アトピーを再現した皮膚モデルを作り、かゆみの解明へ
新薬でも消えないかゆみ
私たちの身近な感覚であるかゆみ。私はその中でもアトピー性皮膚炎のかゆみに焦点を当てて研究を行っています。
最近、様々なアトピー性皮膚炎の新薬が発売され、治療法が格段に進歩しつつありますが、それらの新薬を使ってもかゆみが完全に消えるわけではありません。
足りないタンパク質を増やす
アトピー性皮膚炎では本来は真皮の中にある神経線維が皮膚表面の表皮の中にまで伸びてくることで、かゆみ過敏になることが知られています。この神経の伸長をコントロールしているのが、セマフォリン3Aという神経の伸びを抑えるタンパク質です。アトピー性皮膚炎の皮疹が出ている部位ではセマフォリン3Aの産生が低下していることから、セマフォリン3Aを増やす方法を開発するために、研究を重ねてきました。
皮膚炎を再現できれば創薬に役立つ
通常、病気の研究ではマウスを用いることが多いですが、少しでもヒトに近いモデルを作りたいと思い、ヒトのiPS細胞から誘導した感覚神経とヒトの皮膚細胞から構築した三次元培養皮膚モデルを融合させ、さらにアトピー性皮膚炎の性質も持たせたモデルの作製を目指して研究を進めています。培養容器内でヒトのアトピー性皮膚炎を再現できれば、新しい薬の開発などにも役立つかもしれません。
研究を通じて、かゆみに苦しむ人が少しでも楽になればと考えています。
家族にアトピー性皮膚炎の人がいたことから、元々、皮膚に興味がありました。大学では栄養学を専攻したのですが、医学研究に対する興味を捨てることができず、医療系大学院に進学しました。
元々はシグナル伝達やタンパク質分解酵素の基礎研究をしていましたが、テーマの成り行きで天然保湿因子の研究をすることになり、修了後にはかゆみの研究をするチャンスにも恵まれました。
「ヒト感覚神経共培養三次元アトピー性皮膚炎モデルの構築とかゆみ過敏メカニズムの解明」
◆主な業種
(1) 病院・医療
(2) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(3) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 医師・歯科医師
(2) 基礎・応用研究、先行開発
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 医学部に入り、皮膚科医になりたいです。 |
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Q2.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 多言語学習。学会で色々な国に行く機会があり、英語以外の言語にも興味を持ちました。 |
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Q3.好きな言葉は? 継続は力なり。 |