生き物がつくるガラス殻を実験室で再現、大昔の水温を知る手がかりに
海水温変動を記録する小さな生き物の殻
今、私は、珪藻という小さな生き物がつくるガラスの殻に興味を持っています。きっかけは、とある学会での講演です。珪藻の殻に含まれる酸素同位体比の測定方法を開発した、という内容でした。
酸素同位体比とは、質量数の異なる酸素原子の存在量を比にしたもので、水から鉱物に沈殿する際に、水温を記録することが知られています。例えば、過去100万年の気候と海水温の変動は、有孔虫という海洋生物がつくる炭酸カルシウムの酸素同位体比から復元されています。
合成したガラスは水温を記録するか
調べてみると、ケイ酸ガラスの酸素同位体比は、様々な珪藻種や堆積物から求められているものの、室内で合成したガラスから確かめた例はありません。ガラスは結晶と違い、構造が一つに定まらない不規則な物質です。そのような物質の中で、どのように同位体比は決定し、保存されるのでしょうか。
当時、ケイ酸ガラスの合成は未経験でしたが、案ずるよりも産むが易し、とにかくまずつくってみようと思い立ちました。
水温記録のメカニズム解明をめざして
そこから、講演の先生と共同研究を開始しました。合成は学生と一緒に、試行錯誤で行っています。そのうち一つの条件で合成した試料の同位体比が、水温に対して珪藻と似たような関係を示すことを見出しました。
現在は、水温以外に、pHや塩濃度などを調整し、よりよい合成条件を模索しています。まだ、再現度は完璧ではありませんが、自作した試料をもとに、水温記録のメカニズムを明らかにしていきたいと思っています。
高校の物理の先生がユニークで、「等加速度運動!」と叫びながら、教室を(加速度的に?)走り抜けるんです。先生は至って真面目なのが却って面白く、物理が好きになりました。地学の先生も、教室の隅でマングローブを育てる自由人で、地学もいいな、と。
間をとって地球物理を専攻しようと思っていたのですが、大学に入ってすぐのプログラミングに挫折。どうせなら思い切り山を歩こう、と地質系の研究室へ。今は化学的なツールを使っています。
「非晶質シリカの構造特性が酸素安定同位体温度計に与える影響」
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? また地球科学を専攻して、学部の授業を受け直したいですね。 |
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Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 『ピクミン4』のクリアに向けて、ぽつぽつ頑張っています。 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 最初のアルバイトはパン屋で、早朝から仕込みとかも手伝って楽しかったです。サンドイッチをフィルムで包むのが得意でした。 |
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Q4.好きな言葉は? I like to be a free spirit. Some don’t like that, but that’s the way I am. |