとより、豊かな人間性を養ってもらうことも重要です。すなわち、基礎技術、先端技術の修得とともに、その知識をどのように実社会や実生活で活用するかという、教養にあふれる人物を養成することも、大学がやらなければならない使命です。皆さんは、専門分野における学術研究はもとより、課外活動やその他諸活動を通して、社会人にふさわしい知性と品格も身につけていかなければなりません。そのような気持ちで、大学で学んでください。
同志社大学理工学部の教育の基本理念は、「人間のための科学技術」に象徴されています。これは、同志社大学の建学の精神である「良心」を手腕に運用し、地の塩、世の光として各界で活躍できる人物の育成を目指した創立者・新島襄の「優れた知識や技術は、正しい良心のもとで扱われるべきである」という言葉に基づいています。皆さんには、世の中にない新しいことを創造する知識と技術を身につけてほしいと思います。
興味がわいたら~先生おすすめ本
Arduinoをはじめよう
Massimo Banzi、Michael Shiloh
機械系の学生は、電気工学や電子工学などの電気系の学問が「電気は目に見えないから何となく取っつきにくい」と考えて避けてきたことが多いと思う。しかし、今日使われている機械や大きな構造物でさえ、モータを使った制御やセンサの利用抜きには考えられなくなってきている。メカニクス+エレクトロニクス=「メカトロニクス」という日本発の造語が世界で通用するようになったように、機械技術者にとり、もはや電気・電子技術なくしては設計はできなくなりつつある。そこで、Arduino(アルドゥイーノ)のように簡単な制御CPUを利用し、自分でメカトロ装置を「作ってみる」ことが、今後の機械技術者に求められている。そのための入門書だ。自分でArduinoのキットを購入して実戦してみるのにうってつけの解説書である。 (船田巧:訳/オライリー・ジャパン)