これまでにないナノ材料を開発するナノ材料工学の分野の中で、私たちが追求するテーマを簡単に表現すると“ナノスケールの世界の建築家”です。例えば、イオン膜を挟んだ電極に水素と酸素を化学反応させて電気を作る燃料電池は、発電効率が高く環境にやさしいことから、水素で走る自動車などエコカーから家庭用発電装置のエネファームまで、様々な分野で利用が広がっていますが、その発電効率を良くするには、どのような材料でどのような構造のイオン膜なら効率良く伝導させることができるかが大きなポイントになります。
つまり、発電効率の良い燃料電池を作るためには、イオンの受け渡しを行う膜の分子構造やナノ構造を考えなくてはなりません。まず、これらの構造を考慮したナノ粒子を、出発点として作ります。さらに作製したナノ粒子を多層に積み重ねた薄膜を作製することで、目的の膜が完成します。いわば、ナノサイズの煉瓦一つ一つをビルディングブロックとして、建築物を建設していくイメージです。
ナノ材料で環境にやさしく便利な社会を実現
ナノ材料は目に見えない非常に小さな材料です。我々が扱うこの小さな材料であるナノ粒子は、1粒だけでは何も起こりません。しかしこのナノ粒子がたくさん集まったり、規則的に並ぶ・積み重なると、これまでの材料とは異なった性質や、既存の材料と比べて高い性能を発揮することができるようになります。
私たちは燃料電池のほかにも、次世代ディスプレイの発光材料として有望な「ペロブスカイト量子ドット」といわれるナノ粒子も作っています。この粒子が実用化できれば、遠隔医療用として求められている高性能ディスプレイが実現され、ここでも便利な社会への貢献ができると考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→化学メーカー、材料メーカー
- ●主な職種は→研究職、品質管理
- ●業務の特徴は→新たな材料を他部署と連携して、実用化に近づけるのが特徴です。
分野はどう活かされる?
理系企業に就職しても、大学での研究テーマがそのまま直結することは少ないと思います。しかし、大学、特に研究室で培った課題の発見・解決する能力や文章力は、分野を問わず発揮できると思います。
理系に進学を希望する高校生は、文系科目を軽視しがちですが、世の中の動きを把握しておくことや文章力は、特に大学院に進学すると非常に大切になってきます。是非、理系・文系科目を問わず興味を持って取り組んでみてください。
山形大学工学部にある有機材料システムフロンティアセンター・有機エレクトロニクス研究センターでは、有機ELで世界をリードする城戸淳二先生を筆頭として、日本全国だけでなく、世界中から新進気鋭の研究者が集まり、日々研究を展開しています。
通常、地方大学ですと、高価な装置や実験環境が整っているところが少ないのですが、ここでは、会社よりも整った施設を擁し、日々会社や他大学の先生との共同研究を学生さんも巻き込んで研究展開しています。
また、就職先も上記センター出身の学生は、学生時代の鍛え方が違うと評価され、大手化学メーカー、電気メーカー、印刷会社や外資系企業にも就職を決めております。