建物表面の微生物で、手軽に建物診断
簡単に建物を診断できれば
私は建築材料や施工・維持管理を専門としています。建築は全人類の生活の基盤になるものですが、自分が住んでいる建築物に興味がある・好きだという人はそう多くないようです。
しかし居住者自身がより簡単に建築物の性能診断や改善ができる仕組みがあれば、きっと建築に関心を持つ方も増えるのではないかと思います。
PCR検査・抗原検査がきっかけ
Covid-19が流行しているとき、多くの方がPCR検査や抗原検査を利用していました。建築物でもこれぐらい手軽に検査を行えるいいのにと思い、その仕組みについて調べはじめました。
段々調査が脱線した結果、なんと、建築物の表面にも多くの微生物が棲んでおり、材料の表面の状態(分子組成や水分量、pHなど)に応じて生息する微生物の種類や量が変化していることがわかりました。
世界にも類例がないマニアックなテーマ
調べていて鳥肌が立ちました。なぜなら、建築材料学の分野でも材料表面の状態が健全性を表す指標になることを知っていたからです。全く違う研究分野に不思議と相通じる部分が見つかったのです。この符合を証明したいと思い、建築に生息している微生物の状況と、気密性や断熱性、強度、耐久性といった建築物の性能との関連性を調査しています。
しかしこんなマニアックな研究テーマは、国内はおろか世界的にもほとんど類例がなく、専門外の知識も多く求められます。とても一人では進めることができない壮大な研究テーマですが、幸いに興味を持ってくれる多くの研究者仲間に恵まれプロジェクトを進めることができています。
私は、自分では考えもつかないことを考えられる方と話すのが好きで、そのような方が周りにたくさんいるだろうという理由から大学教員になることを志しました。専門分野も、分野の内容というよりどの先生と話していて楽しいか、自分に刺激を与えてくれるか、という観点から決めました。
その意味で今の分野にいるのはたまたまであり、これから始めるであろう新しい研究もきっと楽しそうな人がいるところに向かっていくと思います。
◆主な業種
(1) 建設全般(土木・建築・都市)
(2) コンサルタント・学術系研究所
(3) 不動産、賃貸・リース
◆主な職種
(1) 生産管理・施工管理
(2) 品質管理・評価
(3) 基礎・応用研究、先行開発
◆学んだことはどう生きる?
材料メーカーやゼネコン、コンサル会社などに就職していますが、学生時代の研究テーマを直接使用する仕事をしている方のほうが少数です。
卒論、修論で学んだ知識そのものより、論文を完成させるプロセスを学ぶことに重きを置いています。社会的背景から課題を抽出し、ある期間の中で解決すべき課題を設定し、その課題を解決するためのスケジュールを逆算できる。そのような人材に育ってくれるよう指導をしています。
建築は技術のすそ野が広く、応用的な分野です。そのためほとんどの異分野研究は、建築に応用できるところがあると考えています。分野選択で悩んでいる方も、とりあえず建築に入っておけばなんでもできる、という風にも言えると思います。
中でも私の研究室では、建築を軸としつつ建築以外の分野を勉強することを積極的に推奨しています。学生さんが関心のある分野を掘り下げ、その異分野技術をどのように建築の中に応用していくかを一緒に考えていく。そんな研究を学生さんと一緒に進めていきたいと考えています。
・建築物でみられる「汚れ」について
(1)「汚れ」の正体を調査し、今後、その汚れがどのように広がっていくか予想しましょう。
(2)「汚れ」が建築の価値を上げる場合とそうでない場合があります。その理由とともに考えてみましょう。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 経済学 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? アメリカ。競争原理が働いていて、自分のモチベーションを高めてくれる。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 軟式野球部 |
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Q4.好きな言葉は? 自由 |