早期のがん診断・がん治療を支えるナノマイクロ技術
免疫細胞を医療の部品に
私は、免疫細胞が持つ機能を医療に使うことを目指し、「ナノマイクロデバイスや生体材料」などの工学技術を基にして免疫細胞をセンサや薬、治療器具などの“部品(モジュール)”として扱おうとしています。
特に現在は、がん診断とがん治療に焦点を当てて研究を進めています。
血液や尿、唾液を使ってがんを見つける
日本人の死因の第一位はがん(悪性新生物)であり、がんによる死亡率は1940年代から現在まで右肩上がりに増加しています。
一方、がんは早期に発見し早期に治療すれば治る病気と言われています。がんの早期発見には、自覚症状が出る前からのがん検診が必要ですが、現状では検診受診率は50%程度の低い数値に留まっています。
また、CTやMRI、PETなど確立されたがん診断法がありますが、微小ながんを発見することが困難な点などの課題が残っています。
このような課題を解決するために、血液や尿、唾液を使ってがんを診断するリキッドバイオプシー(液体生検)が研究・開発されており、低侵襲かつ迅速にがんの有無やがん発症リスクを検査する方法が実現されつつありますが、まだまだ確立には至っていません。
がん組織を内部からも治療
現在、私の研究室では、リキッドバイオプシーで早期にがんの部位を診断できるモジュールや、生体材料の援用によりがん組織を内部から治療できるモジュールの開発に取組んでいます。
これらのモジュールを使うことにより、2種類のがん種を見分けることに成功しました。また、がん組織内部から自発的にがん細胞を損傷させることに成功しました。
研究開発をさらに進め、これらを実現できれば、がんの早期発見・早期治療を達成でき、がんを“治る病気”にすることができます。
私自身がこの研究の専門分野に出会ったのは大学生になった後でした。もともと、ものづくりが好きで、航空機や自動車などの大きな機械類の設計や開発に携わりたいと考えて、機械工学の分野に進んだのですが、ナノ・マイクロ技術と出会ってからは、今までに実現されていない“小さなモノ”を創り出し、工学的な視点から医療やバイオの分野に貢献したいと考えるようになりました。
現在は、簡便かつ早期のがん診断・がん治療や再生医療を実現するべく、医学者や薬学者、生物学者、化学者、企業など異分野融合・産学連携により研究を推進しています。
◆主な業種
(1) 自動車・機器
(2) 医療機器
(3) 電気機械・機器(重電系は除く)
◆主な職種
(1) 設計・開発
(2) 基礎・応用研究、先行開発
熊本大学には、医学部や薬学部、国際先端医学研究機構、発生医学研究所などライフサイエンス系の組織が複数あり、アクティブな研究者がたくさん在籍しています。私は工学部に所属していますが、上記のライフサイエンス系の先生方と多くの共同研究を行っています。学内でも医工連携研究や異分野融合研究が推奨されており、分野を超えた連携研究を行いやすい環境が整っています。