情報学基礎理論

コンピュータのための必須!数学論~数式だけではない数学!


山崎浩一 先生

群馬大学 理工学部 電子情報理工学科/理工学府 理工学専攻

どんなことを研究していますか?

コンピュータのプログラムに書き込まれ、コンピュータがより速く大量に問題を解いていくための計算の手順を、アルゴリズムといいます。非常に大雑把にいうと、コンピュータのための数学といえます。私はアルゴリズム理論を研究しています。パズル的な要素を多分に含みますので、どんな感じかを掴むために、パズルを考えてみましょう。

image

2枚の紙AとBに、それぞれ1以上の整数が書かれています。(1)もしA(の数字)<B(の数字)の場合は、Aの数字を10倍します。(2)逆にA>Bの場合、Aの数字からBの数字を引いて、Aの数字とします。(3)AとBが同じ数字になれば、処理を停止します。

例えばAに4、Bに3が書かれている場合、(2) A>Bの状態なので、Aは、(4-3=)1となります。この時点で(1) A<Bの状態になるので、Aを10倍し、(1×10=)10となります。この時点で、AよりBの数の方が大きくなるので、Aは、(10-3=)7となります。この時点でも、まだAの数の方が大きいので、Aは(7-3=)4となります。ところで、この4は最初に書かれていたAの数です。よって上述の過程を無限に繰り返すことになり、処理が停止しません。ではAに3、Bに4が書かれている場合はどうでしょう。この場合は、最終的に処理が停止します。では、A、Bに書かれている数字がどのような場合に、処理が停止するのでしょうか。

この(1)~(3)のようにある一連の処理を記述したものを手続きと呼びます。実はこのパズルの例は、我々がよく知っている、割り算を手続きとして表現したものです。AがBで割り切れるときに手続きが停止します。アルゴリズムとは、どんな入力(この例ではAとBに最初に書かれる数)でも必ず停止することが保証されている手続きのことです。この例の場合は、4÷3=1.333・・・と循環小数となり手続きは停止しませんね。また、(1)の「Aの数字を10倍する」というルールを、「Aの数字を2倍する」に変えて考えてみることで、2進数の循環小数について考察することができます。

ものごとを構造で表すグラフ理論

もう1つの私の研究テーマは「グラフ理論」です。これは、折れ線グラフや棒グラフのことではありません。グラフ理論とは、対象(モノ)を点(頂点)で表し、対象間の関係を線(辺)で結んだ図形を“グラフ”と呼び、モノとモノがどのように関わり合っているかという構造を表現(数理モデル化)したものです。数理モデル化することで、コンピュータで処理や解析ができるようになります。例えば、ウエブページとそのリンクは50億頂点と1000億辺を持つといった具合にグラフ化してコンピュータで解析することで、インターネットに関する知見を得ることができます。

数理モデルが便利なツールであることを感じてもらうために、ここでもパズルを考えてみましょう。目、手、両、下、線、上の6文字を並べ替えて、(2文字)熟語が連続するように、つまりしりとりになるように並べたいとしましょう。どんな並べ方があるかを考えるために、下図のように、問題をグラフ化して考えると考え易くなります。このグラフは、2つの漢字(頂点)の間に矢印(辺)の向きで熟語が作れることを意味しています。このグラフから、入ってくる矢印がない「両」からスタートすることがわかります。両目下線上手、両目線上手下、両目線上下手、両目上手下線、両手下線上目など、複数解があることも容易にわかります。また、この数理モデル化により、2字熟語のデータベースを使って数万個の2字熟語しりとり問題(とその解)をコンピュータで自動生成することもできます。

数学というと数式だらけと思うかもしれませんが、たしかに必要な時は数式を使いますが、数式を使わないで考えることも実際多いです。パズルを解くような楽しさがこの分野にはあると思います。

image

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→IT関連
  • ●主な職種は→研究・開発
  • ●業務の特徴は→技術面の環境変化が激しい
分野はどう活かされる?

最近は、医療、農業、建設業、サービス業など様々な分野・職種でICT技術が必要になっているため、就職先は多様化しています。効率よく動作するコンピュータの設計やコンピュータに効率よく作業させるためのプログラミングが、より高いレベルで、またより広範囲で求められています。また、大量かつ高速なデータ処理が可能になった現代では、「情報」や「データ」の価値が高まり、安全に情報を伝えたり、重要な情報を守ったりする、情報キュリティの技術も、分野・業種を問わず重要になっています。

興味がわいたら~先生おすすめ本

数学流生き方の再発見 数学嫌いに贈る応援歌

秋山仁

長髪でバンダナ姿が印象的、グラフ理論で著名な東京理科大学秋山先生の本。「数学的な能力は遺伝」という思い込みを払拭し、数学嫌いの読者にやる気と自信を与えてくれる。ハンガリーの数学者ポール・エルデシュや、秋山先生の恩師ハラリーの話は面白い。著者をはじめとしたグラフ理論の研究や研究者がどのようなものか知るにはよい。 (中公新書)


関連する学問

53 ハード・ソフト(OS、アプリ)、プログラム系
計算機システム
ソフトウェア
49 通信、ネットワーク/IoT、セキュリティ系
情報ネットワーク
通信・ネットワーク工学
情報セキュリティ

本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/総合科学技術・イノベーション会議の調査事業の一環としても、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。
各先生の所属など、掲載されている大学(学部・学科ほか)の名称は、2020年1月段階の調べによります。実際の進路選択等に際しては、各大学のHP等で改めてご確認ください。

みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ