ヨーロッパ史・アメリカ史

古代ギリシアきっての民主国家アテナイの実像に迫る


佐藤昇 先生

神戸大学 文学部 人文学科 西洋史学専修/人文学研究科 社会動態専攻

どんなことを研究していますか?

民主主義の歴史は、古代ギリシアにさかのぼります。私は、紀元前5〜4世紀、今から約2500年前のアテナイ(アテネ)の民主政を研究しています。アテナイは古代ギリシアの中でも最も民主政を発達させた都市国家でした。それがどのように運用されていたのか探り、古代民主政の実像に迫ります。

また、古代ギリシアの東地中海を中心とした国際関係史、東西交渉史を分析しています。周辺の都市国家や異民族の帝国とどのような外交を行っていたのか、そしてその外交が国内政治にどのような影響を与えていたのかといったを追っています。

ギリシア神話からも歴史が見えてくる

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過去の出来事や神話が人々の間でどのように解釈され、どのように書かれてきたのかということも研究しています。古代ギリシア人が叙述した歴史の間にはヴァリエーションがあるのか、時代によって変化があるのか、それにはどのような意味があるのか。いわゆる「歴史叙述」だけでなく神話伝承も分析することで、古代ギリシア人にとっての「過去」のありようを多面的に研究しています。

古代地中海という現代とは全く異なる世界を研究することは、現代的な価値観とは異なる新たな価値観を想像していくことにつながります。例えば、様々に問題が指摘されている現代の民主主義を考える際にも、実際の古代民主政と現代民主主義社会を比較することで、より相応しい選択肢を見出す助けとなるでしょう。

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ギリシア・アテネの学会に参加して

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→教育関係、公務、金融、旅行業、その他各種一般企業
  • ●主な職種は→教員、公務員、銀行員、事務員、営業、その他
分野はどう活かされる?

教員や旅行会社に務めている場合などは、世界史の知識を活かして仕事をしている部分も多いでしょう。また西洋史を勉強する上で必要な語学力は、どの業種にも必須のスキルとなるでしょう。ですが、歴史学を学ぶことは、データを集積し、必要なデータを精査し、多角的な視点から史料を解読することを学びますし、さらに卒業論文の作成を通じて、論理的な思考を養い、問題発見能力を鍛え、プレゼンテーション能力を高めることになります。ですから、大学教育を通じて身につけた能力は様々な仕事の場で活かされています。

先生の学部・学科はどんなとこ

神戸大学文学部西洋史専修では、4人の教員が古代から現代までをカバーし、ヨーロッパ世界のほとんどの時代について指導することができます(現在所属している教員は、古代ギリシア史、中世イタリア史、近世フランス史、現代ロシア東欧史・冷戦史を専門にしています)。

少人数指導による丁寧な指導に加え、4人の教員が協力して指導に当たっており、幅広い視野から物事を見る力、様々な視点から問題を発見する力、他分野の人にも伝わるよう論理的に説明する力を身につけることができます。

卒業論文執筆に必要な語学の修得に関しても、英語はもちろん、ギリシア語、ラテン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語に至るまで、教員や院生が丁寧に指導しています。それぞれの教員が最先端の研究に従事し、国際学会にも精力的に参加するなど、研究のレベルも高く、それらを反映した質の高い講義を提供しています。

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神戸大学西洋史専修のゼミ発表風景

先生の研究に挑戦しよう

西洋史に関する日本語で書かれた本はたくさんあるので、どしどし読んでみてください。古代ギリシア史の場合、古典ギリシア語の邦訳に挑戦すれば、知識を得るだけでなく、同時代の人々の生き方や考え方に直接触れることができるでしょう。

例えば、ヘロドトスやトゥキュディデスが書いた歴史書から、彼らが生きていた時代に「民主政」がどのようなものと捉えられていたのかが垣間見えます。二人の間にどんな違いがあるのか、現代の「民主主義」とはどのように違うのか、こうした問いに自分自身の力で答えを出してみてください。

興味がわいたら~先生おすすめ本

古代オリンピック

桜井万里子、橋場弦:編

古代ギリシアで開かれたスポーツの祭典、古代オリンピック。古代ギリシア人が重視した古代オリンピックの実情を、考古遺物や様々な文献、碑文などから分析しており、古代ギリシアの人々が私たちとは異なる世界観の中で暮らしていたことを知ることができる。また、近代オリンピックを創設した近現代ヨーロッパ世界の人々が、古代ギリシアという「過去」をどのようなものとみなし、どのように利用していたのか、歴史観の変化にも触れることもできる。 (岩波新書)


歴史の見方・考え方:大学で学ぶ「考える歴史」

佐藤昇:編

古代ギリシアを含めた12の異なる時代・地域の事例から、「歴史学」がどのようなことに着目し、どのような視点から、どのように考えているのかを丁寧に紹介している。古代ギリシアについては、民主政下のアテナイ市民が裁判員制度とどのように関わっていたのかについて考えている。 (山川出版社)


古代ギリシアの女たち アテナイの現実と夢

桜井万里子

古代ギリシアのポリスの中でスパルタと並んで最強の国力を誇った都市アテナイ。徹底的な男社会を築いたアテナイの女性に焦点を当てる。世界中で注目を増しているジェンダー史の視点から、古代ギリシア世界を見直し、古代民主政下に暮らした女性たちの実像に迫る。 (中公文庫)


アトランティス・ミステリー

庄子大亮

現代から約一万二千年前、大西洋上にあったとされるアトランティス大陸の存在と繁栄の伝説は、古代ギリシア世界に端を発する。こうした伝説が、歴史の中でどのような意味を持ったのか、わかりやすく紹介してくれる。 (PHP新書)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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