現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病
岸本忠三、中嶋彰
最新の免疫学の最前線を、これに関わった本庶佑先生(京都大学名誉教授)、坂口志文先生(大阪大学)をはじめ、日本人研究者のエピソードを中心にわかりやすく解説した名著。著者は、インターロイキン6の発見というノーベル賞級の仕事を成し遂げた、岸本忠三先生(元大阪大学学長)。がんに対する抗体療法などが開花するまでの物語が、よく描かれている。ノンフィクションの物語としても楽しめる。 (ブルーバックス)
脳を極める 脳研究最前線
立花隆
内容は20年前のものではあるが、日本の脳研究を牽引してきた研究者と、脳研究の基本が幅広く紹介されている。図解も多く、高校生や初心者向けの入門書として適している。 (朝日新聞出版)
脳の話
時実利彦
大脳生理学を専門とする著者が、大脳皮質の働きについて様々な古典的実験をもとにわかりやすく書いている。古い著書であるが、脳における信号伝搬の様子、興奮・抑制の様子が説明されており、大変興味深い。 (岩波新書)
人体実験ノススメ
鎌滝哲也
糖尿病を患う著者が、自身の体と病気の観察を通じて薬や治療とのかかわりを綴っている。大学で行っている研究もその延長線上にあるものだが、一般の人が研究的な視野で薬の使い方を考えるきっかけを提供してくれる。「自分が気になっていることが研究につながる」ということの実例。 (最新医学社)
睡眠の科学
櫻井武
動物は、なぜ睡眠という、外敵に襲われる危険行為をとる必要があるのか? 脳内のどのような分子基盤に基づいて睡眠と覚醒のスイッチが入るのか? これらを一般人にもわかりやすく解説しており、神経科学に興味を持ってもらうのには良い題材を取り扱った本だ。 (ブルーバックス)
わたしの病気は何ですか? 病理診断科への招待
近藤武史、榎木英介
病理学というものがどんなものなのかを知ってもらう入門書として好適。臨床医と病理医の役割を例えるならば、臨床医は病気という「被疑者」を捕まえてくる警察官で、病理医はその病気を「審理」して診断という「判決」を下す役割だ。それをわかりやすく、現場の実状に即して説明してくれる。 (岩波科学ライブラリー)
脳の情報を読み解く BMIが開く未来
川人光男
BMIとはブレイン・マシン・インターフェースのこと。脳波等の検出・あるいは逆に脳への刺激などといった手法により、脳とコンピュータなどとの相互のかかわり(インタフェース)をとることを言う。例えば、聴覚障害者の内耳の蝸牛に電極を接触させ聴覚を補助する人工内耳や、キーボード操作をしなくても念じるだけで動かせる介護機器といえばわかりやすいだろうか。この本は、脳と外部の機械をつなぐブレイン・マシン・インターフェース技術を通して、脳科学の研究を解説している。 (朝日選書)
山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた
山中伸弥、緑慎也
著者・山中伸弥先生は、日本の誇る医学者。京都大学iPS細胞研究所所長・教授。「成熟細胞が初期化され多能性をもつことの発見」、すなわちiPS細胞の発見により、2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。若いころ、整形外科の道を選んだが、手術が下手で「ジャマナカ」と呼ばれていたという有名なエピソードなど、フリーの科学ライターを聞き手に語り、共著という形で出版した。山中先生の初の自伝で、この本はその文庫化である。 (講談社プラスα文庫)
インフルエンザ21世紀
瀬名秀明
インフルエンザとはどのようなものか、多くの研究者の多様な研究からどのようなことが分かってきたかを、一般向けに分かりやすく紹介している本。インフルエンザの感染のしくみや感染対策、管理側の情報処理やリスク管理まで、28名の専門家への取材から、ウイルスとどのように共生するかを描いている。 (鈴木康夫:監/文春新書)
脳の中の「わたし」
坂井克之
「わたし」と「脳」の関係について、平易な言葉とオールカラーの絵本風イラストで説明する。「わたし」よりも先に「脳」が判断するなら、「わたし」とは一体何なのか。シンプルな中に深い洞察が含まれる本だ。 (榎本俊二:絵/講談社)